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義戦之武  作者: 昇龍翁
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【第三十二章】

【第三十二章】

『計略は、かけたり、かけられたり』


 戦勝祈願が支配下に置いていた関内州と河朔州をつなぐ谷遠の関に、怜打須が迫っていた。

「すこし、援軍が欲しいかな。」

 惹州公からの報を聞きつけた昇は、自軍内で1番足の速い一軍を率いて駆けつけ、一暴れして時を稼ぐ。逆にそれで敵に戦地であることを気づかせてしまった感はあるが、この動きを受けて戦勝祈願の諸将も駆けつけた。したたか武功を挙げた昇であったが、兵の限界から、諸将に後を託し、部隊を引き上げた。

 一方、夜襲で捕虜にした孟津地区の滑樽増の城へ、秘策・抜城砕堅を発動し、合わせて、その先の織駄城への一斉攻撃を計画した。

 だが、こちらの攻城時間を見越したように、その2時間前に織駄城は堅牢閉城に入った。当初の攻撃時間での行動が不可能となり、諸将は待機状態となってそれぞれの幕舎で竈門に火を入れ、喫食を始めた。

 ところが

「敵襲!敵襲!滑樽増城に敵の大軍団襲来!」

「なんと、今度はこちらが隙をつかれたか。」

「本来であれば、この時刻にこちらが攻撃を仕掛けていたのに。」

「敵もやりますな。こちらが油断し切る時間を見越して織駄城を閉じるとは。」

 こちらが計画していた時間に秘策をかけた滑樽増への一斉攻撃が行われた。完全に隙をつかれてしまったのだ。防戦虚しく、滑樽増城は奪還され秘策は失敗に終わった。

 ある老将などは、前日の睡眠不足を解消しようと、そのわずか前に床につき、深夜の攻撃に備えていたのだが、目覚めた時には状況が一変していた。飛ばすはずの城が奪い返されていたのだ。

「なんとも敵も考えるものだ。だが、こちらが押している事に変わりはない。局地戦の一敗で、意気消沈する必要もなし!」

 谷遠は、駆けつけた諸将によって完全に制圧していた。

「心機一転、ここからじゃ。」

「そうですな。多少、前線が動いただけ。」

「滑樽増の城は、位置的には、百家の皆様との合同攻撃には最適の場所。」

「おうさ。取られたものは取り返す。」

「そして、また押す。」

「楽しいの。これが戦じゃ。」


 計略はかける者も防ぐ者も、知略を尽くす。破られるのも想定内。やるべき事に変わりなし。ただ、仲間との連携を信じ、自分に出来る事を精一杯するのみ。


【章末】


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