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ニンギョウタチの物語  作者: 高月水都
幼少期。《剣》に出会う
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12話  《剣》。《約束》に借りを作る

フリューゲルとエドワードは仲いいです。どちらも弟大好きです。

 意識のないリヒトを腕に抱いて、そっと、そのサラサラな金色の髪を撫で続ける。

「まさか、玉座とはな……」

「………」

 エドワードの言葉に沈痛の表情が浮かんでしまう。


 そうであってもらいたくないと思ったが、願いは届かなかった。


「いや……考えてみれば、その可能性は高かったよな。玉座の名を持つ象徴は一定の周期で現れやすい。――人が圧倒的強者を求めているんだ」

 悲鳴の様に吐き出した名前。


 まるで、末路を知っているようなそれだった――。


「………」

「玉座の名を持つ象徴はどれも悲惨な最期を迎える。大きくなりすぎて、多くの血と死骸で築かれた帝国は同じくらいの血と死骸で崩壊する」

 そして、滅んだ国の最後の生贄は象徴。


 その時代の一番残酷な処刑方法で殺される。


 ギロチン。

 串刺し。

 水牢。

 火焙り。


 多くの者に象徴の死を見せ付けて、希望の芽をすべて排除する為に――。


「こいつは!!」

 抱き寄せる。

 強く強く。


「こいつは俺の『弟』だ」

 守るため。その為に牙を向く。

「こいつは玉座じゃない! こいつは玉座の盾。俺の弟として、俺の対の意味を持っている!!」

 だから、

「こいつは悲惨な末路など無い!!」

 俺が守ってやる。

 こいつをそんな終焉にさせない。


「………兄上の様に、しない」

 玉座の名を持っていた。

 象徴として弱く出来損ないだった自分を身分など気にせず守ってくれた兄。


 国を離れた隙に、内乱で死を迎えた人――。


「……弟を守りたい気持ちは分かる」

 エドワードの言葉で顔をあげる。


「フリューゲル。こいつの『盾』はお前が延命で行ったから付いた後付けの名かも知れない」

 戦うための玉座の盾。

「お前が剣ならこいつは盾。お前が延命した事で民はそう認識した」

 エドワ-ドの言葉の意味は分からない。


「エド?」

「こいつから離れるな。たぶんお前が居るというのがこいつの玉座という宿命から乗り越えられるきっかけになるかもしれない」

 対の象徴に成ればいい。

「対って、マーレちゃん達か?」

 今は、人質に――表向きは留学中になっている――なっているマーレだが、国では対の象徴で二人で一つだ。

「ああ。前例もある。そうなってしまえば因果も弱まるかもしれない」

 あくまで弱まる程度で完全じゃないがな。


「まあ、マーレ達の様に顔がそっくりと言うわけじゃないから難しいが……」

「人の世代交代の内に定着するだろう」

 それまで苦労するだろうが、

「そうだな……」


 沈黙が流れる。

 

「……もしもの時」

「んっ?」

「もしも。お前の力でこいつを守れないと思ったら一度だけ力を貸してやる」

「エド……」


 風が吹く。


「お前には一応借りがある。放浪時代に傭兵としてお前の騎士団の力も借りた。だから、一度だけだ」

 後は知らん。


 そっけない言い方。


「《約束》に言われると頼もしいな」

 当てにする。俺の力が及ばない時に頼むだろう。

「――出来れば、その日が来ないといいけどな」

 そう告げると、エドワードも全くだと苦笑いを浮かべた。



次回、リヒトにショックを与えてみたい

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