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百鬼徒然  作者: 葛葉龍玄


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朧車──オボログルマ──

通学中、異様な車を目にした。

ボンネットに鬼ような形相の女性の顔が浮かびあがり、車の至る所から手が生えていた。

しかし僕以外の人には見えていない所を見ると、痛車ではなく怪異の一種なのだろう。

一体なんの怪異なんだ。

しばらく走り去って行く車を見ていたが、それは目の前で起きた。

赤信号を無視して、通学通勤をしてる人を跳ね飛ばしたのだ。

その勢いのままガードレールにぶつかり、車は止まった。

僕も慌てて現場へ向かう。

そのあとニュースでも話題になったが、死者1名、重軽傷者5名、車を運転していた男性1名が軽傷を負った。

運転していた男性は80才を過ぎていたらしい。

さらに同じ怪異をテレビでも見かけるようになった。

自転車をスマホ操作しながら運転し、老人を死に追いやった人。

高速道路で煽り運転した車。

道路を逆走した車。

線路の上を走った車。

交通ルールを守らず、危険な運転をする自転車。

「車」という単語の事故が多発していた。


祖父曰く。

朧車ってのは、とにかくいい位置で祭りを見たがる貴族たちの遺恨や怨念だ。

形ばかりで触れもしない朧な姿からそう呼ばれるようになったが、これだけ「車」と名の付く物がわんさか走ってりゃ、奴らは喜ぶだろうよ。


街を歩いていると交差点付近に花が添えられているのを見たことがある人も多いだろう。

交通事故で亡くなった方を供養するための献花、

大体の幽霊は成仏する。地縛霊となっても、時が経てばその魂も浄化される。

しかし、僕は見てしまった。

目の前で見た交通事故。その運転手が退院した時に報道陣が詰めかけたニュース。

その男性の体には、車に写っていた鬼女の顔と手が生えていた。

しかも、その手の数が増えている。

その手はおそらく、今まで朧車に殺された人たちの魂なのではないかと思った。

テレビ画面越しなのに、その鬼女はカメラ目線でニヤリと笑って見せた。

僕と目があったような気がした。

すると、その鬼女は姿を消した。

一体なんだったのだろうか。


それから数日後。電車が横転するという大事故が発生した。

もちろんニュースでも取り上げられ、大きな話題となった。

そして、その電車には鬼女の顔と、脱線事故で亡くなったであろう人々の手が増えていた。

そして手からは無数の顔が浮かびあがり消えて行った。

朧車は、こうやって増え続けて行くのだ。

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