80話 《盾》。姉の不在を耐える
タイトルの割りに前向きです。
――姉さん。お元気ですか?
机に向かい。報告書の様に手紙を書き綴る。
――俺も国も安定してます。
神地から来た技術者のおかげで作物の出来にくい我が国の土地改良が進み。(神地では農作の為に技術が進歩したと過言ではないと自慢されました)わが国では出来にくかった作物も育てられるようになりました。森の管理方法も神地とわが国では大きく異なり、我が国の技術者も興奮して聞き入ってます。
保存食も増え、冬の間に食べ物が手に入らずに飢えて亡くなる者が多かった我が国ですが、その被害が減るのではないかと安堵してます。(もっとも凍死の心配はまだ残っていますが)
陛下も姉さんが居ない事が安定に繋がったのか内政の方で力を入れて国は栄えています。先代の目は正しかったのかと目から鱗の状態です。
皇太子も大きくなり、剣術を学んでいます。おそらく、姉さんから学びたいのでしょうが、今姉さんが居ないから姉さんの部下から教わっています。あっ、そうそう。姉さんほどでは無いが、俺の方も兵の訓練を教えています。でも、姉さんからすれば、教え方が甘いと言われるかもしれないです。
姉さんの方はどうですか? 会えないのは分かってますが、姉さんは無理する性格なので心配です。
と言っても、俺は無理してないと言いそうですね。……困った人ですからね。
さて、長々と続きましたが、そろそろお終いにします。早く会える日を願って。
貴女の最愛の弟リヒトより
追伸 妃殿下が桜草(プリ―メル)が咲いていると見付けて押し花にしてくれたので一緒に入れます。
手紙を書き終えると席を立つ。
「………」
窓から見える桜草の花。
「姉さんの花。か」
ルーデル邸。そこの庭には桜草が咲き乱れる。
「………」
いつもこの窓から姉の姿が見えた。
ある時が鍛錬していて。
ある時は馬の世話をして。
子供と遊び。
常に楽しげに笑っていた。
「姉さん……」
寂しいなど言っていたら笑われる。
今まで一緒に居たのがおかしかったんだ。
それでも。
「空白が辛いな」
弱音が漏れてしまう。
「……いけないな」
ほんと参った。
独り言を言っている時点で重傷だと思って剣を手にする。
マイナスな考えに向かう前に気持ちを切り替えるのにはくたくたに疲れる事だ。
それに毎日の日課だ。やり忘れると腕が鈍る。
それに。
(強くならないと)
姉さんより強く。頼ってばかりではなく頼られるように。
姉さんを支えられるぐらい強く。強く。
剣を振る。
想像の敵は実の姉。
姉ほど強い存在を自分は知らない。
幻の姉の剣は鋭く攻撃してくるのを避ける。
そして反撃するが、その剣を塞がれる。
負けれない。負けたくない。
そう思ってその幻と戦い続けた。
幻の姉でもリヒトはなかなか勝てません




