【第八章】
【第八章】
様々な憶測・不安を抱えながらも、戦勝祈願の一同は、なすべき事を黙々と続けた。ある者は早朝から。ある者は深夜まで。
『みんなの為に、自分にできることを。』この思いを皆が持つ。戦勝祈願の組織としての強さの根幹は、この相互扶助の気持ちである。
体力の限界で動くので、時に失敗もする。商人が城を訪れた時、品定めをして必要なものを購入し、更に新しい商品を求める時、帰りの路銀と新たな商人の招聘に50金使うことがあるのだが、疲れからか、買う前に50金を払って商人を入れ替えてしまう者も。中には人探しをする部下への命令を誤り、良将を求めるつもりが金のかかる名将を求めたり、屯田に向かわせたつもりが司令書を間違えて掃討させて予定外の兵損を出したりと。それでもこれらが笑い話となるぐらい、全体的な戦略は順調に進んでいた。
河朔州と関内州をつなぐ谷遠関も無事に落とし、河洛州・魏郡への侵入拠点となる埠頭への足場の継続作業も予想以上の速度で進み、完遂した。その仕上げの功労者は、羅院晴翔であった。
「羅院晴翔 殿が早暁からずっと頑張っておられたようです。」
「おお。なんとも献身的な!」
「見よ!埠頭の攻略までしてくださっているぞ。」
「こういう静かなる功労者に大きく支えられておるなぁ。」
一人一人が、自分にできる事を、真摯に取り組む。同盟・戦勝祈願の力量は確実に上がっていた。
「そろそろ、国を興しますか。皆の意欲も高めますし。」
「そうだな。どこを首都と定めるか。」
「因縁の城がありますな。あそこを今度こそ落としましょう。そして首都に。」
「寿張か。」
「はい。郡都・州都ではありませぬが、名を見てわかるように、吉兆の地です。」
「今後の我らの活動拠点、河朔・魏郡につなぐ元城にも近いし、良いのではないか。」
「よし、そうしよう。」
「では今宵。伝令を出します!」
それぞれが自強を進めつつ、夜の攻城に備える。前向きに、ひたむきに。その力強さは全土に知れ渡り、強豪三傑に数えられる同盟になっていた。
【章末】