81話 《剣》、文を書く
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俺の大切なリヒトへ
畳の部屋。
藺草の匂いを嗅ぎながらこの国の文字を書く道具――筆と墨を手に取る。
この国の言語文字も道具の使い方も覚えた。
それを自慢したくて文を書く。
――国は変わらない……いや、いい方に変わっているみたいだな。安心した。神地との同盟がそこまで良い方に進むとは思わなかった。
陛下も……落ち着いたのだろう。
複雑だがよかったと安堵している。
――俺はあの方相手に重圧を与えていたのだな。
そこまで書いて手が止まる。
「俺は象徴失格だな」
支えるはずの王を苦しめて、その王の才を潰し掛けた。
その結果が、民を苦しめる事になった。
「難しいな……」
人というのは。
象徴として生きてきた。それでも人が分からない。
難しいという言葉で片付けるのは軽い気がするが、それでもそう思ってしまう。
「………」
民の心であるという事。民の心の表れであるという事。
――それだけで、王は象徴を重みに感じる。その重みに耐えて進める王は名君に為り、その重みに耐えられないの王は暗君になる。
「俺という存在は重すぎたのか。陛下に」
穏やかな世界。穏やかな気候。
神地――天都。
窓から見えるのは、この国の神の姿。
いまだに、この国の神の誕生に驚かされる。
この国の文化に完全になれない。
だが、すぐに馴染むだろう。
「………」
元々騎士団であり、国が滅んで放浪した。
その地域その地域の環境に耐え、安住の地を求めた。
その果てに見つけた安住の地がエーヴィヒ。
永遠であれ。――その祈りの元。その名が付いた。
その永遠を守るために戦う剣として存在を維持してきたが、まさか皮肉にも。
「俺の存在が陛下を苦しめて、王を暗君にさせてしまうところだったな……」
その事実だけでも俺は国に戻れないだろう。しばらく。
国を近くで守れないのが辛いが、俺は一人じゃない。
「リヒト……」
文の続きを書きだす。
俺は気ままに楽しんでいる。
魚を食べる文化に驚かされて、地べたに直接座る環境に戸惑ったが何とかやっている。
烏丸も大君もいい方だ。だけど、いい事ばかりじゃないな。
この国で教える事は多く早く終わると思ったがなかなか進まない。
長期戦を覚悟しているから。お前に暫く負担を掛けるな。
まあ、俺が居なくてもお前なら大丈夫だろう。
だから。
だから。国を守ってくれ。
頼むな。
お前の唯一の姉フリューゲルより
追伸
この国には桜と言う花が咲き乱れている。見せてやりたいよ。
「人質じゃないから安心しろ……」
笑って告げると、紙と筆で。桜の絵を描いた。
直接見せれない代わりに――。
離れていても心は繋がってます




