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勇者の隣に住んでいただけの村人の話。  作者: カモミール


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12話.村びとの戦い

改めて、救援に駆けつけてくれたザックの方を見る。


全身傷だらけ。

切り傷、火傷、あざが体中に見られ、左腕にいたっては欠損していた。


その傷跡がどれほど、魔王ゼクロスとの戦いが激しいものだったかを物語っていた。


「おい!状況は!?」


ザックが叫ぶように言う。


この状況を見たら、誰もが失敗だと思うだろうに、その聞きかたに違和感を感じる。

多少は信頼されたってことなのだろうか。


「ソフィに会ってきた!説得は終わったし後は待つだけなんだ。少しでも時間が欲しい!」


「そうかよ。じゃあさっさといけ!」


それだけ言うと、ザックは臨戦態勢を取った。


むくりと魔王ゼクロスは立ち上がる。

そして殴られた頬をぬぐった。


「生きていたとはな。とどめは刺したつもりだったが」

「そんなやわで勇者の相方がやれるかよぉ」


再び、両者がぶつかり合おうとする。


俺は、その隙に逃げようとした。


その時、ゼクロスの頭部が爆発する!


思わず振り返った。


「ザック、お前だけに、重荷を背負わせるわけにはいかん」


ゼクロスの背後にいたのは、ミカエラだった。


彼女もまた、ザック同様に満身創痍だった。ザックとの違いは、彼のように欠損部位がなかったことくらいか。


「ちっ!しつこいやつらだな」


ゼクロスは、体勢を整えて舌打ちする。


俺は、すぐにソフィを連れて逃げようとする。


その行動を魔王は見落とさなかった。

ゼクロスは、ザックとミカエラの2人を無視してこちらに突進してきたのだ。


「お前らの希望、奪えばどうなるかな」


小さく、しかし凶悪な笑みを浮かべたゼクロスがこちらに迫ってきているのを見て、俺は一瞬身震いした。


「行かせるかよ」


ザックが俺とゼクロスの間に挟まる。


だが、ザックが受け止められたのは一撃だけだった。



ゼクロスは、受け止められた腕を強引に動かしてザックの服を掴み、動きを止めた上で、

もう片方の手で、ザックの体を貫いた。


「がっ!!」


ザックは吐血し、地面に倒れ込む。


「ザック!!」


ミカエラが叫ぶ。

そして、杖を構え、16本の光の矢を放った。


それらは、すさまじい速度でゼクロスを貫こうとする。


だが、魔王が動揺することはない。


身を少しかがめ、防御魔法と思われるガードを展開する。


それらは、光の矢を全て相殺した。


大きな爆発が起こり、ゼクロスの周りには、半壊した防御魔法の跡が残ってた。


「く」


ミカエラは、魔法が通じなかったことに悔しそうな顔をした。



「お前たちは、なかなかやるものだな。だが」


魔王は手を空にかざす。


そして、詠唱と共に魔法を発動した。

大麒麟!


瞬間、怪物の形を模した雷が、広範囲に降り注いだ。


「うわわわわっ!!」


俺は必死にソフィを担いで逃げる。


片目に、ミカエラがその雷撃を必死に魔法で防いでいる。


とんでもないレベルの戦いだ。

災害かよ。


範囲外ギリギリにいたため、なんとか辛うじて当たることはなかった。



ゼクロスはミカエラに追撃の雷魔法を放った。


「くっ」


ミカエラはその魔法を受け切れずに、後方に吹き飛ばされ、木にぶつかる。


ゼクロスは、そのまま振り返ると、こちらに迫ってくる。


その距離は精々10メートルといったところだろうか。


ゼクロスが、腕を構える。勘だが、なんとなく次に起こることがわかった。



あいつは、俺の体ごとソフィを貫く気だ。


「ソフィ!ごめん」


おれは、抱きかかえていたソフィを放り投げる。



ゼクロスは、一瞬でこちらに追いつき、抜き手でこちらを貫いた。

ように思えた。


だが、その腕は俺の背中を貫通しなかった。


背中の肉はえぐり取られ、俺は絶叫を上げる。

だけど、それでも助かった。


後ろをみると、ザックがゼクロスの足を掴み、その動きを一瞬だが止めていたのだ。


魔王が煩わしそうにその腕を蹴りで払いのけ、ザックの頭を踏みつける。



「ガッ」


「しつこい奴だ。そんなに勇者が大事か?それとも、そこに転がっている砂利か?」


砂利というのは、俺のことだろう。


ザックは魔王を下から睨みつけ、言う。

「けっ、その砂利を3回も殺しそこねるたぁな。魔王サマの尊厳は地に落ちたんじゃねぇか?」


その言葉に怪訝な顔をするゼクロスにザックは言う。

「おまけにそれがてめぇの敗因になるんだ。ざまぁねぇぜ」


「貴様」

その言葉を聞き、ゼクロスは澄ました顔を一瞬だけ引きつらせる。



「頼むソフィ!!立ち上がってくれ!」

そんなやり取りをしり目に俺は叫んだ。


「俺は、魔王を倒せるのはお前しかいないと・・・いや、お前に倒してほしいんだ。おれとずっと魔王を倒す事を、勇者になることを目指して来たお前と、だから」


俺の声に効果があったのか、見間違いか、ソフィの胸のあたりが少し光ったような気がした。

ソフィがメタトロンさまの加護と言って見せてくれたものと似た光が。


「なるほどな。この中にお前みたいな砂利がまじっているのはそういうわけか」

その時俺の言葉を遮ったのは、ゼクロスだった。

背後に立たれたことを察知し納得がいったという顔でうなずいている。


「とういうことはだ。お前が死ねば、ソフィは一生目覚めない眠り姫となり無意味にすがりつづけられる偽りの光になるわけだ。クク、それもまた一興かもしれんな」


ゼクロスは手に雷をまとい、俺に振り落としてくる。


ああ、ここまでだな。

俺は目を閉じる。


走馬灯というやつだろうか。昔の記憶が蘇ってくる。


それは、子供のころの記憶。

怪物が、子供を追い詰める怖い絵本を読んでいたころの記憶だ。


俺は、その本を読んでいる途中で、ワンワンと泣き喚いた。


なんとなく、怖ろしくなったのだ。いつか、この絵本のように怪物が俺の目の前に現れて、怖い目にあわされるのではないかと。



母が、何事かと俺のもとに来て抱きしめてくれる。


そして、事情を察していう。

「大丈夫よ。そんな怖い怪物さんもね、やっつけてくれる英雄が現れるからね。それでハッピーエンドの素敵な物語になるの」


そして、母は物語の続きを読み聞かせてくれた。


母の言う通り、その物語では怪物をやっつける勇者が現れてハッピーエンドの締めくくりで終わった。


でも、俺は考えてしまった。もしこの物語で英雄が現れなかったらどうなったんだろう。


そして、同時に思ったのが、実際に存在する魔王のことだ。


もしこの物語の怪物のように魔王が現れてすべてを破壊していったとき、一体だれが助けてくれるんだろう?


それは、この世界に存在する英雄?


そんな人がいなかったら?


そう考えるて、再び恐ろしさが蘇ってきた。


その考えを母に伝えると、母は微笑んでいった。


「大丈夫よ。怖いなにかがきてもママたちが守ってあげるから」


その言葉は、ただ単に泣く子供をあやすためのものだったんだろう。

だけど、その言葉にあたたかい安心感を覚えた。


そして、同時に誓った。自分もこの人たちを守れる何かになろうと。





魔王の攻撃は、一直線でこちらの頭に迫ってきている。


ゆっくりと目を閉じる。

俺は、誰かを守れる存在になれただろうか。

答えは分かっていた。


当然なれてない。


だけど、あの魔王から勇者を数分だけは守れたんだ。


俺はソフィを信じている。例え俺が殺されたとしても、ソフィは魔王に殺される前に目を覚ます。

そして、魔王を倒してくれる。

だから、俺の稼いだ数分が少しでも役に立ったなら、もうそれで思い残すことはない。



そして。


目を閉じた瞼の裏から眩しさを感じた。


思わず目を開ける。


それは、目の前でゼクロスがまとった手のひらの雷から発せられた光だった。


その手は、俺の目の前で止まっている。


そして、その攻撃を止めてくれたのは当然。


たなびきながら輝く長い銀髪。

とても小さな、だけど安心感のある背中。


だけど、昔と違うことだってある。

その後ろ姿はとても頼もしかった。


希望を託したくなるような、安心感があった。


腕を掴まれ、攻撃を止められたゼクロスは、距離を取る。


その小さな少女はゆっくりと振り向き、微笑んだ。


「おはよう。レオ、3年ぶり、だね」

「寝坊しすぎだよ。ソフィ」


身体の力が抜けて、へなへなと倒れ尻もちをついた。



その少女、勇者ソフィはついに復活を果たしたのだった。



読んでくださりありがとうございます。


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