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青の魔女  作者: ズウィンズウィン
第二章 アルフヘイム編(下)
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 私は師匠との約束通り、ツヴェルフさんと共に聖堂へと訪れていた。

 アイリスに呼んでもらい、私達は待たせてもらう。


「アイリーンお姉ちゃん、準備してから来るって」

「そう、ありがとう」


 アイリスはそう告げるとまた戻って行った。


 新興のアストリア王国は諸外国に特に注視されている。

 アルフヘイムとの戦いは負ければ弱小国と見做され、近隣諸国から侵攻の対象とされかねない。

 最悪負けたとしても善戦したという事実があればその限りではないだろうが、出来る限りのことはやっておきたい。


「強くならないと……」

「? ソニアは強いよ」

「ツヴェルフさんがそう言ってくれるのは嬉しいけど、この前負けそうになったのです。いえ、負けた。死にそうになった」

「? 詳しく話す?」


 ツヴェルフさんが心配してくれている。なので私はツヴェルフさんに巨大蜘蛛の一件を話した。

 私が、話を終えるとそこに声がかかる。


「ソニアは基本、後衛ですからね。そのために私が剣技を教えているはずなのですが……もっと厳しくするべきだったのでしょうか?」

「あ、師匠! いえ、師匠のおかげで生き延びましたよ」

「それはなにより。それで解決策は見つかったのですか? 案なら幾つか思いつくと思いますが?」


 原因は一目瞭然だ。私が孤立したところを多勢で攻められたせいだ。

 本来ならばそのためにお婆ちゃんが教えてくれた拘束魔法のはずなのだが、魔力が尽きてしまった。

 アラネアが助けてくれたのは偶然だ。次は無いと思った方が良い。


「参考までに師匠の案を教えてください」

「そうですね。単純に壁を作る。水で流す。他には罠を張るとかでしょうか?」

「……むしろ罠にかかったのは私の方でした」


 思い返してみると良く生きてたな。アラネアには感謝しきれない。

 しかし、そうなると……。

 悩み出した私をツヴェルフさんが心配してじっと見つめてくる。可愛い……


 そう言えば、これまでの戦いでツヴェルフさんは理想的な盾役だった。


「その場にツヴェルフさんが居れば……」

「孤立した場合の対策でしょう? それでは本末転倒ですよ」


 そうだった。やはり手持ちの札をどうにか組み合わせて、勝負するしかないのだろうか……


「むう。小っちゃいツヴェルフさんを持ち運び出来れば……」

「……その発想はどうなのでしょうか。それに小さければ盾役にはならないでしょう?」


 良い案だと思ったのだが……師匠に呆れられただけでした。

 その時、はっと良い案らしきものが浮かぶ。


「逆に大きなツヴェルフさんについて来てもらえば!」


 そう逆転の発想だ! しかし……


「それはただ邪魔なだけでしょう? ツヴェルフから離れなさい。まあ、確かに邪魔するのが盾役ではありますが……それではまるで遺跡で偶に見かけるゴーレムではないですか?」


 その時、私は目を大きく見開いていただろう。


 そうゴーレムだ。ゴーレムというのは魔石核を動力源として動く巨像だ。主に古代遺跡の守護者として過去に作られたものが多い。

 その存在は侵入者を寄せ付けず、魔物ですら近寄らない。遺跡探索の冒険者が最も気を付けなければならない罠の一つだ。


 その技術の流れを汲んだツヴェルフさん達自動人形の原型とでもいうべき存在でもある。

 だからといって所詮過去の遺物だと侮る事はできない。

 話によると最初期に創られたゴーレムは制御装置(リミッター)がついておらず、その暴虐ぶりは伝説と化している。


 何もツヴェルフさんほど精巧な盾役でなくても良いのだ。要は私が魔法を唱えている間に的になってくれれば良い。

 暴論を言ってしまえば、案山子(かかし)でも良い。まあ案山子では多少知能がある魔物などでは厳しいだろうが……


「案山子とゴーレムとライオンでしたか?……そんな話ありましたね」


 私はその流れで、そんな話を思い出していた。


「それはゴーレムではなくてブリキの木こりでしょう? いきなり何の話ですか……」


 そうだっけ? うろ覚えだ。師匠……詳しいですね。


「いえ、動く的のようなものが有れば良いのかなと……」

「それはそうでしょうが……できるのですか?」

「やってみます」


 イメージはできたはず。

 そう土魔法だ。水魔法も少し加える。

 そして粘土を捏ねるようにして……ブリキの木こり? のようなゴーレムだ。


 魔石核は今は持ち合わせていないので代わりに私の魔力が動力源だ。

 そしてそれを魔法で編むように形作る。


 そして……


「……確かに攻撃したくなる泥人形ですね」


 師匠がそんな感想を述べた通り、なんか凄く苛つかせる踊りを踊る泥人形ができた……。


 造形も酷いものだった。案山子の木こりのようなゴーレムらしき造形だ。

 混ざってしまったのか?


 魔力供給をカットして即座に土へと返してあげました。


「何故だ……」

「ま、まあ発想は良かったのかも知れないですね。練習が必要のようです」


 師匠に慰められる。

 これでは的にはなるだろうが、瞬時に破壊されるだろう。壁としては役立たない。

 やはりある程度は耐久性が必要らしい。


「はい。練習しておきます」

「それで……どうしますか? せっかくツヴェルフが来たのですから連携の練習でもしましょうか?」

「はい。お願いします!」


 そうして師匠を相手に二人がかりで戦闘訓練を行った。


「……これでは私が修行をしているみたいですね。さすがに二人相手はきついです」


 しばらくすると、師匠がそう愚痴っていた。

 やはりツヴェルフさんは理想的な盾役だった。そして何よりツヴェルフさんが腕を上げていた。

 散華ちゃんや蓮華姉さん達から華咲流の剣技を習っていることは聞いている。私がアルフヘイムへ行っている間もしっかりと訓練していたのだろう。

 こちらを気遣いながらも動いてくれる。近衛騎士団副長にして正解だったと言わざるをえない。

 

 近衛騎士団といえば今日は藤乃が指揮を執って散華ちゃん達に付いているそうだ。ツヴェルフさんはお休みらしい。


 先の泥人形をツヴェルフさんと同様とはいかなくても、それなりに動かせるようにしたい。

 そのためにしっかりとツヴェルフさんの動きを頭に叩き込む。


「今日はここまでにしましょうか。忙しいでしょうが暇を見つけてまた来なさい」

「はい。ありがとうございました」


 忙しかったせいで久しぶりになってしまったが、やはり師匠との稽古は良い。

 むしろ師匠が良い。


「もちろんツヴェルフさんも良いよ」

「? 意味がわかりませんが」


 ツヴェルフさんは困惑していた。師匠はいつも通りだと言わんばかりに呆れた様子でした。



 そうして私は帰ってからも暇を見つけては泥人形の練習をした。

 したのだが……


「ううむ。イメージと現物の差が大きすぎる……何かが違う。だが、それが何か分からない」


 練習したおかげで合成獣の様な物体から脱して、人型らしきものにはなったが納得はできない。


「やはりその道のプロにアドバイスを聞いてくるべきか……」


 アラネアに聞いてみるか? いや、今は急ぎの仕事を任せている。できれば邪魔はしたくない。

 他にはドヴァンさんくらいか……あの人、何でもできそうだし。まだ王城建設の指揮をとっているだろう。



 そう考えて翌日、私は学園へ向かった。



「アドバイスって言われてもな……イメージできてないなら、モデルでも見て作れってくらいしか……」


 予想通りドヴァンさんは王城建設の指揮をとっていた。王城は着々と完成に近づきつつある。

 邪魔をして悪いとは思うが助言だけでもと、話しかけた。

 ちなみに私が作った泥人形を見せたら……絶句でした。


「なるほど! 他には?」

「骨や筋肉を意識しろとは聞いた事があるな。と言っても専門じゃないからな」

「おお……そうなのか……ありがとうございました!」


 やはり、ドヴァンさんは頼りになる。今度はいける気がする!


「何なら知り合いの本職を紹介しようか?」

「いえ、そこまでしていただくわけには……習う時間もありませんし」

「そうか……いや、まあ頑張れよ」

「はい!」


 そうして帰ってからクロやリリスをモデルとしてじっくり観察しながら、また練習した。

 ちょっと微妙な雰囲気になって逃げたのは内緒だ。クロはともかく、リリスは拙い……


 練習を続けるとなるほど確かに少し良くなった気がする。

 ちゃんと人型にはなった。


 そこではたと気付く。気付いてしまう。


「あれ、確か壁が必要だったはず……私は何故、造形をしているのか? 別に人型でなくとも良いのでは? もしや凄く無駄なことをしているのではないだろうか……」


 心の中でクール美少女の私が冷静になれよと囁いている。


 考えちゃダメだ! 直感に従うんだ! 今は邁進する時! 


 私はその声から耳を塞ぐようにして。

 宰相の仕事の合間に作る。

 師匠との稽古の合間に作る。

 完成したものに魔石核を嵌める。


 魔石核は魔石灯などに使われる魔石を精錬して動力としたものだ。

 お婆ちゃんが残した冒険者時代のガラクタの中にあった。それほど高価なものではなく、探せばどこかで売っている。

 一般流通しているかといわれると微妙なところだ。欲しがる人がそれなりに専門家ばかりだからだ。


 そして……今度は何故か動かない!

 ただ私が魔力を流すと動いたので手動人形の様なものだった。ある程度の遠隔操作はできる様だ。


「一応、壁にはなったのか? 戦闘で使えるかどうかは甚だ微妙だが……」


 そうして過ごしていたら瞬く間に、出発の日に至っていたのだった。


「しまった! 貴重な時間を……見通しが甘かった……しかし、無駄ではない……はず」


 うむ。無駄ではない。

 今はアラネアの服作りのためのマネキン人形になっているのだから。

 

 アラネアは喜んでくれました。



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