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孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第二章 僕の日常生活?
37/45

14.(優君が意識不明中につきサブタイトルはお休みします)

========== (孝子) ==========


 そのまま事に至ろうとしていた坂下ですが、不意に動きを止めます。


「あ、そや、せっかくやし録画しとこ」


 はぁ!?


「な、何しようとしてんのよ!」


 怒りで肩が震えます。


「ナニってナニやがな。それとあれだ。初めて記念やな。記録ってのは大事やで? 客観的事実っちゅうのはどんなに思い込もうおもっちょっても無駄やからな。これから優で楽しむにも大事なこっちゃ」


 テーブルに投げてあった自分の荷物からハンディカメラが取り出されました。


「おぉこれやこれ。いやぁなんかの役に立つと思ってたけど、バッチリやな。日頃の行いに感謝や」

「何が日頃の行いよ。それなら間違いなく地獄行きじゃない」


 突然知らない声がかかりました。多分女性の声ですが、どこから?


「なんや飛鳥か。いやなぁ、優ちゃんの初めてを記録にバッチリ残したろうおもうてな。ご隠居にご報告もせなあかんし、これくらいせんとあのお方は納得せんからな」

「これくらいって、ほとんどあんたの趣味でしょ。私の時も録画したくせに」


 苦々しい表情を浮かべる女の子。同様の目にあっているのでしょうが、どうしてそこまで態度が違うのか理解できません。


「まぁそうやな。でもお前ん時は別に騒ぎもせんかったしええやろ」

「……私は私で事情があったんだし。っていうかナニ? この惨状。武志もあんなアザだらけにしてこれじゃしばらく学校にも行けないわよ?」

「あぁそれな~、まぁちょっと秘密道具つこうたれば問題ないない」

「なによそれ」


 机の引き出し。丁寧に鍵付きらしいそこから一つの薬ビンを取り出しました。

 青く透き通るガラス瓶に入ったそれは、何かゲーム的なものを想像させます。


「軽い怪我とか簡単に消してしまう薬とかあんねん。ちょっとな、武本の荷物をちょろ~っとちょろまかして失敬しとったんがあってな。これがまた効くんやわ~。アレもっと無いんかなぁ、かなり儲かるんやけどなぁ」

「あんた。盗みまでするとは堕ちたもんよね」

「ええやろ少しくらい。おかげでお前も潤ってるやから」

「なによそれ……」


 薄気味悪い下品な笑いがこだまします。


「あぁそうや、飛鳥。てつだってぇな。スタンド忘れててな。ちょっとうまいこと固定できそうにないんよ」

「はぁ!? まぁいいけど。つぅか高いわよコレ」

「あぁ、そやな。これが終ればまとまった額の報酬も期待できるし、援助のほうバッチリ払わせてもらうで」

「マジ? ほんとね? 絶対ね? 嘘ついたらこのことバらすかんね?」

「バラすいうてもお前も共犯やろ。ってそういう問題でもないか。まぁ期待しとき」

「……わかった。んじゃカメラ頂戴」


 飛鳥と呼ばれた女が手を差し出しカメラを受け取ると、坂下は嬉々として優を抱え込もうとします。

 そこで手に持った薬ビンに気がつきました。


「あぁすまんこれも預かってんか。大事なもんやから丁寧にな」


 貴重品らしいその薬を飛鳥がじっくり見ながら受け取ります。


「これって、どれくらいの価値があるの?」

「そうやな。下手な麻薬なんかと違って違法性もない。10倍程度に薄めても十分な効果があってな。よっぽど酷い怪我でもなけりゃふりかけるだけで一発で消せる。そんな魔法の薬や。そうやな。軽く三千万は取れるな。相手次第やけど」

「へぇ……」


 そう関心すると、そのままポケットに仕舞います。


「……なにしとんねん。テーブルに置きぃ」

「何って持ってる方が安全でしょ。どうせあんた乱暴に暴れるんだから下手にどっかに置いて割れでもしたらもったいないじゃない」

「……まぁそらそうか。じゃぁ無くすんやないで」

「えぇ」


 一応納得したようです。


「さぁ、ほれじゃぁメインディッシュを頂き……ってなにしとんじゃガキ!」


 二人の会話中、ジリジリとはいずるように移動していた武志君。そのまま優ちゃんを連れ去るべく腕を引っ張ります。どうやら吹き飛ばされた衝撃で肩が外れ拘束していた紐がゆるんだのでしょう。左肩が不自然な角度で曲がっています。あんな極限状態下でも、自分を捨てて優ちゃんを逃がそうと今も足掻いているのです。私なんかよりよっぽど凄い子……



「どうやって抜け出したんや!? まぁええ。そこをどかんか!」



《ガシャーン!!》


 怒りに任せた蹴りが武志君を吹き飛ばします。多少の抵抗もできずそのまま窓まで、そしてガラス窓と共に外に飛び出しました。


「なに!?」


 思いのほか威力の篭った蹴り、ではなくどうやら武志君が意図して飛んだようです。自分の力では無理と考えて坂下の逆上した蹴りを利用したんでしょう。咄嗟のことに頭が回りませんでしたが後で考えるとそうとしか思えません。


 咄嗟に窓の外を覗く坂下ですが、どうやら予想外の状態に陥ったようです。

 窓が割れたせいで外の音が聞こえ始めました。どうやら武志君の様子を見て誰かが騒いでいる感じです。


「ちっ、面倒になりおった。おい飛鳥。優を連れて来い。行き着けのホテルまで移動するで」

「えぇ、私女だからそんな力無いわよ」

「あほ、あんなの軽くて羽が生えるわ。お前でも摘んで運べるっちゅうねん」

「なんで私がこんな真似を。っていうか臭いんだけど?」

「がまんしぃ。はよ行くで!」


 坂下の指示に飛鳥が優を抱えようと振り向いた時。彼はいました。


「……は? 武本?」

「どっからきおったんや?」


 無言で優ちゃんを見下ろしながら、その体にシーツをかけます。どうやら敵という訳では無さそうです。


「……なぁおっさん。一つ聞くんだが、ユウにこんなことしたのはおっさんってことでいいんだよな?」

「はぁ? わしがか? 知らんがな、というか優と武志とでなんかいかがわしい事しとったって聞いてな。んで現場に踏み込んだらなんか優が襲われとったんよ。もうこれはあかんと思うてな。ちょいと愛の鉄拳制裁を下しとったんや。ほんで今は優の看病やな。男のワシが運ぶのは何かと問題やろうっちゅうこっとで飛鳥に手伝ってもろうてんねや。なぁせやろ飛鳥?」

「あ、え?」

「せやろて飛鳥」


 何とベラベラと回る口か。どこからこんだけ饒舌に言い訳がもれてくるのか、その脳構造が信じられない。


「……ふむ。嘘か。つまりお前が、この人を縛った」

「何言うてるんや証拠でもあんのかいな」


 男の子が次の言葉を発する前、少しだけ部屋の空気が凍えた。


「その目の前で、ユウを犯した」

「……やっとらんがな」

「それは本当か」

「なんやと?」

「もう一度だけ聞く。つまりお前の仕業だな?」

「……ちゃうわボケ。そんなんどうでもいいがな、優を連れ出さんと。看病したらんとあかんねん。ほら飛鳥行くで!」

「逃がすかアホ」


 一瞬、彼の眼光が鋭くなった気がした。そして一瞬の間に何かが起こったのだろう。

 瞬きする間のほんの一瞬。彼はその場から消えると次の瞬間には坂下の背後に立っていた。


「なっ! いつの」

「口を開くな」


《ドサッ》


 体が邪魔になってはっきり見えなかった。けど次の瞬間にはバタリと昏倒するヤツの姿が。


「ひぃ!」

「なぁ女。お前、見たことあると思うんだが……名前はなんだっけ?」

「あ、ああ、飛鳥よ!」

「そうかアスカ。お前もこれの片棒を担いでいたのか?」

「そそそんな訳ないじゃない! あたしは無関係よ!」


 飛鳥と名乗った少女は足腰がガタガタと震えていました。完全に気後れしています。


「そうか。でもじゃぁなんで無事なんだ?」

「ししし知らないわ! あたしは呼ばれただけなんだから!」

「ほう、それは嘘か。でも無関係ってのは嘘って程でもないか」

「げっ!」


 少年の手の先が鋭く伸びたように見えたのは、握っていたであろう刃物の切っ先でした。


「いいから医者を呼べ。外で倒れているガキに医者が必要だ。すぐに呼べ。いいな」

「そ、そっちの女と、優のことはどうするのよ?」

「それはこちらで回収する」


 そのセリフの直後、ふわっとした布が私の体にかけられました。同時に手足を縛っていた紐が解かれていたようです。いったいどうやったら……


「すまないコモリさん。到着が遅れたが、これから安全なところに移動する」

「……武本君? よね?」

「いかにも。ユウの状態は……まぁ良くはないが、最悪でもないか。後で調べるとして、こんなところからとっとと移動するぞ」


 武本君が懐から何か杖を取り出します。それを私に掲げて一言。

『クリア』

 と言うと、なんだか全身が洗われでもしたような清涼感に包まれます。


「あいにく服の手持ちに余分がない。サイズもユウに合うものしかないので申し訳ないが、貴方の服は多分アレだろう。一緒に浄化しておいたからそのまま着れると思うが、大丈夫か?」


 そういうと、たしかに乱暴に放り投げられたわりには綺麗な状態で落ちていました。

 私が着替えている間に優ちゃんにも、先ほどのへんな杖があてがわれてすっかり綺麗になっています。と、そのままショーツを履かそうとしてるし!


「ためっ! っていうか寝てる女の子に乱暴しちゃダメ!」

「あ、うん。すまん。じゃぁコレを頼む」


 といってどこからか取り出したのかわかりませんが、ジャージや下着を一揃え渡されました。


「ヤツの私物だ。問題無いと思うが改めてくれ」


 あまり上等とはいえないジャージですが、丁寧に補修してあったりと大事に着ていたのがわかります。名札に「優」と書いてあるので間違いないでしょう。


「それじゃ頼む。こっちは移動の手はずを整える」


 そういうと扉の外に出て行きました。多分これ以上優ちゃんの裸を見ないためかもしれません。

 とにかく、とにかく良かった。最悪だけは回避できたはず。でも誤解はさせたと思うから、どうにかしないと……


「ちょっと……、ちょっとあんた」

「……なに?」


 飛鳥という子が声をかけてきました。どうやら院長が悶絶して倒れているのを確認していたみたいです。


「優を、どうすんの?」

「どうするもなにも、こんなところから連れ出す。それだけよ」

「そう……。じゃぁコレ。後で優に渡して」


 と何か小さなスティック状の物が手渡されます。ぱっと見にはリップクリームくらいにしか見えませんが。


「……これは?」

「渡せばわかるから。じゃぁ」


 そういって飛鳥も外に出ます。

 何気に小脇に書類鞄のようなものを抱えていましたから何か持ち出してるかもしれません。なんか変なことにならなきゃいいけど。

 優ちゃんの着替えを終らせた頃、外に救急車のサイレンが響きました。どうやら武志君が無事助け出されたようです。


「こちらも移動する。外傷は既に無いと思うが無理はするな。といっても少し歩くのでその間は簡便してもらいたい」

「わかった。とりあえず行きましょう。こんなところ、二度と見たくも無い」

「まったくだ」


 転がっていたビデオカメラを拾い上げていました。中を確認すると、ちゃんとテープとか入ってるっぽいですね。先ほどまでとはうって変わった不器用さではありましたが。男の子ってこういう機械には慣れてるものだって思ってたのでちょっと意外です。


 まぁこうして、悶絶したままの坂下を置いて私達は孤児院を出て行きました。もう二度と戻らない。そう信じて。




========== (武本) ==========



(優に着替えを渡して廊下に出た直後まで遡る)



 いつものように経過報告。成果は出ているので悪くはないが、良くもない。正直かなり失敗した感があって憂鬱だ。……俺らしくもない。



「あ~。ユウは回収した。問題は……一応無い」

『……一応ってどういうこと?』


 あからさまに不機嫌な声が響く。しょうがないか。


「裸に剥かれて全身嘗め回され、ついでに昏睡状態での強姦の証拠映像を残されかけた程度だ。多分ヤられてないから問題は無い」

『はぁあぁ!?』


 声のトーンが一段上がった。間違いない。キれてる。怖えぇ。


『まさか、それで相手はどうしたの? 私のユウにそこまでしてくれたオバカさんは』

「とりあえず麻酔と混濁、睡眠で状態異常固定をしてある。どんな名医にも解除は無理だろ」

『……回収させましょう。で、マジで手出しされてないっていうのね?』

「手出しというのが性交を指すなら多分無い。その現場に最初からいなかったからわからんが男の会話を判断するに間違いだろう。嘘も多いが犯していないというのは本当だった」

『……もっと具体的な証拠が欲しいわね』

「病院とやらで検査するか? 膜が破れてなければいいんだろう。もしくはヤツの子種が撒き散らかされてないとか調べれば」


 少し間が開く。どうやら悩んでいるようだ。


『……あんたマジむかつくわね。デリカシーってもんがないの?』

「本人の証言より確実だ。というか意識の戻る前に済ませてしまえばよかろう」


 深いため息。どうしたらいいか葛藤しているんだろうか。無駄な感情だが致し方ないか。


『……悔しいけど正論ね。信頼のおけるスタッフが必要になるわ。ちょっと手配するからまずはこっちに移送。お前は同行して継続して警護。いいわね』

「言われなくとも」


 もう二度とこんなことは起こさん。


『あぁ、証拠映像とか言ってたわね。それの回収も指示するけどまずは貴方の方で確保して。部屋に備え付けられてるようなものは後から回す回収班に対応させるから。手持ちの機材だけでいいわ』

「……たぶんアレだと思うって物はある。了解した」


 あの黒い四角いものだろ。魔力反応は無いから自信は無いが、なんか大事にしてたし。忘れないうちに回収しとこう。


『……というか冷静よね。ユウがこんな目にあってるのに』

「殺していいのか?」


 本心で殺したい。その手段もあるし、誰かが許せば躊躇無く実行するだろう。


『イイと言いたいけどダメよ。こっちじゃ犯罪になっちゃうもの』

「バレなきゃいいんじゃないのか?」


 そんなことをユウも言っていたし。


『人目が多すぎ。というかそっちの警察機構は意外と抜け穴だらけなの。変なちょっかいが出てこないように抑えないと。まぁその屑の身柄はコッチで押さえちゃうけどね』

「この場で殺さないだけか。ならよかった」


 後でやるだけなら問題ない。ユウの護衛が終ったら殺しに戻るつもりだったし。


『……馬鹿ね。殺さないわよ』

「随分お優しいことで」


 怒りで頭が沸騰しそうなんだが、つい間違って殺したくなりそうだ。いやもう殺すか。


『死にたくなるほど後悔させてやる。殺してくれって頼み込んでくるくらいには』


 なるほど。それもそうか。あっさり殺してやるほど優しくなれそうにないしな。


「……手伝う」

『当然よ。それじゃよろしく』


 とにかくユウを移動させる。話はそれからだ。



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