表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第二章 僕の日常生活?
38/45

15.こういう時、どういう顔をしていいかわかりません……

 あぁ~、白いですね~。

 ぼんやりぽわぽわですね~。

 もうなんというか、こう。 えっと、あれ?


 うん。なんだかきっとアレですね~。これは夢ですね~。

 あぁ、もうここで一生過ごしてるのもイイですね~。

 とっても気持ちいいですし。

 はぁ、なんでここにこうしていると気持ちがいいんでしょうかね~。


 フィリー姉様。

 いつもあれだけ感じないのに、今は妙に意識しちゃいますね~。

 あれですかね。寝てる間に召還されてたりしたんですかね~。

 そうしたら、きっとがっかりさせちゃってますね~。


 ……


 あぁ、フィリー姉様が泣いてます。

 見えてる訳じゃないけど妙にそんな確信が沸いてきます。

 何がいけないんでしょうか? 僕はどうしたらいいんでしょうか?


 ……


 やっぱりアレですね。




 ……起きたくないなぁ……



----------



「……あぁ……」


 目に入ったのは白い天井。白いカーテン。白いシーツ。

 細い管が右手に伸びて腕に突き入れられています。


 所謂病院のベッドですね。


 ……それにしても、


「……ひゅ~、の゛、の゛どが……」


 いったいどれくらい水を飲んでいなかったんでしょうか? 喉がカラカラ、というかガラガラします。

 ふと右横を見れば、テーブルにペットボトルの水が。先端にストローが付いているのでこれで飲めっていうんでしょうね。っと手を伸ばし……

 うん、なんだが動きがカクカクですね。本当に自分の体じゃないみたいで。もしかして何日か寝てたんじゃないかって勢いです。病院で点滴ですからね。それもありえそうです。


 あぁ、少し声が出たおかげか、頭がハッキリしてきました。

 そうそう、とりあえず水です。寝起きの口の中はツバが乾燥して酷い臭いだと聞いたことがあります。自分のですしよくわかりませんが、うがいというか口に水分を含むだけで結構変わるはずです。


 そ、そぉっと。……あっ。


《バシャッ》


 うん。ちょっと失敗ですね。あぁもったいない。


「……雪月さん? 雪月さん? 目が覚めたんですね!? 緊急! 患者さんが覚醒! 先生呼んできて!」


 おっと、ここが病院なら看護婦さんやお医者の先生だっているはずですね。

 そういえばナースコールというのもあるんでしたっけ。忘れてました。

 あぁ、こ、こう手を伸ばして。いやぁいっぺん押してみたかったんですよねコレ。

 っと、あれ? よし。掴みました。へへ。それじゃっ


「雪月さん? あぁ、ナースコールはもう必要ありませんからね」


 直前で取り上げられました。ちっ。


「えっと、お水、ですね。ちょっと待ってください。あ、はいコレ」


 看護婦さんが飲みやすいようにとペットボトル(さっきのとは別のを)出してくれています。とりあえずストローを口に含んでと。

 ちゅるちゅるちゅる。ちゅるくるるる。くちゅくちゅ。んぐっ。


「……はぁ」

「はい、あまり慌てないでくださいね」

「あ、ありがとうございます」


 お水がおいしいですね。これほどのおいしさ、さぞ名のある名水でしょう。えっと、『市の名産:水道水』? まぁいいやもうなんでも。


 入院というか点滴までされて、体がガチガチで一瞬半身不随にでもと一瞬焦りましたが、単に寝起きで鈍かっただけみたいですね。妙にごりごりとした感じがありますが、しばらく寝ていたせいでしょう。とりあえず上半身を起こしてっと。


「あ、無理に動かないでください。今、先生がいらして診察されますから」

「は、はい。多分平気です」

「そうですか? とにかく今はここから動かないように。そんなにお待たせしませんからね」


 なるほど、多分ですが意識不明の患者が突然いなくなったりしたら病院としても困るでしょうからね。別に用事もありませんから黙ってベッドの上にいることにします。


 とりあえずペットボトルは持たせてもらったまま、そのまましばらく待機です。

 この点滴の管は邪魔ですが、それ以外は特になんとも無い感じ? ちょっと力を入れにくい程度です。ペットボトルも両手で持てば問題ありません。ちゅるちゅる。


「あぁよかった、目が覚めたんですね」


 カーテンを開けて表われたのは30歳くらいの女性でした。


「どうも、担当医の権藤です。まずは診察しますね。ちょっと冷たいけど我慢して。あぁペットボトルはこっちに置いてね」


 耳にあてるあれ、なんでしたっけ。そうそう聴診器。とか、ペンライトとか。なんやかんやして色々いじられました。とっても変な気分ですね。


「うん。特に異常は見当たりませんね。あとで細かく検査をしますが、とりあえず採血の準備を。あと親御さんに……えっと保護者の方に連絡を」


 保護者と聞いて一瞬あのハゲが頭に浮かびます。

 あんなのでも一応保護者ですからね。


「……雪月さん? 雪月さん!? 大丈夫ですか!? 雪月優さん! しっかり。落ち着いて! どうし……」


 自分でもわかるくらいに表情が強張っています。なんだかあの巨体が僕に覆いかぶさってくるような。急に周囲が暗くなりました。おかしいな。さっきは真っ白だと思ってたのに。



----------



「……あれ?」


 気が付いたら寝てました。うん、ペットボトルの位置や点滴の位置も一緒。

 もしかしてタイムリープ?


 と思ったら左手を握っている人がいました。


「……優ちゃん? 優ちゃん!?」

「あ、はい。おはようございます孝子さん」


 少し目を赤く腫らした孝子さんがそこにはいました。

 どうやら同じ時間は繰り返していないみたいです。


 というか単に僕が気絶しただけみたいですね。少し思い出しかけて孝子さんに止められました。


「とにかく、今はちょっと落ち着いてね?」

「……あ、ハイ」

「ここはどこか判るわよね?」

「たぶん病院のベッドかと」

「そう。優ちゃんはね。寝てたの。一週間、と1日かな?」

「一週間!?」


 思ったより長かったようです。なんだか大変なことになっちゃったぞ。


「体に異常は無し。外傷も何も無し。綺麗なままの優ちゃんだって」


 妙に『綺麗』が強調されて聞こえてきた気がします。何かあったんですかね?


「でも、このまま起きないんじゃないかと心配になったのよ?」

「そ、それは……ごめんなさい」


 自然と口から出るのが誤りの言葉というのは僕の癖みたいなもんでしょうか。なんだかいっぱい心配かけちゃったみたいだし。


「あぁうん、優ちゃんが謝ることじゃないのはわかるけど。まぁとにかく落ち着いて。横になってればいいから。一応簡単に検査があるらしいけど、意識が戻れば退院はすぐだって言ってたからね」

「それは助かります。というか僕お金ないから入院費用とかどうしよう……」


 僕の全財産(2千円くらい)じゃ絶対足りませんよね。どうしよう……


「えっと、孝子さん? あのちょっとご相談が……」

「え? 専属契約? いいわよ~高待遇で迎えちゃう! 生涯契約ね。あ、そうしたら毎日ご飯作ってくれない?」

「結婚じゃないですから」

「え~、いいじゃんお嫁にきてよ~」


 少し拗ねた感じですが、どうやら無理にでも明るく振舞ってくれている気がします。正直ありがたいですね。


「まぁそれはともかく、お金の心配はいらないから。スポンサー様がついてるからね」

「……えっと、代表さん? でしたっけ」

「うん。というかこの病院の手配とかもそっちもちだったし。何にも心配いらないから」

「はぁ、なんだか悪いですね」

「……なんで?」

「だってほら、僕、その代表さんとお会いしたこともないのに、一方的にお世話になっちゃってるみたいです。まずはお礼とかご挨拶が先なのかな。っていうのがいるかと」


 少なくとも人は善意で行動しないというのがあるそうで。やっぱり対価とか要求されるんだろうかなぁって思えるのはいろんな意味でイジメられ慣れてますかね。うん。こういう考えはやめとこう。どうせ変わらないし。


「あぁそれはまぁ、元気になってからよねそういうのって」

「それもそうですね。ベッドから出られないと挨拶に行くなんて無理ですし」

「そそ。とにかくまずは元気にならないとね」



----------



 それから30分くらいお話をして、孝子さんかお帰りになりました。

 ちょっと寂しかったんですが、泣きつくこともせずにお見送りです。


「やっぱり泊まる~」

「面会時間終りましたから。お帰り下さい」


 はい、ちゃんとお帰りになりましたよ?


 で、このシーンとした時間。時々カタッって鳴るのがちょっと怖いですね。

 怖くて眠れません。なんだか暗がりに何かいそうな気が。

 ……いえいえ。僕だって元男の子。少しくらい怖いのなんて気合です。


 《ふさぁ》

「ひっ!」


 不意にカーテンが揺れ、誰かが覗き込んできます。


「あ、ごめんごめん。脅かしちゃった? っていうかもう寝なさいよ。消灯なんだから」


 夜勤の看護婦さんでした。


「す、すいません……」

「あぁ、一応決まりで二時間おきに見回りしてるの。寝てないとわかるんだからダメよ?」

「は~い」


 なんだ、一人っきりじゃないのか。当然ですよね病院ですもん。

 誰か居てくれるんだなって考えたらちょっと安心しました。

 いやぁなんか気疲れしちゃいましたね……。



========== (杉田:夜勤看護師) ==========



「見回りどうだった?」


 同僚の高梨さんが報告書を纏めてる。今日は急患もなく緊急対応もないから少し安心だ。


「お疲れさま~、ってやっぱり寝てなかったわ」

「寝てないって、お姫様?」


 通称お姫様。優ちゃん。

 彼女の入院当初は、それはもう大変な状態だった。知らないところから偉い人が来てたり、どうしてか強姦検査なんかやらされてたし。あの年頃にあの検査は、正直拷問レベル。自分で見てたら絶対トラウマもんだからね。寝ててくれてこの時はありがたいと思ったよ。

 でも、意識が戻ったら警官が来て質問するんだろうなぁ。アレってマジで何考えてんだかわかんないこと聞くんだよね。何回出されたとか。


 実際の調査、被害者の証言ってのが重要なのはわかるけど、犯人以外の一番の加害者がてめぇらだって気が付いてないんじゃないかって思うわけよ。だってそうじゃん? 当人は絶対忘れたいことでしょ? それを事細かに思い出させるんだよ? 捜査協力とか犯人に正当な裁きを与えるためとかいうけどさ、それと傷口に塩を塗りたくるのとは別モンだと思うのよね。たま~に真面目な顔しつつも目が笑ってるヤツがいるんだよね。マジむかつく。


 まぁ結果はシロ。残留精液反応も無し。綺麗なもんでしたわ。なんかちょっと安心しちゃったけど。


 それでも相当なショックだったみたいで、入院当初はそりゃぁもう。自律呼吸はしてないわ、心拍停止までいくし。あれ相当ヤばかったわね。3日前に急に改善されたおかげでICUから出れたけど。何があったのかは知らないけど凄い回復だって先生ビックリしてたもんね。一応精密検査をしなおしていたけど原因不明な回復ってたま~にあるからね。


 ともかく、あれだけ回復すれば外科的な処置では何もできることはないからあとは心療内科の出番。コッチじゃぁもうなにもしてあげられないからちょっと残念。


「今は寝てます。見回りがあるって知ったら安心したみたいで」

「あぁ、入院時の注意事項とか説明聞いてないもんね」


 それでも保護者?の人には言っておいたんだけど、説明聞いてないのかな。案外話してないのかもしんないけど。あの人も超テンパってたからね。


「退院いつでしたっけ? 花束用意しないと」

「あら珍しい。ってやっぱりそうよね。可愛いもんね。退院記念に写真撮ってもらいましょうか」

「それいいですね、笑うと絶対可愛いですよあの子」

「ほんと、笑えるといいけど」


 一瞬場が凍りつく。


「いやそれマジでシャレになってないんで……」

「あ、うん。仕事するわ」


 この人どうしてこうなのかなぁ。まぁあとで可愛い寝顔を見に行こう。そうしよう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ