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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
青年期。友人を得る
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65話  《剣》。神地の大君に出会う

陽神子さん登場。

 何もない空間だった。

 そのはずだった。


「だったよな……」

「ええ……」

 始まりの地が、海の上に浮かんだと思った矢先。荒れた岩と土しかなかったはずのその場所に煌びやかな宮殿が出現して、給仕が居ないのに世界各国の料理と何処からともなく聞こえてくる音楽。


「「………」」

 呆然と見てしまうと、

「始まりの地の本来の姿は象徴しか見れない。って、聞いてたけど……こういう事だったんだ……」

 マーレも初めて見たのだろうぼんやりと呟く。


 宮殿に次々と入ってくる国の代表。

 そこには当然うちの国の王も居る。


「ヒメル。そこにいたか⁉」

 ………相変わらず。リヒト(ヒメル)を呼ぶんだな。


(俺の事は眼中に入ってないって言うやつかな)

 まあ、リヒトは象徴の中では大きい方――巨人は置いといて――だから見付けやすいだろうけど。


「……ちっ」

 俺を見掛けての舌打ち。

「陛下」

 呼ぶだけで窘める。


 象徴と王が不仲だと噂がたったらどれだけ国交に影響があるのかと口に出さずに告げる。


「それくらい分かっている!!」

 人目を気にして小声だが、忌々しいという口調。


「………」

 内政向きで戦争などの争い事は向かない王だったが、その劣等感で自分の得意分野にも影響を与えだしている。


「ね…姉貴」

「ああ。頼む」

 まだ、俺だけに敵対心を向けているから大丈夫か……。リヒトとはうまくいってる――リヒトが公私混同してないからだけど――のだから。


「さて……」

 リヒトが王を何とかしてくれるのはいいけど……。


 外交はリヒトに押し付け…任せるつもりだったがそう上手くいかないだろうな。


「とりあえず、陛下が動く前に…」

 神地の…女帝の国に挨拶していこう。さて、その女帝様は……。


「烏丸。烏丸。神がいないわ!!」

「大君落ち着いてください」

「だって、あれだけおられたのにここに来たら気配が感じられないなんて………」

「大君。ここは始まりの地。神ですら入るのを躊躇うのですよ」

 烏丸と煌びやかな――以前エリーゼが神地からの輸入物だと見せてくれたヒナニンギョウというのによく似ているな……――服――後日十二単という着物だと教えてもらう――に身を包んだ見目麗しい少女――これもまた年齢を聞いたら三十は超えているようだ――が烏丸の袖を掴んで興奮したように話し続けている。


「始まりの地って、神すら遠慮するものなの?」

「……いえ、そうですね。ここは不可侵。本来なら立ち入りを禁止された場所なんですよ。神も精霊も霊獣も」

 烏丸の説明に、

「そういうものなのですか…?」

「ええ。――我が国は八百万ですが、他の地では神は複数いるのは奇妙なモノです。いくら神でも他国の常識にのっとり礼節をもって遠慮しているのです」

「……わたくしからすれば、神が見えない事自体奇妙です」

「神地には神地の他の大陸には他の大陸の決まり事があるモノです。この地では神は人の傍には居ない。そう思って下さい」

 柔らかい口調で優しく教える烏丸。


「で――」

 視線を向ける。

「何の御用ですか?」

 烏丸の言葉に、大君と呼ばれた女性はじっとこちらを見て、

「月神……?」

「ふぇっ⁉」

「違いますよ。大君」

「しっ、知ってます!! ですが、月神様もこのような御髪をしてましたので…」

 じっとこちらを見てきて、

「あの……」

 恐る恐る。

「触れても……」

「大君」

「いいけ……いいですよ」

 ついいつも様にいいけどと言い掛けて相手は国家君主だと思い出して丁寧な口調にする。


 さらぁ


「――剣。ですね」

「はいっ?」

「――我が国では髪は神に通じると言われて、触れる事でその存在の本質が分かるんです」

 烏丸が告げる。


「国の鍛冶神が見たら喜びそう…貴方の髪を混ぜた武器は護身用として持たせればおそらく危険を未然に防いでくれる」

「……」

 驚いた。

 まさか、ここまで本質を見抜くとは……。

(俺を生み出した騎士達すらしばらく俺の本質を信じなかったのに)

 流石神地と今更ながらこの国との交流は間違えてはいけないと危機感を抱いた。







Q.十二単で重くないですか?

A.重いですが、これが正装です

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