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百鬼徒然  作者: 葛葉龍玄


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50/55

百鬼徒然道中記

 ホラー、オカルト。

 数年単位でやってくるそのブームは、下火の時ですらそれらを求める人間は少なからず存在する。


 昨今はブーム過ぎ、入部者も少なくなった、我が大学のオカルト研究部も、それにつられて入部者が少なくなっていた。

 在籍数10名。

 活動者数4名。

 残り6名は飲み会の時に来るような奴ばかりだ。


 しかし、僕はオカ研のメンバーではない。

 ないのだが、なぜかここにいる。

 どこから漏れたのか、誰が噂したのか。

 僕は「本当に見える人」として噂になり、それを間に受けたオカ研部長が俺をここに連れてきたのだ。


 部長たつみ。

 みなみ。

 はるか。

 こうすけ。

 そして僕。

 男3、女2の5人でファミレスに来ていた。


 大学からも離れていて、車以外では交通の便も悪いこのファミレスに、なぜか30分くらいかけて歩いて来た。

 なんでも。

 人数以上の水や食器が並べらることがあるらしい。

 いないはずの客。

 よくある怪談話だ。


「というわけで、我々オカルト研究部に新部員が…」

部員になった覚えなど全くないのだが、なぜかそういう趣旨の会になっていた。

 そして運ばれて来た料理や飲み物。

 ちゃんと人数分ある。

 たしかに場所は悪いが、しっかりと地鎮もされているみたいだし、特に不穏な気配はない。

 怪異は。

 起こらない。


「この前、大学を騒がせた鎌鼬の件、君はどうみる!!」

 びしり!と変なポーズで僕をフォークで指す。

 どうでもいいが、一挙手一投足がうざいな、この部長のたつみ。

「犯人は~、結局、ナイフマニアの学生だったんでしょ~?」

 間延びしたようにゆったりと喋るみなみ。

「でも、その犯人が『牢屋の中』で斬り殺されたんだぜ?その犯人を殺したのは鎌鼬だろ?」

 こうすけは暑がりらしく、しきりに汗を拭っている。

「君はどう思う?」

 部長が話しかけて来る。

 はるかはにこり、と笑ったまま、話を促すように僕はじっとみている。


「あれは…」

 最初は鎌鼬、それに便乗した人間、そして鎌鼬に、殺された、という見解を述べた。

「99.9%は科学的に証明できる。でも、0.1%は、怪異が存在するんだ」

 祖父の口癖を最後に吐いて、僕は言葉を切る。


「なるほど。君の見解としては、怪異、人の手によるもの、怪異とサンドイッチになっていた、と」

 部長がメガネを直しながら、話をまとめる。

「ちなみに、君は見えたりはするのかい?」

いきなり深いところに突っ込んでくるな……。

「普段は気配を感じる程度で、よほど強い(やつ)じゃないと見えないよ。

普段から見えてたら、体がもたない」


 そんな話を挟みつつ、あっちのスポットが、とか。ここが怖かった、だの。

 ドキュンに絡まれた、なんて話をしていた。

俺は適当に相槌を打ちながら、ドリンクバーを取りに行く。


 そして、ボタンを押して飲み物が出てくるのをまっていると、後ろに気配を感じた。

 違和感。まるで自分だけが世界から切り離されたような、浮遊感。

 しかし、その違和感はすぐに消え去った。

「あなたは本当に怪異について詳しいのね」

 みなみ。

 基本的にニコニコ笑っているだけで、会話には参加しない彼女。

 でも、こんなオカ研に入るくらいだ。

 そっち系の話は好きなんだろう。


「まぁ、祖父に色々と教え込まれたからね」

「ステキなお爺様だったのね」

「ステキかどうかはわからないけど、物知りな爺さんだったよ。聞けばなんでも答えてくれた」


 そんな話をしながら、席に戻る。

 このオカ研は基本的に部長とはるかが話し続けて、           

 こうすけとみなみが聞き役に徹する感じらしい。

 今夜も一頻り話すと、解散になった。


 お会計は別だった……。

 歓迎会じゃなかったのか?

 俺の分くらい出してくれても……。

 とおもったが、ケチくさいのでやめておいた。


 最寄りの駅まで歩き、そこで解散。

 部長とだいすけは大学寮、僕とはるかとみなみは下宿先に帰る。

 部長たちとは反対方向だ。


 電車の中でもはるかは饒舌で、みなみは一言も喋らず聞いている。

 自然、僕が相槌を打つ形になっていた。

 そして、はるかは先に降り、僕とみなみの二人。

 僕が大して自分から話すタイプではないのもあり、会話はなく、僕の降りる駅についた。

「じゃあ、僕は降りるけど、送らなくて平気?」

「大丈夫です。もう子供じゃないから」

 そういって、みなみと別れた。


 それから数日間はオカ研に呼び出された、あの怪異はどうなんだ、この妖怪はどういう背景で生まれたのか、などの議論を交わしているた。

 そんな中でも、みなみは話に耳を傾けているだけだったり、本を読んでいたり。

 会話に積極的に参加しようとはしていなかった。

 そして、帰り方向が一緒の僕は、みなみと帰ることが多くなっていた。


 なんとなく、気になる。

 それは友達としてなのか、異性としてなのかは、わからなからない。

 悪い方の気持ちでないのは確かだった。


 そして、大学が長期休みに入ると、なぜか一緒に遊んだりすることが増えた。

 最初は警戒されていたのか、断られていたが、少しずつ誘いに乗ってくれるようになって。

 みなみも、こちらから話せば返してくれるし、沈黙も苦痛ではない。

 お互い口には出していないが、なんとなく付き合い始め、のような形になっていた。

 別れ間際に、キスを交わすぐらいには。


 そして、ある休みの日。

 今日もみなみと会う約束を取り付けて、待ち合わせ場所に向かっていた。

 今日は、キチンと自分の気持ちを伝えよう、と思っていた。

 なあなあでキスまでしてししまったが、しっかりと形にした方がいいような気がしたのだ。


「あれ~?どうしたの?今日はおめかししてんじゃん!」

 その道すがら、はるかにあった。

「あぁ、これからみなみに会いに行くんだ」

「みなみ?彼女の名前?でも、うちの大学にみなみなんて子いたっけ?」


「え?同じオカ研のメンバーだろ?

たしかに彼女は影は薄いけど、冗談にしては…」

 タチが悪い。

 そう怒ろうとしたが、はるかの表情は、真面目そのものだった。

「あの最初に集まった、ファミレスの時からいて、一緒に帰って…!」


 俺は慌てていた。

 はるかはただ、ふざけているだけなのだと。

 しかし。

「何言ってるの?最初から、部長と私とこうすけと君だけだったじゃない」

「まって、だってそのあとの部室にだっていたし、彼女も、みなみも本読んだりして…」

 そこまで言って、思い出した。

 いや、正確には思い出せない。

 彼女はいつも同じ本を読んでいて、その本、本当に好きなんだな、と思っていたのに、タイトルが思い出せない。


「ちょっと、君、大丈夫?もしかして変な女に引っかかった?」

 不穏な気配を察知して、はるかがおどけて見せる。

 しかし、僕はそれ所では無かった。

 はるかに一言謝ると、大学の部室に向かう。

 頭が割れるようにいたい。

 そして、僕は部室で、彼女が見ていた本を手に取る。


 それは日記だった。

 壮絶で陰惨な、イジメの日記。

 この日記の後半は、遺書のように、死にたい、憎い、苦しい、と言った言葉がならんでいた。

 そして、最後のページ。

 そこだけ張り付いて剥がすのに苦労した。

 破かないように剥がすと、全面が赤黒い色で塗られ   

 一面にこう、書かれていた。

 憎い、殺してやる。

 憎い、殺してやる。

 ニクイ、コロシテヤル。

 にくい、ころしてやる。

 ころしてやる、ころしてやるころしてやるころしてやるころしてやるころしてやる、コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル


ーミンナシネバイイー


 そこからぼくはどう辿ったのか、一軒のアパートにいた。

 見覚えはない。頭がいたい。吐き気がする。

 今すぐ倒れたい。

 しかし体は、意に反してそのアパートに入っていく。

 そして角の一室。

 鍵は空いていた。

 ドアノブを捻り、中に入る、

 ぎっ、ぎっ、ぎっ、ぎっ。

 なにかの軋む音。

 猛烈な悪臭。

 僕は取り憑かれたように、扉に手をかける。

 理性と本能は警鐘を鳴らしていた。

 逃げろ、と。

 しかし、乗っ取られたように体が勝手に動く。

 この扉の先に待っているのは。

 本物の怪異だ。


 扉の向こうでは、首を吊った死体があった。

 腐敗が進み、誰かも判別できない状態だったが、俺にはそれがみなみだと言うことがすぐにわかった。

 胃の中の物が逆流してくる。

 吐いて吐いて、もう胃液しか出なくなったところで、僕は警察に連絡をした。


 遺書も見つかっており、彼女は自殺と断定された。

 虫歯の治療痕から、僕と同じ大学に通っていた高津美波という女性であることがわかり、大学側でも大騒ぎになった。


 こうして一連の騒動は幕を下ろした。

「しかし、我々には見ることも感じることもできなかったとは…」

 部長たちもいる中での怪異。

 メンバーみな、そのみなみを見ることができなかったことを悔やんでいた。


 しかし、結果的には、彼女を見つけ出し、供養することが出来たのだ。

 これでよかったのだろう。

 彼女は、僕に死体を見つけてほしくて現れたかもしれない。


 祖父曰く。

 霊なんてのは孤独なもんよ。

 だからこそ、暖かくて、楽しくて、居心地のいい場所を探している奴もいる。

 そいつらに行き逢ったなら、必ず供養してやれ。

 ただし、それは寂しい霊だけだ。

 間違っても怨霊に情けはかけるなよ。



 そして夜。頭痛薬を飲み、僕は一仕事終えた気持ちで、布団に入った。

 その時、みなみの笑顔が見えた気がした。

 もし、もし生きていたら実際に付き合こともあったかもしれない。

 そう思いながら目を閉じた。


 瞬間。

 背後から、とてつもない力で首を絞められた。

 もがくがあまりに力が強すぎて引き剥がすことができない。


「ニクイ、コロシテヤル。ニクイコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルッ!」

 彼女は成仏などできていなかったのだ。

 そうして僕は意識を手放した。

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