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ごちゃごちゃ  作者: 池田 ヒロ
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『ビックバン』

 広い宇宙のどこかで、同一犯による事件が勃発する。その犯人である『彼』は全宇宙を恐怖のどん底に陥れる『ビックバン』計画を企てた。それを阻止するために生まれた組織が宇宙保安庁。この組織の一員として働いている青年アルトは、今日も『彼』に復讐をするために、悲しみと怒りを振るうのだった。

 いえに しらないせかいの ひとが いました。

 おとうさんと おかあさんは、そのひとに ころされました。

 そのひとは、ぼくを みて「おまえが ほしい」とおおきな くちを あけていました。

 しぬかと おもいました。

 そうしていると、しらないせかいの ひとに たすけて もらいました。

 たすけてくれたひとは、いいました。

 「きみが、きょうの できごとを ゆるさないと いうならば、わたしたちと ともに くるんだ」

 ぼくは、おとうさんと おかあさんが ころされた ということを ゆるしません。


 だから、僕は、宇宙のどこかに逃げた『彼』を追う。この手で復讐を終えるまで。


     ◆


 無駄に広い通路の向こう側から、怒声が響く。そこを歩く者にとっては、またか、と呆れるばかり。びっくりすることはない。これは日常茶飯事なのだから。


 隊長室で叱責されている一人の青年がいた。その青年の目に映っているのは、数字だった。時間が経つにつれて、数字は変わってくる。これは目の前に展開されたただの数字ではない。この宇宙保安庁の第七隊隊長自身である。


「あれだけ言ったはずだ。単独行動は危険だ、と。わかっているのか、アルト!」


 第七隊隊長に怒られている青年、アルトはしょんぼりと項垂れる。


「……わかっています」


「気持ちはわからないでもないがね。我々もアルトも『彼』を追っている。誰もがやつに復讐心を持っている。つまり、そういうことだ。『彼』は多数の者たちが復讐の炎を持つほど、危険なやつだ、と」


「でも、キーさんはよく単独行動を……」


「他人のことより、自分を優先しろ!」


 第七隊隊長の数字が大きくなった。アルトの耳にしている異星語翻訳機から膨大な音量が貫く。頭が壊れそうなほどの大きさである。


「確かに、キーは単独行動をよくしている。が、あいつはまだいいんだ。問題はアルトだ。お前にはあいつと同様の力を持っているか? 持っていないだろう?」


「はい」


「わかればよろしい」


 第七隊隊長の数字がひっくり返った。


「今がしたキーから報告が来た。『げgじょdmk』に『彼』のアジトがあるらしい。そこへ、ガジジェンダルとともに行き、あいつと合流しろ。やることはアジトの制圧だけ。一人ぐらいは生かしておけ。深追いはするなよ。単独行動はするなよ。いいな、特にキー!」


 その言葉に、どこからともなく電子音が聞こえてきたかと思うと「合点承知」そう、妙に不機嫌そうな声が聞こえてきた。


「深追いは禁止ですね。わかっていますよ~」


「わかっていないから、注意をしているじゃないか。お前も毎度ながら、単独行動は控えてくれよ」


「だって、あの野郎を見逃したところで、被害は増える一方ですよ」


「それもそうだが、キー! アルト! お前たちは自分の力量を把握しろっ!」


「だから、合点承知。そんじゃ、アルト。『げgじょdmk』の『2548733649:jdfんjd』で待ってる、ってガジジェンダル先輩に伝えておいてね」


「は、はい」


 それを機に、キーの声は途絶えた。第七隊隊長の数字が忙しく動く。


「それじゃあ、アルト。もう、行きなさい。増援が必要ならば、必ず連絡を寄こすこと。一人で突っ走るな。ガジジェンダルや我々を頼りなさい。いいね?」


「了解です。失礼致しました」


     ◆


『げgじょdmk』、『2548733649:jdfんjd』の六十三区画にて。アルトはガジジェンダルとともにいた。彼は「そう言えば」と目玉をアルトに向ける。


「隊長に怒られていたけど、何してたの?」


「『ポポポポポポ』で、『彼』を追っていました。単独で」


「納得。ダメだろ、単独は。アルトは昔、『彼』に狙われていたんだろ? 今でこそ、こうして戦いに身を投じているだろうが、下手すりゃ、見逃してしまった相手がそこにいる、だからな」


「そうですけど、僕は早くやつを殺したいんです。そして、殺された両親に罪を償って欲しいんです」


「……なんというか、復讐心を持ったやつら同士の抗争が起きそうだな」


「起きるわけないじゃないですか。僕たちやみんなは『彼』を追っている。これからも、その被害を出さないためにも!」


 ガジジェンダルは目玉を動かしながら「知ってる?」と摩天楼の上にいる誰かを捉えた。


「『こでsgl』も前に『彼』は不死の力を手に入れたそうだ」


「…………」


 アルトもその誰かの姿を目に捉え、ガジジェンダルを見た。彼が訴えるのは「『彼』を捕らえることは不可能に近い」と言っているようだった。


「まるで、キーと同じ力だよな」


     ◆


『おpるmこ』色の羽を広げる誰か。その後ろにはアルトとガジジェンダルが。その誰かにガジジェンダルは「守備はどうだ」と訊いた。


「動きはあったか? キー」


「動きがあれば、私はここにいないですよ~」


 だろうな、と思う。いつでも、動けるようにしてその羽を広げているのだから。キーと呼ばれた誰かはこちらを振り返る。顔はない。『おpるmこ』色の頭がそこにあるだけ。見た目はアルトと似ているが、雰囲気や仕草は全く違う。


「どうよ、アルト。あやしい声は聞こえる?」


 キーにそう言われるがまま、アルトは首を横に振った。六十三区画からでも聞こえた心の声を聞いても、『彼』につながる情報はなし。


「頼りになるのはアルトの心の耳とガジジェンダル先輩の目ですからね~」


「それを頼りに単独突撃は止めておけよ」


「どの道、突撃は当たり前なのでは? 一人残らず、片付けてやりましょう」


「止めろ。隊長指示だ。一人は生かせ」


「生かして、『彼』の居場所を吐かせる? いいですね~。絶対に逃さない」


 アルトとガジジェンダルはキーの傍へと近付き、ここから見える『彼』のアジトを覗き込んだ。そこだけおかしいと思える。ここは『げgじょdmk』という星。それならば、『げgじょdmk』人の一人がいなければ、何も問題ないだろうが、そこにいるのは異星人だった。異星人がいるのがおかしいわけではないが、あやしいことには間違いないだろう。


 キーは顔をアジトに向けたまま口を開いた。


「『げgじょdmk』人からの目撃情報によれば、『ぃぃぃ』にそれらしき姿を見たそうです」


「監視カメラには?」


「姿はなかったですね~。ここ最近、姿を見せないから、透明化の力も手に入れたんじゃないです? どう、アルト。なんかわかる?」


「……わからないけど、『ビックバン』のことについて誰かが漏らしてる。計画はどうなったんだろうか、って」


 これでわかったこと。そこのアジトにいる異星人全員はクロである。それだからこそ、アルトは支給された武器を手にする。彼のその様子にキーもまた武器を手にした。今にも動こうとする彼らにガジジェンダルは「待て」と抑制をかけた。


「このまま突撃して、勝てると思っているのか?」


「勝てると思うから、準備をしているじゃないですか」


「いや、確実に捕らえるなら、援軍を呼ぶんだよ。何、勝手に突っ走ろうとしているの」


「確実を狙うなら、今でしょうに。ね、アルト」


「そうですよ。僕たちはこの好機を見逃したくないんですよ。ね、キーさん」


「よし、そうとあらば……」


 足に力を込めて、アジトへと突っ込もうとするキーにガジジェンダルの目玉から光線が飛び出てきた。キーの足元の地面は溶けてしまう。


「だから、待てって。『彼』が透明化の力を手に入れているならば、そこにいる可能性があるだろ?」


「それはないですよ。あいつの声は聞こえないですし」


「ほら、アルトもそう言っているんですから、行きましょう。というか、行くよっ!」


 キーはアルトの手を取り、アジトへと突撃するのだった。ガジジェンダルは「おいっ」と光線で止めに入ろうとするも、軽々しく避けられ――アジト内は一気に大騒ぎになるのだった。


「お前ら、先輩の言うことぐらい素直に聞けぇ!」


 なんてツッコミをしても、あの二人に届くことはない。見境なく突っ走ろうとするあのアホどもを助けるべく、ガジジェンダルは第七隊隊長に増援の要請を行うのだった。そのときの第七隊隊長は「呆れる」の一言を残している。


     ◆


 大きな物音とともに現れたのは顔のない『おpるmこ』色で統一された誰かと五体生物の誰かだった。突然、自分たちがいる場所に知らないやつらがいるから「誰だっ!?」と驚きは隠せない。


「いきなり、入ってきやがって」


 その言葉にアルトは懐からカードを取り出す。そして、そのカードにあるエンブレムを見せた。


「僕たちは宇宙保安庁第七隊だっ。異星間違法取引罪、および傷害事件、殺害事件で指名手配されている。大人しく……死ねっ!」


 悲痛の叫びか。アルトが動く。キーも動く。二人が振るう武器に異星人の血がこびりついた。


 戦うぞ。逃げるぞ。相手の心境がアルトの耳に入る。逃げる? どこへ逃げる気だ? もしも、『彼』のところへならば、自分も連れていけ。その勢いでなぎ倒していく。


 一人、その場から離れて逃走しようとするやつがいた。それを逃さないばかりにアルトが追っていると「アルトっ!」そうキーが押してきた。その直後、キーの頭が吹っ飛んだ。初めて見るキーの血。『えmご』色だ。自分と同じ色だ。


「ここは私に任せて、あいつを追えっ!」


 いつの間にか、キーの頭は復活していた。それを見て、アルトは何かに確信を持ったようにして、頷くと、逃げた異星人を追うのだった。


 この場に残ったキーの目の前には戦闘星人が敵意むき出しでこちらを見ているではないか。それにわくわくとした様子で「私が相手だ」と一言。直後、キーに向かって大量の攻撃が。この攻撃をすべて受けきれることも、回避することもなく、身体で受け止めてしまう。後方に飛ばされては、身体の再生を繰り返す。


「あ~、痛い」


 死ねないからなのか、余裕があるように見えるが、劣勢であることには変わりないだろう。現に、体勢を整えることもなく、建物の壁を身体で破壊してしまったから。


「いつになったら、死ねる?」


 なかなか死なないキーを思って、戦闘星人がそう訊ねてきた。これにキーは「知らない」と答える。


「それ、こっちが訊きたい。だから、『彼』の居場所を教えろ。あいつにこの呪いを解いてもらうから」


「『神』様はここにはいないな。だが、どこへ行ったかをお前に教えたところでどうすることもない」


「それならば、我々であるならば、教えてくれるかね?」


 どこからともなく、キーにとっては嫌な声が聞こえてきた。直後、戦闘星人の身体に数字が貫いた。


「いつの間に……」


「ガジジェンダルが連絡を寄こしてくれてね。言ったはずだ。深追いと単独行動は禁止だと」


「いけると思ったんですよ~」


「始末書は早めに提出するように」


「合点承知ぃ」


 そこには宇宙保安庁第七隊のほとんどの隊員たちが第七隊隊長を筆頭にいるのであった。その人数を見て、キーはこいつら負けたな、と一人心の中で呟くのだった。


     ◆


 アルトの耳にキーの呟きが聞こえてきた。「こいつら負けたな」ということは、ガジジェンダルが第七隊隊長にでも援軍を要請したのか。そうとあらば、こちらも負けてはいられない。彼は目の前を走る異星人を追った。その異星人の心の呟き曰く、「『神』様に状況を報告しなくては」「『ビックバン』計画がまたしても滞ってしまう」「命が惜しい」「簡易惑星脱出搭乗機で逃げなければ」とこちらにとって、有利な情報をばらまいてくれるではないか。


 ますます相手を見逃せそうにない。二人の前には簡易惑星脱出搭乗機が。ここで、またしてもこちらが有利になる情報を呟いてくれた。「ガスは入っている」「『おkぐっぉ』に一度は点検もしているから、いつでも発射できる」「『トランゲケツェ』の破損には気をつけなければ」その『トランゲケツェ』は搭乗機の下部にあるそれ。


 そこを破壊すれば、こいつは逃げることができやしない。これは好機だ、とアルトは支給された武器を振り回し――『トランゲケツェ』の破壊に成功した。逃げていた異星人はその場に崩れるようにして喚く。後ろに彼がいることを思い出して「待ってくれ」と命乞いをした。


「俺は何も知らないっ! 本当に、何も知らないんだっ! いきなり、あいつらが勝手に……信じてくれよぉ!」


 醜いと思う。見た目も、「知らないふりをしておこう」というその心の中も。


「『彼』はどこだ」


「『彼』って誰だよっ!?」


「『ビックバン』計画を知っているくせにか」


 ここで、ようやく異星人が白を切れなくなってしまった。ばつ悪そうにして、黙ったからだ。


「『ビックバン』計画が滞っているのは喜ばしいな。あとは、お前らの言う『神』様が死んで、僕の復讐劇が終わればいい」


 だから、黙って死ね、と武器を突き立てた。そこにはアルトにとって嫌悪感のある『zfrbhr』色の血が広がるばかり。だが、今は嬉しさがある。『ビックバン』計画が進んでいないということは、『彼』も動くに動けないという状況。


「僕は知っているさ」


 なあ、『彼』よ。


「『ビックバン』計画で必要なのは、僕の力だってこと」


 僕はお前にその力を渡さない。是が非でも。僕の復讐が終わるまでは、僕は死ねないし、お前も死なせない。絶対に。

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