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ふしぎなロボット少女

ミシッキシッ

木造の趣深い建物に踏み入れた瞬間足元から木が擦れるような音が聞こえてきた。

その音に何故か不安を煽られ歩くスピードが遅くなる。

「えっと、これは昔の木で作られた建物なんです。床が抜けることがたまにあってですね…」

ロボットは恥ずかしそうに、金属の手で顔を隠した。

「そうか…ん?床が抜ける?」

こんな音、今主流の建物でも聞いたことのない音だった。床をなくすと言う取り組みで足への負担を無くす半透明床が流行っているくらいなのだ。床に音をつけるなんて一部の変わり者しかやりたがらない。

ここの路地に来てから今まで体験したことのないことを経験する。映画の中に入ってしまったと感じる。

床が抜けるという言葉だけが気になるが…


さっきまでは何かと焦っていたから目の前にいるロボットの少女の異質さに気が付かなかった。

身体は全て無機質だが、顔だけ人間のように作られている。本物のような灰色の髪の毛は肩の位置で綺麗に整えられていた。


声や顔に映し出される表情はまるで人間の少女を思わせるように感情豊かである。

その身体は金属のように光沢のある材質で作らおり、真っ白な身体が褪せた朱色のエプロンを目立たせている。

目の前のロボットは殆ど人間と変わらない動きをする。

声を含めた感情表現だって現代人より感情が分かりやすいかもしれない。ロボットにつける感情は人間にとってトラブルの元とつけないようになっているのだ。


「ここです!」

ロボットのるんるんとした声に俺は顔をあげた。

ロボットはその空間を自慢するかのように大きく手を広げていた。


「どうですか?どうですか?」

やけに感情豊かなロボットは感想を聞きたいのか、俺の近くに金属音を鳴らしながら近づいた。

「これは…?」

狭く暗い道を抜けた先は、店が広がっていた。


お世辞にも綺麗とは言えないお菓子の陳列、多分本物の木で作られている床や柱、日の光のような暖かいオレンジの照明。

木造の店なんて行ったことがないのに、何故か懐かしさを覚えた。


俺が驚いている顔を見て、ロボットは満足気に笑う。

「ここは…菓子屋か?」

「いいえ、これは駄菓子屋って言うんです。」

「駄菓子屋…」

聞いたことがない言葉だ。でも、この店をお菓子屋と言うには少し違う気がした。駄菓子屋という言葉は何故かぴったり合う。


「そうだ!良ければお菓子ひとつ買っていきませんか?」

「菓子か…」

菓子など今は殆ど海外が作っていて、ひどく甘い菓子は自分は苦手だった。

でも、これは何かの縁だと1つ買って帰ろうと思えた。

異世界に迷い込んだみたいなこの店に何故か二度と寄れない気がした。


支払いの為、いつもスマホを入れていた胸ポケットに手を伸ばす。いつもより軽い胸ポケットには壊れた携帯の重要なパーツしか入っていなかった。

「あ、そうだ。今現金しか持ってなくて…対応してなかったら申し訳ないんだけど…」

その言葉を聞いてロボットはうんうんと頷く。

「いいえ、家は現金でしか払えないです」

「え!?この時代に現金のみなのか?」

つい出した言葉にロボットの眉がわかりやすく下がる。

「えぇと、良いんです…だって駄菓子屋のメイン層は子どもだし…」

「でも、今7歳以上のディレバ保有率って90%超えていた気が…」

その言葉にロボットは

「あぁ、まぁ、そうかも、でも、ええと…」とブツブツと何かを言っていた。

いじけたように口籠る様子は子どものようにも思えた。


「えっと、じゃあお菓子のお勧めを教えてくれ。」

そういうとその言葉を待っていたかのように、お菓子が入っている棚を漁り始めた。

「これです!」

ロボットが持ってきたものは手のひらより小さな白い容器だった。

「これは?」

「食べてみてください!」

家に帰って食べるつもりがそう言われ、キラキラした目に耐えられず、お菓子を受け取った。裏に『あたり』という文字が書いてある蓋の下に、白いお菓子が出てきた。


そのお菓子を恐る恐る食べてみる。

「ん?、なんだこれ?」

甘酸っぱくヨーグルトみたいなにおいがするが、しかしぬるいしヨーグルトではないようだ。ジャリジャリした食感がしたと思えば、不思議と口の中で溶ける。

「どうですか!?美味しくないですか!?」

ロボットはこちらをジーッと見つめている。

「…いや別に美味しくはない。」

「ええっ!?」

「なんか、脂っこいし。」

「えー!?」

ロボットはそんなに残念だったのかガシャンと音を立てて座り込んだ。


「でも、面白いな。」


言葉を聞いてロボットは目を見開く。

「普段そんなにいい食べ物食べてないんだよ。今じゃ全て食事はゼリーで済んじゃうしな。だから食事に楽しみを求めようなんて思ってなかった。でも、これは食べてて楽しい…」

それを聞くとロボットは俺の肩に金属でできた手を置いた。

「…そうなんです!駄菓子は面白いんですよ!」


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