13話 **改めて《盾》。その事実に驚愕する
さて皆さん。お分かりになりましたか?
頭が重い……。
「起きたか?」
目の前にはルーデル。
「僕は……」
どうして寝てたの?
尋ねようとして思い出す。
真っ暗な空間。
星。
玉座。
盾。
僕の名前――。
「重たい名前だよな」
寝台に腰を下ろし、
「象徴名は人の祈りだ。それだけの願いが込められている」
重たいよな。
小さな身体で背負うのは。
「ルーデル……えっと、兄さ…ん」
兄と呼ぶのは緊張するなと思いつつ、勇気を振り絞って告げると、
「ふぇっ⁉」
驚いた顔。そして、
「フリューゲル。お前まさか言って…」
ばたばたばた
エドワードが何か言い掛けたが言葉が途切れる。
何者かが、近付いてくる気配。それに二人が反応して口を閉ざし、その音の正体を見極めようとして自分達の気配を消したのだ。
「エドワード!!」
ばあぁん
勢い良く開かれたドアと共に現れる煌びやかなドレスを身に纏った女性。
「陛下っ!!」
エドワードの険しい表情は四散する。
ルーデルも同様で、その存在を見つめてどこか楽しげに笑う。
「エドワード。わたくしに内緒で何をしてらっしゃるの!?」
怒りながら入ってくる女性。
「リヒト。この国の女王陛下だ」
ルーデルがひそっと教える。
「女王……」
女の王が居るのに驚いていると、
「この方は例外なんだ」
と教えてくれる。
「――陛下」
エドワードの声が厳しい物に変化する。
「他国の象徴の前ですよ」
叱り付ける声。
「えっ……?」
その時になって彼女は部屋を見渡す余裕が出来たのか見渡して青褪める。
「――お初にお目にかかります。女王陛下。俺は、エーヴィヒ公国の象徴。人での名は、フリューゲル・プリーメラ・ルーデルと申します。お会いできて光栄です」
そっと、女王の手を取って、口付けるような仕草をする。
それが、女王を冷静にさせる為に、告げた言葉で、女王も公人として礼節を取り窓すきっかけになる。
「エッ、エーヴィヒの象徴でしたのね。てっきり、エドワードがわたくし以外の者に手を出したのかと……」
申し訳ありません。
深々と頭を下げてくる女王に、
「陛下。――国主が簡単に頭を下げられてはいけません。――俺の方も旧友を頼り礼儀に欠けておりました」
と詫びるルーデル。
「そっ、そう。お友達ね。――分かりました。エドワード。国の威信にかけて礼儀を尽くしなさい」
命じると去っていく。
「参った」
「あれが噂の。お前を伴侶にするって言っている女王様か」
「ああ……。象徴に伴侶を求められてもな」
正直困るとため息を吐くエドワードに、
「もてる男の苦労だな」
まあ、がんばれ。
ルーデルは完全に他人事だ。
「それにしても――、お前が男装していて助かった」
「男の格好じゃないと見下されたからな。貧相な格好なのも幸いした」
もう少し筋肉が欲しい所だけど。
筋肉付きすぎるとドレスが着れないぞ。
二人の話。
何か妙な事聞いたような――。
「それはともかく、言ってなかったのか。こいつに自分は女だと」
呆れたようにため息交じりで告げられる言葉。
「ああ。――そういや言ってなかった」
そんなそんなそんな。
ずっと男だと、兄だと思っていた。
まさか、
「女性………」
その女性に起きぬけに攻撃しようとしていたの。
青褪めていく、自分のした事が恐ろしくなる。
「ああ。一応な」
女性らしくしてないし。
「だから、フリューゲルは兄さんじゃなくて、姉さんだな」
エドワードが可哀想なモノを見る眼で見てくる。
「騎士団の象徴で生まれたんだけど、色素欠乏症だし、女だし、完全に見下されていたからな。せめて舐められないように振る舞っていたらこうなってな」
傑作なのは、シュトルツのやつが、俺を男だと思い込んで男としての礼儀作法をすべて叩き込んでから女だと気付いた時のあの顔。
「あいつ。まだ、諦めてないのか。お前に女の礼儀作法を教え直すのを」
「ああ。先日会いに言ったらその手の事言われたよ。ってか、俺と真逆な事を今度はマーレちゃんでしてるんだぜ!! 笑える」
二人だけで盛り上がっているが、それに口を挟めない。
ルーデルが女。
その事実がショックでしばらく何も言えなくなっていたのだった。
うん。実は女装が似合う男性とか、男装の麗人が好きなんだな………




