180話 《剣》。頭を抱える
うん。久しぶり……
書類仕事は相変わらず面倒だな……。
それでも後回しにしないできちんと目を通すのだが。
「殿下……いや、陛下か。あの方にも困ったものだ」
先日即位を果たした女王陛下はさっそくいろいろ政策を口にしているが、
「他の大臣達が反対して政策が上手くいかない。まあ、予想通りという事だな」
女王という立場はあくまでその場しのぎという考えの大臣が多いのに急に政策を進めようとしても頷くわけがない。
「――なら、ルーデル卿がお味方になれば」
傍で聞いていた部下が口を開く。
「有意義な政策ならね」
ぴらっ
書類を一枚見せる。
「確かに取るべき政策かもしれない。だけど、現実問題。どこから資金を調達するの?」
人々の生活のための環境基準向上。
治安維持。
「軍とは別の組織を作り出して治安維持を向上させる。それはいい考えだけどな。実際問題資金はない」
「それは……税金で……」
「はいそうですかと。納得すると思うか?」
確かに税金は上げる必要はあるだろう。
だが、それよりもすべき事はある。
「この環境基準向上の内容には外景が殆どなんだよ」
最近作られた車という道具が通りやすいように街並みを綺麗にして道を広げる。
街並みが綺麗になるのはいい。
だが、そこに住んでいる人は?
「道を広くするためにどれだけの住民が家を失うんだ?」
「……………」
「その人達に救済する仕組みは? 資金は? 与える土地は?」
追い出すだけ追い出して、無一文にするつもりなのか。その辺の事は書かれてない。
「それだけでも税金を使う必要があるだろう。そして、治安維持を軍以外にするという事もだ」
人材はどうやって集める?
命令系統は?
「ルーデル卿……」
「――見せかけだけの政策」
そうとしか思えない。
「では……。卿がするとなればどうしますか?」
部下が問い掛ける。
「そうだな……」
にやり
「まず。領主。大臣達の生活状況。領民の暮らしを調べる」
「はい……?」
「領民の生活を見て、領主の暮らしぶりを観察。――国の基準以上に金を集めている蛆虫は多いからな」
「……………」
軍という組織だから動けない状況もある。
「そして、証拠を集めて罷免。その際の財は全部没収」
「……………」
「民にただ返すというのは難しいだろうから。その没収した財を元に生活向上をするための施設を作る。そうだな。病院とか学校とか。あと仕事を見つける事が出来るようにするとか」
「………………………………」
「で、それに入れずごろつきに身を落とした者達は軍でみっちり調きょ……教育して」
「今調教て言いましたよねっ!!」
「――気のせいだ」
「気のせいじゃないですよっ!!」
「まあ。それでしごかれて、治安維持をするための組織をそこで作る」
「話を誤魔化してませんか!!」
「戻しただけだ。人聞き悪い。――で、ごろつきとして暮らしていたから暗部には詳しいだろしな。そこからしっかりお掃除してもらう」
まあ、言うだけはただだけど。
「という事で、環境向上するならそこから手を付けるかな」
張りぼてを作っても意味ないしな。
「そこまで分かっているのなら……どうして陛下に伝えないんですか?」
「――聞く耳を持たないからだ」
長い事象徴として王をたくさん見てきたからこそ分かる。
「象徴と言う存在を後ろ盾にしたくないから。俺の傀儡になるのが嫌だという考えで遠ざける者もいた。彼女はその部類だ」
「……………」
そういう王は長く続かない。
だけど、次の王の候補すらいない。
「まあ、でも」
幸いな事に。
「リヒトの声はまだ届いているようなんだよな……」
「ルーデル公。ですか」
「ああ。アイツの手腕に期待するか」
もともと内政はあいつの方が向いているんだし。
「その事ですが……卿」
「どうした?」
部下は恐る恐ると見せたのは。
「愚王になるつもりかっ!!」
象徴――ヒメル・グランディア・ルーデルと自身の結婚を承認する書類がそこにはあった。
象徴と結婚は出来るのか待て次号!!
「無理だぞ」
フリューゲル




