24.嘘つき、泣き虫王子様、木馬に乗り損なう
熱い湯が、迫神の体をなぞって落ちている。汚れが疲れも道連れにして、排水口へと吸い込まれていく。金城の声が耳の奥で、今ひびいているかのようだった。
――迫神君。攻撃されてシンクロイド・ボディが壊れたとき、どうなるか知ってる?
そんなん、山に行ったとき、初めてライドしたときに、啓介が念押しするかのように何回も聞いていた。落ちるに……、自分に強制送還に決まってる。このシステム自体のもともとが、出来すぎた仮想現実に過ぎないのだ。自分は幻想を見ているだけなのだ。体感もあるし、実体験と錯覚するけれど、事実ではない。
――とりあえず、あいあいが衰弱死するまで、シンクロライドしている必要性は薄いと判断できると思う。あいあいが強制ライドオフするには、何が必要だと思う?
ボディか、システム本体が壊れれば……。
壊れれば?
――そうそう、それ。で、提案なんだけど、あいあいのボディ、そっちで壊してくれない? 箱より、ボディのほうが、壊すの楽だし、本体費用も安いから。
壊す? 誰が?
――あいあい、人権順位第二位までの人間しか、あんたを落とせないんだけど、迫神君と、保志総司官、どっちに殺されたい?
殺す……!? 何で……
――えっ、あ、そうか。
な、なんだ。このそこに気づかなかったのは馬鹿だとでも言いたげな、嬉しそうな顔つきは。
――あいあい、あんた、今の状態でも、何とか、ライドオフしてから、水分と栄養分補給行動とれそう?
――アイサー。もちろん。重力下で人間がいるところに出さえすれば、水洗トイレくらいあるでしょ。
もちろん、なのか? こんなに衰弱してるのに? しかも、トイレって、トイレの水、飲む気か、あいあいは?
――うーん、外部からしかロック解除できない、倉庫とかの可能性もあるけど、少なくとも、こっちだから、そっちで何もできないより、あんた、マシでしょ?
――何で私たち、それに気づかなかったんでしょうね。そりゃ、落ちるのはしんどいけど、バカみたいに弱って死ぬの待つ必要、全然ないじゃないですか。どーしてもっと早く、それに気づかなかったかなぁ、私。
――だね。だから、さっさと、こっち帰っておいで。今、SITがフル稼働して、防犯カメラネットで、映像分析してる。なるたけ早く迎えにいけるよう、頑張るから、あいあいもしっかり足掻きな!
――了解です。
通信を介しての、金城と亜衣里の会話は、1年ちょっとの訓練しかしたことがない、アバタドライブモードで海賊野郎の宇宙船を蹴り飛ばした事があるだけの、至って物静かなホワイトカラーワーカー・迫神の理解を超えていた。
そして、亜衣里は、迫神にしっかと正対したのだった。
――迫神さん、デビュー戦やっつけついでに、この辺で、一度殺すほうも体験しといたほうがいいと思う。判事様の経験値アップになるとは言えないけど、バッパーするなら、どっかで初体験が必要だと思う。もちろん、痛いのが好きってわけじゃないから、できるだけ頭あたりを一発でふっとばしてくれるとありがたいんだけど、ひとつ頼みます。
鬼教官、亜衣里が発動した。こんなときでも、一石二鳥を狙うか? 迫神は、言い回しとしてではなく泣きたくなってきた。
「何で俺なんだ?」
――私が見込んだ男が、嫌な仕事、人に無神経に押しつける卑怯なやつだったら、浮かばれないじゃない。
満面の笑みと、亜衣里が見込んだ男というフレーズに陶酔しかけて、そんな場合ではないと立て直した。
――これでも一応甘えてるつもり。
……甘えてるのか? それで?
武器関係も含めて装備品のあるスペースに向かって、数歩、低重力になっているからだけでなく、少しふらつきながら移動したとき、悲鳴のようなセレの声が壁から聞こえた。
――何考えてるの? ボディ壊したら、しばらくあいあいは来られない。ジョリー・ロジャーが出てきたとき、半六ちゃんだけじゃ、まだまだ心もとないよ。三分の一が欠けるって、そんなんだめだよ。
三分の一は、三つ合わさんないと、一つにだってなれないよ。
スピーカーから、金城の声が聞こえた。
――あと一つ、SELEN4444は…
後半が聞こえて来なかったのは、部屋を出たからではないと思う。多分、切られた……、セレに。
――だめだよ、半六ちゃん、だめ……。
壁面のホルダーから、アバタドライバーの子機をふっとばすのに使う、破壊力半端ないブツを、いつものようにホールド解除ボタンを押して手にとろうとして……とれなかった。
「何でだ」
――こんなところで、そんなもん使うなんて、正常じゃないよ。もし壁に穴でもあいちゃったら、ろくちゃんは生身なんだから、死んじゃうよ。いい? 宇宙空間にある建造物っていうのは、外からの衝撃に比較して、中からの衝撃への耐性は低いんだ。
生存権順位第一位はろくちゃんだよ。ここにいないあいあいの、そんな論理的根拠がない生存率上昇へのアクションなんか、許可できるわけないじゃない。オイラは、ろくちゃんを守るためだけにいるんだ。
――う~ん、痛くないのがよかったんだけど…。迫神さん……、
痛くないのが、よかったけど。痛くてもいいから、さっさと殺せ、という指令で、多分、解釈に間違いがないだろう。だから、だから…。
――GO
半分以上、無意識の条件反射だった。コマンダーあいあいの指令に、体が即座に反応する方向で、ここのところずっとやってきていた。だから、掛け声に体が反応したのだとは思う。けれど、どうしてそこまで思いきれたのか、いくら考えても分からない。心当たりと言えば、「痛くないのがいい」という部分を、本能のどこかが――考えた覚えはないので――聞き取って額面通りに受け取ったからだろう。迫神は生き物に対して、精神制御装置を外した蹴りを出したことは、空手を始めてこの方一度もない。彼にとって空手はスポーツだった。よしんば武道だったとしても、精神修行の面でしか機能し得ないくらい「体を動かす」ことに特化した稽古事だった。
自らの破壊力が増していくのが実感されればされるほど、むしろ人に対して怒ること自体を避ける方向性で凌いできた。生まれてはじめて、安全装置を外した一撃が向かう先が、なぜ、仮初めのものとはいえ、生まれて初めて、その体を慈しんだ亜衣里の頸動脈だったのだろうか。しかも、知った直後と言っていいほどのタイミングで。なぜ、あんな一撃が繰り出せたのか……。
足元が安定しない低重力。十分な破壊力が出たのか、そうでなかったのかも分からない。あの一撃が届いたのか、そうでなかったのかも分からない。
ただ、動いた。そして、その直後、棺桶の中にいた。
そのことに気づいたとたん、迫神は目から何か熱いものが溢れ出すのがとめられなかった。充満しているオスの臭いが、自分が何をした後なのか、そして、今、何をしてきたのかを思い知らせるかのように、狭い空間に閉じ込められた空気に満ちていた。鼻につく悪臭。そして自分がしようとしたことの結果を想像しようとしたとたん、襲ってきた悪寒にぶるんと震えた。中途半端にあたっていたら、亜衣里は地獄の苦しみを味わっているに違いない。そして、当たっていなかったら、亜衣里の危険は、あそこにいることで強くなってしまったに違いない。
セレは……味方なのか、敵なのか……。この強制排除は、保志の生存と亜衣里のボディの維持を最優先した当然の選択なのか。それとも、単に、状況を膠着状態から抜けさせようとする一手を封じた、何者かの指令であって、セレはその端末に過ぎないのか、考えても、考えても分からない。
当たっていたら……人殺しだ。偽物の体に、偽物の攻撃をしただけだと、割り切れるものなら、八つ裂きにされてヘトヘトになっていた保志総司官の苦しみも偽物だと決めつけられる。けれど……。吐きそうだった。猛烈に酸っぱい何かが胃袋から食道を駆け上ってきた。
こらえることができなかった。そして、涙も止まらなかった。狭い箱の中で、迫神はえずきながら、悶えながら、嗚咽を漏らすことしかでなかった。
棺桶の蓋が跳ね上げられた。蓋を開けた人物を見たくなかった。うずくまったまま、消えてしまいたかった。そんな芸当はできっこないことも、当然知ってはいたけれど。迫神は、その人の視線をそうすれば避けられるとでも無理やり信じるかのように縮こまった。多分、怪訝な目つきでしばらくじろじろと自分を見ているだろう視線を背中に感じた。美耶子先生か、穣太さんか、どちらかしかないが、こんな醜態を晒す相手としては、最悪なことは確かだった。
しばらくして、ため息が一つ聞こえた。首でも振っているような微妙な間があいて、それから母親めいた口調であっさり言われた。
「迫神君、シャワー使いなさい。一人で歩けるね?」
美耶子先生だった。羞恥心までやってきて、迫神の思考力のぐちゃぐちゃは、激しさを増した。保志夫妻の営みを辿らさせられた。その罪悪感と、興奮と、そして今の自分の喪失感と。何もかもが一度にやってきた。自分の思いを表してくれる言葉を、迫神は強烈に希求した。
勘弁してくれ……。
その一言が脳内に駆け巡って、迫神はほっとした。たまらない、勘弁してほしい、助けてほしい。このままうずくまって少しの間、どろどろの自分に溺れていたかった。けれど、誰も今の自分を助けられないことは分かっていた。頼りない迷子のように泣いている自分が、疎ましかった。迫神は目を一層きつく閉じて頷いた。
* * *
――ちょっと脱衣所入るわよ~
シャワーのこもった水音に混じって、美耶子先生の声が響いた。家族仕様の風呂場は、台所かリビングかしらないけれど、どこかと通話できるらしい。
「はい」
素直に迫神は返事をした。
――保志のは少し小さそうだから、穣太の服にしといたわ。置いとくわね。あの子、結構神経質だから、誰かに貸したのなんか着ないと思うから、そのまま返さなくていいからね。趣味じゃなかったら、処分しちゃっても構わないし。
「ありがとうございます」
服は素直にありがたかった。
――あと、汚れ物は洗濯機突っ込んどいたから、落ち着いてから、暇なとき回収に来て頂戴。なんにも、片付いてないんでしょ……。
汚れ物という現実を突きつけられた。一瞬の羞恥の気持ち。同時に、泣いている場合ではなかった――行動を始めなければ、というやる気。二つが一気に蘇ってきて、シャワーの湯に供給されてやまなかった涙が急停止した。そう時間は、もう、多分、ほとんど、ない。
セレに強制排除された以上、二度とライドは無理だろう。システムのキモはセレが握っている。自分は、取り除かれたのだ、あそこから。まるで、体に巣食った癌細胞を手術で切り取るように、剥がされて、捨てられた。
なんにも、片付いてない、という美耶子の言葉は、本当にその通りだった。
こうなっては、こっちで、生身の亜衣里を探すしかない。とにかく、生きてる彼女がこっちにいることだけは確かなのだから。
それでも、警察が自分を捜査に絡ませるわけがないとは思う。素人はすっこんでいろ、そう言われるに決まっている。けれど、何もしないという選択肢は取りようがない。亜衣里がいるのがこっちで、しかもこっちは、自分たちの縄張りだ。オマルとTAIの監視から、多分、少し外れる。自分にできることがあるとしたら、警察ルートとは別に亜衣里を探すこと……くらいだ。
脱衣所に、人が入ってくる。スモークガラスの扉越しに、美耶子のシルエットが動いている。
「美耶子先生、お出かけじゃなかったんですか……」
自分でもびっくりするくらい、普通の声が出た。泣きはらしたあとの嗄声でもなく、おどおどと怯えた掠れ声でもなかった。
薄い扉一枚挟んで、人が止まる気配がした。迫神は水を止めて話しかけた。
「ああ、穣太が、シンクロイド・システムの動きがおかしいみたいだから、メンテナンス業者呼んだほうがいいって言うから。朝一の外せなかった仕事だけ、ひとつやっつけて帰ってきたってわけ。穣太が言う私のツバメ君とやらが誰かも、保志を殴りに行くみたいだって言われても、最初はさっぱり訳分からなかったんだけど、前に新橋でさ、あの子が迫神君のことツバメ呼ばわりしてたことあったじゃない。それで……気になって」
穣太さんは、本当は自分はよく知らない人で、保志と美耶子の息子さんだが、玄関を開けてくれたときも、その話し方も、まるでセレだから、どうにも知らない人と思えなかった。「セレ、急いで頼む」と、気安く話しかけそうになった。
そのセレだ。
自分を強制排除したのは、彼(?)で間違いない。TAIが自分を邪魔者だと判断をした。
――何にとって?
ジョリー・ロジャーのメッセージ――亜衣里の部屋の、バスルームの鏡にルージュで記された、あの文言を思い出そうとした。ジョリー・ロジャーは、何と言っていたのだったろうか。人間の記憶とは、かくも曖昧なものなのだ。ルージュのスマイルマークのようなにこにこ顔が乗ったバッテン、金城がネーミングしたスマイリー・ロジャーのピンクの笑顔しか、思い出せない。
保志総司官の指令がそれは最優先でプログラムされているにせよ、順当に行ったらその次の指令権は人である自分やあいあいにある。奴には、俺を排除できる権利は本来ないはずだ。
それに、保志の安全のために自分の強制排除が必要と判断したら、自分が武器庫にたどり着く前に、俺を切り捨てることもできたはずだ。あのタイミングで、なぜ落とした。あのタイミングで、何者かがセレにそうさせることができたのだったら、なぜ、あそこまで時間がかかったのか。
指令が、どっかから入った? 上位の権限者からの指令であれば、セレは、人形に過ぎないシンクロライダーを排除できるだろう。セレが仕えているのは、保志総司官なのか、それとも、オマルのホストにコマンドを入れられる、誰かが存在するのたろうか。
それとも、セレの意志――そんなものがあったとして――を操る形で操作できる、誰かがいるのか……。セレの意志なんてもんは端っから存在しない、あくまでもオマルホストの端末にすぎないのか……。分からない、何もかも。
セレは味方なのか、敵なのか……。
「……守秘義務ってのもあるだろうから」
迫神の沈黙にしばらく付き合っていた美耶子だったが、しびれを切らして切り出した。
「言えないなら言わなくてもいいけど、何が起こってるの? 迫神君、あなた……、入院中らしいじゃない。あなたの住処が……。えーと、『東京。未確認巨像作業ロボット、公務員官舎を破壊。テロの可能性』って、何の冗談?『一番、大きく破壊された部分に住む東京地方裁判所所属の裁判官、迫神平和さん(三十三歳)は緊急搬送先されたが、意識不明の重体』、半日前に重体になってる割には、かなり元気そうだけど……」
「ジョリー・ロジャーって……、保志総司官から聞いてますか?」
迫神が言った。
「もちろん。それがあったから、あの人、三分の一にお給料減らされる屈辱に耐えて、バッパー続けたんだから。積み残し課題を提出するまで、辞められないって。私は、いい加減に保志に帰ってきてもらいたい。だから、ゴネたわよ、盛大に」
美耶子が小さく笑い声をたてた。
三分の一制度は、前任者にとっては屈辱なのか……。迫神は、そんな視点で考えたことがなかったので、一瞬、怯んだ。たまたま相方が美耶子先生だから、生活にはきっちり響かないから、そんな凶悪な減給にも耐えられるんだろうな、くらいにしか思ったことはなかった。
美耶子先生にとっても、ジョリー・ロジャーは敵なのだ。
「それ絡みで、ちょっと大きく事件が動いてます。細かく、説明するのは、今は無理ですけど。あ、守秘義務云々からじゃなくて、私には、状況がきちんと掴みきれていませんので」
少しの間があって、美耶子が今度はくっきりと笑った。
「迫神君、あなた随分タフね。立ち直るのが速いこと。私には、掴みきれていませんと、きたもんだ」
多分、子供なら、さっきまで泣いてたくせに、と続くんだろう。けれど、大人の思いやりで、後半を飲み込んでくれた美耶子の優しさが身にしみた。迫神もつられて少し笑った。笑ったとたん、なぜかもう一度涙が溢れてきた。あいあいへのくっきりと自覚できる愛しさとともに。
失いたくない。めそめそ泣いている時間などないのだ。その瞬間の涙を、もう一度洗い流すために、迫神は、もう一度シャワーからの湯を浴びるべくスイッチを入れた。熱い雨が、顔に心地よかった。
* * *
脱衣所がきちんとある浴室のドアから廊下に出ると、驚いたことにそこに美耶子が立っていた。
「……美耶子……先生?」
「保志のサポート、こっちでもできる……状態だから戻ってきたんでしょうね」
気の強そうな言葉と振る舞いを裏切って、声は小さく震えていた。今の彼女は、夫を心配する普通の、一人の女性だった。シンクロライドシステムによって、迫神が排除されたのなら、夫は危険なのかもしれないという、恐ろしい可能性を排除したくて、その言葉を求めて待っていたのだろう。泣きはらした、自覚的には腫れぼったい目を気にして、支度を終えたにも関わらず、部屋を出るのにもたもたしていた自分を、急かすこともなく、廊下でただ。反射的に迫神は、耳に心地よい言葉を――苦い嘘を――舌に乗せていた。
「もちろん。まだ、負けてません。木馬に乗り損なっただけですから」
あいあいが生きてる限り、彼女からキャスティングされた王子様役を降りるつもりはない。あいあいを助けられなかったら、それこそ一生降りるつもりはない。後悔して、後悔して、後悔して、亜衣里を思い出してずっと泣くのだ。多分、自分は。
この場で、泣きながらしゃがみ込みたいほど、何のアイデアもなく、走っていく方向すら見えないのに。何で、自分はこんなにきっぱりと、力強く嘘を言えるんだろうか。迫神は己の舌を切り落としたいくらいに呪った。
美耶子が小さくため息をついた。信じたのか、嘘と分かった上で、その嘘に乗るしかないと、心定めたのか……。
美耶子が迫神への距離をいきなり詰めた。そして指が、迫神の額に向かって伸びる。
「あ、あの」
びっくりして、動けないでいる迫神の整えたばかりの前髪を、その指がかき乱した。
「穣太のその服で、きっちり七三分けは、いただけないわ。ダサすぎ。第一、そんな着方したら穣太に殺されるわよ」
用意してもらっていた服は、襟ぐりが大きく開いている白いランニングシャツタイプの下着と、ざっくりと大きい仕立ての、これまた大きいチェックが入ったコットンのドレスシャツだった。穣太のものにしては、大きすぎるような気もするとは思いつつ、迫神はそう解釈して普通に着込んだつもりだった。もちろんシャツのボタンだってきっちりとめず、上の二つは外して、十分普段着モードになっていた。なのに、美耶子の指がボタンを外していく。しかも全部。
「あの、それだと、下着、丸見えですけど…」
「下着じゃなくて、シャツなの、それは。で、こっちは、羽織りもの扱い。ほら、随分、若者っぽくなったじゃない」
美耶子が迫神を見る目つきは、どうにも母親モードだった。母という人種に逆らう習慣がそもそもない迫神は、黙ってその「お直し」を受け入れた。




