小さな嫁入り 壱
瑠璃華の代わりに嫁ぐことが決まってから、一週間。とうとう嫁ぐ日がやってきた。有り得ない速さだ。私を歌橋当主夫妻の愛娘である瑠璃華に見せるため、大量の花嫁道具が用意された。花嫁行列に私の乗る輿はない。代わりに弥月と私は二人で一つの駕籠に乗せられて花嫁行列とは違う険しい道を進んでいる。両親によると私なんかをあの豪華な行列の一部にするなんて汚らわしい、ということらしい。
「なぜ、旦那様と奥様はご自分の娘御である葵月桜様にこのような仕打ちが出来るのでしょう。普通はもっと祝うのでは?」
弥月の言葉も尤もだが、私はあの人たちに普通を求めるのをとうに諦めている。だからあまり気にならなかった。険しい道を進んでいるから、体が揺れるのは気になるけど。そんなことを考えていると、まるで私の考えを読んだかのように駕籠は険しい道から平らな道へと行き、花嫁行列のすぐ側で止まった。私と弥月が首を傾げると、駕籠を運んでいた人が窓から声をかけてきた。
「もうすぐ嫁ぎ先に到着しますので、花嫁行列にご同行するよう、奥様の指示でございます」
なるほど。私が駕籠で険しい道から来たら愛娘である瑠璃華という肩書きが崩れるから、直前に私を花嫁の輿に乗せると。
「さ、お乗り下さい」
私は言われるがままに、弥月と一緒に輿に乗った。私たちが座ったのが確認されると、輿と花嫁行列は進み始めた。
〇〇〇
嫁ぎ先である白桜村に着いた花嫁行列は、一旦休んでから池の上に立っている西ノ宮家の大きな屋敷の赤い橋の先の玄関で使用人たちに出迎えられた。
「お待ちしておりました、若奥様。さあ、まずは屋敷の中にお入り下さい。旅でお疲れでしょうから、今日はゆっくり休んでいただいて、明日、旦那様とのお顔合わせになります」
使用人の女性の丁寧な説明に、私は弥月に幼い頃教えてもらった礼をする。
「ありがとうございます。ふつつか者ではございますが、どうぞよろしくお願いします」
私の礼を見て、使用人の女性は顔を柔らかくした。
「私は類(るい)と申します。屋敷のご案内を若旦那様から命じられております。さ、こちらへ」




