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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
青年期。友人を得る
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50話  《冬》。世界を動かす鎌を振りかざす

実は、船に乗って無いイワン

 イワン・ストラビンスキー。

 リンデンの象徴だある彼は、地震と雪崩。その二つの災害に襲われた自国をほかって、そこに来ていた。


「わぁ~。相変わらずびくともしないや~」

 そこには横たわる白い大蛇。


 神地に入るのを防いでいるのは、海からは鳥居。そして、陸地からはこの大蛇だった。


「地震が起きたから入れるかなと思ったけど」

 そう上手くいかないんだ。残念。


 呟いて、大鎌を手にすると。

「攻撃したらどうなるかな」

 と構えると、

「――兄さん」

 声を掛けられる。


「……何の用?」

 にこっ

 

 そこには、リボンで髪を結んでいる一人の少女。

 最近。侵略した国の象徴。いや、その国は消えたのにまだ象徴は生きている。


「ヴィクシー・ココーリトフ」

「……今は、ストラビンスキーです。兄さん」

 兄さん。そう告げてくるその姿が不快だ。


「――民に見捨てられて、僕に媚び売らないと生きていけない身分って、大変だね」

 嫌味である。

「……いえ」

 首を振ってくる。


「私は、見捨てられてません。兄さんの傍で、兄さんの役に立てと送り出されましたから……」

「――そんなの綺麗事だよ」

 そんな事も気付かないんだ。


「違いますっ!! みんなはっ!!」

「信じるのなら勝手だけど君を僕は妹だと思ってないから」

 第一、

「君の名前。《近づく希望の春》だっけ? 僕とは全然違う名前だね」

 そう《凍てつく冬の死神》の自分と《近づく希望の春》。


 分かり合えるわけがないだろう。


「そんな訳っ⁉」

「――ないって言うの? ホントに?」

 尋ねると返ってくる沈黙。

 それが答えだ。


「君を生み出した民の思惑ぐらい。僕も上層部も気付いているよ」

 疲弊している民。その民は現れた春の意味を持つ象徴に希望を見出すだろう。

 ………冬の恐ろしさから終わる春を望んで。


 象徴の交代劇。それをお望みだという事も。


 国は滅ぼされても、象徴は成り代わる。――面白い復讐劇だろう。


「……私は、そこまでの力はありません」

「噓ばっか」

 綺麗事しか言わないのかこの象徴は。


「――民が望めばそうなるんだよ」

 僕らが望む望まないじゃないのだ。


「――知ってる? 象徴は求められている限り死ねないんだよ」

 こんな感じでね。


 しゅっ


 大鎌で彼女の身体を切り裂く。


「っ!!」

「痛いでしょ。これでも死ねないんだから。ホント」

 見下すように、

「可哀想に」

 嘲笑する。


 血塗れでもゆっくり、ゆっくり回復する。


「痛いのは嫌でしょ? これに懲りたらもう来ない方がいいよ」

 僕は一度言っても分からない子は嫌いだもん。


 それきり、振り向かない。

 興味もない。


 それより――。


「さてと」

 大鎌を振りかざす。


「壊れちゃえ(笑)」

 鱗は堅いと思った。斬れないと。


 だけど、あっさり斬れた。

 正直拍子抜けだ。


「――不浄に弱いのを気付いたか?」

 声がした。


 雨雲。

 雷。

 そして、降りてくる黒い龍。


「君が、この地の象徴?」

 神地の象徴は人の姿と空想の生き物の姿。二つの形を持つのは聞いた事があった。


「分かっておるだろう」

 黒い龍――神地と新地の民が音の大陸と呼ぶ地域では同じ巨大な鱗を持つ物であっても姿は若干違う。僕が物語で見る物は――イーシュラットには居るらしいけど――蝙蝠のような羽根があり、象のような胴体に丈夫な四本の足があるが、これには無い。


 蛇のような胴体があるだけだ。


「うん。不浄って何?」

 にこにこと尋ねると、

「血の事だ。ただの怪我ならまだいいが、故意に傷付けて悪意を含んでおるのに弱い」

「覚えておくよ。――また引き篭もった時の切り札になるだろうし」

 その言葉に、

「――礼節を知らぬか」

 龍は人の姿に変貌する。


 肌を除けば黒一色な外見の青年。


「知らないよ」

 だって、

「そんなものあっても飢えは消えないし、寒さは去らない」

 だったら足手纏いにしかならない。


「――貧しいな」

「そうだよ。うちの国は貧しくて弱い」

 だから奪うんだよ。


「そういう意味じゃない」

 向けられる瞳は憐憫。イラつくな。その上からの眼差し。

 消しちゃおうか。


「兄さん!!」

 まだ回復してないのに無理に動いて背中から抱き付いてくる自称妹。

 ほんと邪魔。


「駄目です。兄さん!!」

 別に言う事を聞くつもりはないけど。

「まあ、今日は君に会うのが目的だったから」

 ここで殺す気はない。


「もう帰るよ」

 そう、いつでもいいのだ。

「また来るよ。年寄りでも僕は手加減しないから」

 そう。遊び相手が増えた。それだけの感覚だ。


 地震で国も荒れてるし、象徴らしく仕事しないとね。


 そう、――宣戦布告は出来た。


「………」

 甚振るのはいつでも出来る。


 にやりっ

 笑いが込み上げてくる。


 これからの事を考えると面白くてしょうがなかった。





黒い龍は神地組が散々言っている(?)伯兄(長男です)

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