79話 《剣》。天都の国を観察する
フリューゲルはまだカルチャーショックを受けている途中
新兵の訓練は慣れている――。だが、
「人外に訓練を教えるのはした事無かった」
ずどーん
草の床――畳というらしい――に横になってしまう。この国ではこれが降らしいが寝台がないというのが戸惑う。
いや、戦場では地面に毛布を引いて眠るけど。
正直に言おう。
舐めていた。
訓練は環境とか諸々で変化するだけで、同じ人間だ。コツさえ教えれば――そのコツというのは常識では分からないレベルだが――使えるようになると思っていたので、神地を調べる時間をたっぷりとれると思っていた。
だが、訓練に加わったのは神地の人間だけではなかった。
一応、人間だけに教える。そうなっていたが、その人間一人に付き最低3人――神地の者から柱と数えて下さいと言われた――の神が憑いてくる。
そして、訓練をしている最中――。
「まさか、増えるとは……」
やる気を見せた兵士の身体からパコンと何かが出てきて、それが新しく憑いてくる。
そして、生まれるたびにどこからともなく人が集まり――新兵だけではなく近くにいた者達全員だ――その誕生を祝う。
幻獣でも親から生まれるものだ――実際に見せてもらった事がないけどそうエドワードから聞いた事がある。密猟を警戒して子育てはよそ者には絶対見せれないそうだ――それなのに、
「人からぽこんって、ぽこんって……」
ああ。いい香りがする。藺草って言っていたなぁ~(現実逃避中)
「陛下の嫌がらせじゃないだろうな……」
ありえるが、まあ、そんなことないだろう。
「………」
じっとして。
「うん。うじうじしていても仕方ない」
立ち上がる。
「どんな状況でも慣れないとな」
環境になじめないなどと言ったら敵の攻撃に反応できない。順応にならないと。
「そうと決まれば」
リヒトに土産話を用意しないとな。
そう決めると外に出る。
障子戸という引き戸を開けて外に出る。
「月が綺麗だな……」
青くて白い。
「我が国では愛のささやきですよ」
声がする。
「烏丸……」
庭園。池のほとりで着物を着て立っている――後で聞いたら浴衣という着物だと説明された。着物と少し違うという事だが、違いが分からない――烏丸の姿。
「お散歩ですか?」
「ああ。この国の事を知りたくてな」
「ふふっ」
袖口で口元を抑えて笑う。
「なんだ?」
「ラサニエルさんと同じだと思いましてね。――神の誕生に立ち会ったそうですね」
口調が変わる。
「我が国ではその人間の成長で神が生まれます。人の成長の証です」
だからこそ、お祝いする。
「分かりやすい成長だな……」
「そうですね。人から生まれる事に違和感を覚えるかもしれませんが、象徴と違いはないでしょう」
人から生まれるという意味では。
「ああ。そうだな」
じゃあ、この国では象徴が生まれやすいという感じなのか。
「象徴とは少し違いますけど、ある意味私の兄弟のようなものですね」
微笑んで告げる。
「――どうして、エーヴィヒを同盟相手に選んだと思いますか?」
「さあな」
言われても……。
「他の国と違って、エーヴィヒは防衛特化。――私は神地を守りたい」
真っ直ぐな眼差し。
「だから、貴方の国を選んだんです」
その言葉に、
「俺でか……」
「そうかもしれないですね」
くすくす
つくづく曲者だな。こいつは。
「さて」
くすくす笑ったまま。
「明日からも大丈夫そうですね」
……心配して態々見に来たのか。
そう気付いた時にはすでに烏丸は居ない。
「さてと」
明日からもがんばろうか。そう、この国をもう少し見てみたいと感じたのだった。
さて、次回は料理で驚いてもらいましょう(嘘)




