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異世界転生したら、世界の敵になりました。  作者: 篠原 凛翔
【第4部】黄昏時

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【4-9-3】

 赴いた先はミーム様が演説された墓碑の前。実はこの場所である人と待ち合わせをしていた。まだその人は来ていないようで、ただ見知った顔が立っていた。


「このような所にいらしてたんですか? ――レナード殿」


 私の声にゆっくりとこちらを振り返る。


「このような所とは、貴方も言葉に気をつけた方がいいですよ? レオ」


 スーニャ達と共にいた時には彼は子供の姿をしていた。だが今は私にとって馴染みのある大人の姿をしている。この姿の方が私としても話しやすかった。


「失礼しました。それでどうしてこちらに?」


 彼は私の質問には返さず再度墓碑へと目を向ける。


「……随分亡くなったのですね」


 レナード殿はラフェシアの宰相まで務められた方だ。刻まれている名前の中には知るものも多いだろう。


「ええ。……それほどの戦争でした」


 人族も亜族もたくさんの命を失った。流した血はどれほどかも分からない。ふと真新しい文字が目に入った。それはミーム様の従者であったアインとツヴァイの名前だ。


 彼女らの死骸はミーム様の居城の近くで発見された。遺体の様子を見るに主人を追っての自死のようだった。


「これからはより良い世の中にしていかなければなりません。その為に貴殿の力も必要です」

「……そうですね。そうかもしれませんね」


 レナード殿のラフェシア復帰を懇願したのは他でもない私だ。この国のため彼の持っている知識と経験は不可欠だった。


 リム様は思いの外抵抗なく承諾してくれた。『構わんぞ。貴様らの中に私の手駒を入れておけば何かと都合がいい。貸しにもなるからな』との声に、ただレナード殿自身は若干渋ったような反応を示していた。


「……正直にいえば、俺はもう戻るつもりはありませんでした」


 彼はボツボツと自分の想いを語り始める。


「長い事ラフェシアにもいましたし、これ以上この国にいても何かリム様の研究に貢献できるとも思えませんでしたからね」


 彼がリム様の命令でラフェシアに入ったことは後から知った。理由は国々の情勢把握や彼女の研究への協力が主目的だったらしい。


「なのでこれを期にいったん戻りこれからの事を考えようと思ってました。リム様もそれでいいと仰っておられましたし」


 だから彼は自分がレナード殿である事を隠していたのか。自分が生きている事が知られれば当然ラフェシアに戻るように言われる。ギリギリまで明かすつもりはなかったのだろう。


「……ただ、あの時はああしてしまいました。自分でも驚きましたよ」


 それはギルバート殿との戦いの事と察した。確かにあの時レナード殿は自分の手で姿を明かした。


「まったく俺らしくもない行動です。まあスーニャとの約束があったというのもありますが」

「……貴殿に戻って頂いたことはこの国の民にとって、何よりの喜びと思っています」


『そうですか』と彼は再度墓碑を眺める。


「これを見ていると亡くなった一人一人の思い出が蘇ります。共に戦場を駆けたこと、共に食事をとったこと、挨拶した事、執務をしたこと。人によって接した時間は違うけれど、確かに彼らは生きていてその人生を全うしていました」


 その通りだ。一人一人間違いなく生きていた。生き抜いて、そしてこの国のために死んだのだ。


「自分のことながら、らしくないと思います。こんな感傷に浸るなんて。ここにくるまでは想像だにしなかったんですけどね」


『たまたまこんなものがあると聞いて来ただけなのですが』と言っている間も彼は墓碑を眺め続けていた。


 確かに以前の彼からは印象が少し違う。彼はもっと冷淡というか、感情を出さないタイプだった。


「……こんなことリム様に聞かれたら呆れられますね。もう止めましょう」

「ふふっ。そうかもしれませんね」


 彼が変わった理由はもしかしたらスーニャなのだろうか? その生き方がもしかしてレナード殿にも影響を及ぼしたとか。


 いや流石に考えすぎか。私はふうと息を吐き、彼と向き合う。


「レナード殿、改めて貴殿のお力この国の為にお借りしたい。何卒宜しく頼む」 


 私は彼に対して頭を下げる。彼が頷いたのが気配で分かった。


「構いませんよ。また以前に戻るだけですし。まあ良くも悪くも整備することは多いですからね。退屈はしないでしょう」


 確かにレナード殿の言う通りに問題は山積みだ。ただ彼の強さは世に知れ渡っている。彼の指示であれば皆素直に従う筈だ。私は再度感謝を伝え、頭を上げる。


「……おや? レオに客人のようですね」


 彼の声を受けて後ろを振り向く。そこには私がこの場に呼んだ方が立っていた。


「お邪魔だったかしら?」


 彼女は人の良さそうな顔を曇らせつつ、おずおずと尋ねてくる。


「いえとんでもない。お呼び出てしてしまい申し訳ありません。――シエルさん」


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。

この物語が、ほんの少しでも心に残ったなら――

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