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【最強最弱】猫を救ったら、5つの異世界まで救ってしまった!勘違い無双の英雄はヒロインたちにハッピーリタイアさせられる  作者: ニャルC


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幕間:他者への救済に依存するヒーロー?

※淡海領主の館


若津城の天守閣が長き闇を抜け、新たな「希望」の光に温かく包まれている頃。

その淡海の湖畔を見下ろす領主の館は、湖底のように静まり返っていた。


広間の影に佇む領主は、静かに目を閉じる。

彼は声を発するのではなく、「他心通」による念話を開始した。

(――玲姫が若津の玉座に返り咲いたようだな)


冷ややかな響きを持つその思念の問いかけ。

若津城にいる老家臣の焦燥しきった思考の波が、すぐさま返ってくる。

(それどころではない!あの武王が天守閣にそのまま居座ってしまったのです!)


(……かつてシップを撃墜した、忌々しい古代の亡霊か)

(叔父の失脚が決まる前に、傷が浅いうちにさっさと手を引いて撤退したかったのですが……それも失敗)

(身内だからという甘えか、あるいは女ゆえの油断か。最後の最後で情を断ち切れず、

トドメを刺しきれなかったのが、あの叔父の最大の敗因だな)


領主の思考には、呆れと微かな冷笑が混ざり合う。

(あの叔父は、魂を鍛え上げるための砥石としてはまさに適任の駒だったのだが……。

このザマでは、同じように地道に目的へ向かって励んでいるはずの『他のセクターの同志』たちに対しても、

顔向けができないというものだ)


(では、計画は……?)

(いや。道化を演じてきた苦労が水の泡になったわけではない。幸い、連中は我々の正体や目的に気付いていまい?……焦る必要はない。これまで通り、地道に工作を継続し、次の機会を待つとしよう)

思考の交信をピタリと打ち切り、念話を終了させる。


戯れに他のセクターに精神波を向けてみる。

「同志よ、応答せよ!同志よ、応答せよ!……やはり『座標』が必要か」

現実の空間へと意識を戻した淡海の領主は、ふっと薄い笑みを浮かべる。

その整った顔の上に、「道化の仮面」をしっかりと被り直した。


古代のシップに取り残された人は、現世を砥石とすべく暗躍していたのだ。


※モダンセクター

メトロ・ポリスの中央のカジノホテル「ジャック・ポット」最上階。


巨大な円卓を、純白の法衣の人物たちが囲んでいた。

彼らは神通力――「天耳通」によって遠く離れた和風セクターから回収された数多の「音」を、解析し続けていた。


「観測終了。玲姫が向けた思慕も、一国の主という莫大な権力も、あの男は一顧だにせず捨て去った。

一見すれば、一切の執着を絶った『空(くう)』の境地に近いように思えるが……」


評議員の一人であるAが、静かに思念を巡らせる。

部屋の片隅にいた黒猫が、やれやれと言った様子で鼻を鳴らした。


「ふん、あんな奥ゆかしいアプローチ、ファズには届かんよ。

あやつの鈍感レベルはすでにカンストしておるからな!」


「……否、それは楽観的に過ぎましょう」

静まり返った場に、評議員Bが冷ややかな声を挟む。


「彼は確かに世俗的な名誉や欲には無関心だ。しかし、『救済(ヒーロー)』という概念そのものに対しては、

ある種の病的なまでに狂おしい執着を見せている。

絶望と戦うために自ら好んでセクターを渡り歩くその姿は、他者への慈悲というよりも、特定の救済行為に精神を依存しているようには見えませんか?」


「依存、ですが……」

評議員Aは反論する。

「彼は若津の叔父に向けてこう言い放った。『ヒーローを必要とする国の方が不幸なんだ』と。

もしそれが単なる自己満足の依存にすぎないのなら、自己の存在意義を否定する言葉は口にすまい」


「そこにこそ、最大の自己矛盾があるのです」

今度は評議員Cが、鋭い眼光を向けて指摘した。

「彼は『自らを不要な存在にするため』に、その絶大な力を使う。

救いたいがために、自らの居場所を奪い続ける……このあまりにも逆説的な救済論は、いつか必ず破綻をきたす」


部屋の片隅にいた黒猫が、呆れたように大きなため息をつく。

「理想と現実の区別もつかんか、頭でっかちのインテリ共め。

理想を掲げ、その理想を少しでも現実に近づけようともがくことこそが、生きるということじゃろう?

それにあやつはただ、目の前で泣いている者がおれば見捨てず手を貸す

――それだけの、どうしようもなく救いようのないお人好しなだけじゃよ」


※モダンセクター

ニコロ執政官の執務室。

冷たい無機質な光が差し込む部屋の中で、ニコロは視線を黒檀のデスクの前に立つ科学者へと向けた。

「……レオナルド博士。例のキューブ、戦艦RB2の動力源であったエネルギー体の解析状況はどうなっている?」


問われたレオナルド博士は、眼鏡のブリッジを押し上げながら、慎重に言葉を選んで答えた。

「はい。未知の領域が多く、完全な再現には至っておりませんが……技術体系を逆算し、その出力を落とした『ダウングレード版』の試作であれば、我々の技術でも十分に作成可能です」


その報告を聞いた瞬間、ニコロの顔に冷酷な笑みが浮かんだ。

「――素晴らしい成果だ。さすがは天才と名高いな」

「執政官……一体、何のためにそのようなものを?あのキューブのデチューン品を……」


ニコロは窓の外に広がるモダンセクターの整然とした夜景を見据えながら、静かに、しかし底冷えのする声で言い放った。

「ラムダ基地にイタズラをした小僧が、あろうことか他のセクターに逃亡した。

そんなこと二度としないよう、徹底的に教育してやる」

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