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孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第二章 僕の日常生活?
29/45

06.もしかして → 忘れられてる?


 あれから一週間程が過ぎました。


 一応無事平穏な日常生活を過ごしています。

 相変わらずお風呂には入れませんが、とにかく無事過ごしています。


 というか、僕が銭湯に行こうかなぁと準備しようとすると、何故か武志君が嗅ぎつけてきて一緒に行こうとします。流石に何度も一緒に行けるほどの度胸はありません。というかあんなイベント何度も起こさせてはいかんと思うのです。


 流石に繁盛してない?とはいえ、あそこまでガラガラな状況に早々めぐり合うとは思えない。もしかすると同年代の子だって来るかもしれないし、体育会系の部活連中がやってくるかもしれない。そんな団体さんと遭遇しちゃったらどうすればいいんだ? というか考えたくないので対策するまではスルーしよう。


 というか学園どころか外を歩いているだけで注目されるという現状はあまり変わっていませんが、流石にクラスメイトの間ではある程度慣れみたいなものが生まれてきたようです。とりあえずなんか要るよな~的な扱いにはなりました。というか、必死に気配を消そうとしたせいもあるんでしょうが、突然スキルが生えました。[隠形 Lv1]というそうです。


 周囲から認識されにくくなるというスキルらしいです。スキルのLvに応じて効果が上がるということですが、Lv1でもそこそこの効果があるわけで、注目されていなければまず見つからないということ。[消臭]と組み合わせると効果倍増らしいのです。


「あぁここにいたのか、一緒に帰ろう!」


 うん、効果倍増のはずですが、武志君には意味がないみたいです。

 どうして見つかるんでしょうか? ちなみにここは図書準備室で、書士の人にお願いして通してもらっていたんだけど、武志君も同じくらい仲がいいので意味が無かったかもしれません。


 いや、隠れてた訳じゃないんだけどね? そういう訳じゃないんだけど、ほら、一人になりたいというか、静かに検証したいというか。うまくやり過ごして一人でお風呂したいというか。そういうことにチャレンジしてみて昨日も一昨日も失敗したら今日こそは、とか考えてはないんですよ。うん。


「……どうしたの? なんだか難しいこと考えてるみたいだけど」

「あ、うん。ちょっと日本経済の今後について」

「考えてないよね?」

「考えてないね」

「……僕と帰るのってイヤ?」


 なんだか潤んだ瞳をさせつつ、少し見上げる感じで言われてしまうとなんだか悪いことをしている気分にさせられなくもないというか。どうしたんだろう? 最近武志君のプッシュが妙に強い。風呂はともかくトイレに入っている時ですら様子を確認するためにノックされた時にはちょっとどうしようかと真面目に考えてしまった。いっそのこともっと[隠形]のレベルを上げたほうがいいのかもしれない。もしくは洗脳とか思考操作系のスキルを……


「今日は珍しく休みなんだしさ、少しのんびりしようよ。ね?」


 新聞は365日発行されるけど、配達員にだって休みくらいはあるのです。そりゃほとんど無いんですが、それでも月に1・2回程度の休みはもらえる訳なんです。

 ただし基本的に朝刊の休みはありません。その分夕刊のタイミングでは融通を利かせてもらっています。学生としては午後に行事が入ることが多いという判断だそうです。僕にはあまり関係ないのですが。


「そういえばなんか、三人組が優君を今日連れて行こうって張り切ってたみたいだよ?」


 アウトレットモールにあるお店の一つだそうです。一応ブランド物も扱っているそうですが、僕にはよくわかりません。フリルたっぷりのだけは勘弁してもらいたいものです。なんかほら、視界にチラチラとリボンが漂っている様子は結構どころかかなり邪魔なんですよ。材質によってはなんだかチクチク痛いですし。ああいうのって本当に邪魔だと思います。高い服ならそういうこともないんでしょうけど、僕らのところにくるようなものだと必然的に良い素材な服というのは無いので、着心地とか考えてない素材のものばかりですし。


 まぁつまり簡単に言えば、逃げようと思います。お金かかるのもイヤですし?


「そういう訳で市立図書館にでも行きましょうか。お金かかりませんし」


 あの三人の来そうにない所に行くのが一番です。万が一見つかったとしても、図書館の職員さんの前で暴れだす訳にはいかないと思います。何より本がいっぱいあるのです。料理の本とか読んでおけばフィリー姉様に呼び出された時に役立つような気がします。


 うん。そう思ってるんですけど、ちょっと思い出すと少しだけ気分がブルーってヤツですね。


 もう一週間も過ぎてしまいました。なんとなく2・3日もすれば呼び出されると思っていたので、なんだかとても変な気分です。もしかするともう呼ばれないのかなぁとか思ったりするとなんだか胸がキュンキュンと痛みます。もう要らない子なのかなぁとか思えてしまうのです。


 ある程度お役に立っている自負はありました。たぶんですが。でももしかするとフィリー姉様なら一人でも大丈夫だったんじゃないかと思えることがあります。


 神札という切り札。あれさえ潤沢に準備できるなら何も心配なかったんじゃないかと、そう考えてしまうと止まらなくなるのです。

 呪札というのは別に僕だけが用意できるものではありません。一応お店でも取り扱いのある消耗品でしかないのです。多少の品質の良さはかけるお金次第でどうにでもなるんじゃないかと思えます。豪商の娘であるフィリー姉様なら、ある程度のお金を用意することもできるでしょうし、なら僕に頼らずとも事を成せるはずなのです。


 あぁ、僕は要らない子なのか。


 色々と変わる切っ掛け、というか物理的に色々変わってしまった今、昔のイジメられる以外の選択肢の無い世界に戻ることはもう無いでしょう。他の人は使えない様々なスキルを使いこなせば、それこそ便利に立ち回ることだってできると思います。でもこの力は全てフィリー姉様から頂いたモノだと思うと、何も返せている気がしていない今では当人から要らないなんて言われちゃったりしたら、それこそ立ち直れないかもしれません。


「優君? あれ? 立ち止まってどうしたの? 図書館行くんでしょ?」


 一応料理について褒めて頂けたとは思いますが、それだって僕を褒めて使い易く動かそうという意図でもって動いていただけって考えだって無くは……。


「優君? ほんとに顔色悪いよ? どうしたの? 保健室行こうか?」


 いえ。そんなことはありません。あの時のフィリー姉様の笑顔。本当に幸せそうな表情でした。あの微笑に嘘はありません。あの時の食べっぷりは演技というならアカデミー賞主演女優賞とか頂ける勢いでしょう。スキル補正があったとしても凄すぎるってもんです。


 苛められ続けた僕の半生の経験から、目の前の人が嘘をついているかどうかの判断くらいはできます。大抵の大人は嘘というほどでもないけど本当のことを言わないことや、同級生に至っては真面目に話しを聞いてくれすらしませんけどね。


 嘘とか軽蔑とか、そういういつも感じていた視線とは明らかに異なる、そういう暖かい何かがあったから僕は無条件でフィリー姉様を信じることができたんです。なんだろう? 武志君とかが向けてくるようなものとは明らかに違う、お母さんとかがいたらこういう感じなのかなぁ。なんて後で思ってしまったんです。


 この人なら信じていい。そう思えたのに。どうしたなんでしょうかね?


「ねぇ優君! もう、今日はさ、遊びに行こう! ゲーセンとか行ったこと無いでしょ?」


 やっぱり僕は要らない子なのかな。でもフィリー姉様のことは嫌いになれそうにないなぁ……


「もう、なんだか変だよ? 今日は本当にどうしたの? ほら行こう!」

「……え? あ、武志君。 えっとごめんぼーっとしてたみたいで」


 つい思考に溺れていたようです。ちょっと反省しないとだめですね。


「ほんとだよ、もう行くよ!」

「あ、うん。ってえ? 図書館はそっちじゃないよ?」


 武志君の目指している方角はどちらかというと駅前、図書館のある方向とは正反対です。


「そうだね、でも今日はゲーセン行くからね!」

「え? ゲーセンって、僕お金持ってないよ?」

「いいからいいから、少しは気分転換しないとダメだよ!」

「気分転換って……いやちょっと待ってよそんなに引っ張らないでよ!」


 なんだかいつにも増して強引です。武志君に何があったんでしょうか?


「ははっ! 僕さ、優君とゲーセンで遊びたかったんだ! 早く行こうよ!」


 妙に嬉しそうな顔を見ると、なんだか僕一人悩んでいるのばバカっぽく思えてきます。少なくともこの友人の前では落ち込んだ顔なんて見せている場合じゃないのかもしれません。

 というかそんなことしてるとどこに連れて行かれるのか、少し心配になってきました。本当に武志君はどうしたんでしょうか?



----------



「ほえ~、前からチラチラと見てましたけど、中に入ってみると本当にキラキラしてますね」


 駅前に程近い「トムキャッツアイ」というゲーセンです。8階まであるビルの1~3階部分がゲーセンでそれ以外は飲み屋さんとか、漫画本屋さんだったりします。最上階はパブ?とかの飲み屋さんぽいです。興味はないのでどうでもいいですけど。


「ほら、このカードを使って遊ぶんだよ。優君はどんなのが見てみたい?」


 最近はカードにチャージして利用するのが中心だそうです。ゲーセンなんてテーブルの上に百円玉を積み上げて遊ぶものだと思い込んでいましたが、時代は変わるものですね。


「そうですね。僕は良くわからないので武志君のオススメがあればそれがいいかもしれません」

「オススメって言われても……、やっぱり定番はコインゲーム?」


 メダルコインを使ったゲーム全般のことだそうです。投入口にコインを入れると、タイミングによっては大当たりを引いてザックザク、ということは滅多にないそうです。まぁ遊びなんですから楽しめればなんでもいいとは思います。

 といってもゲーセンっていうのは遊べば遊ぶだけお金がかかる施設。いくら武志君に誘われたからといってそのまま甘えているわけにもいかないんじゃないかと思うのですが。


「あぁ、心配しないで。カードにチャージしてある金額以上に使わないし、というか僕一人じゃこんなところ来ないから今日使いきっちゃうくらいの気分でいいからさ」

「そう言われてもさ、なんか悪いでしょ?」

「だったらさ、コインで使う以上に増やしてよ。だったら誰も損しないしね?」

「う~ん、そんな都合よくいかないと思うなぁ……」


 というより逆なんですけどね。ステータスを信じるなら僕のLUCKがかなり高いので、こういう運が前提のゲームってかなり酷い結果になるんじゃないかと……



 ~ 10分後 ~



「ん~、意外に増えたね。というか倍くらい? やっぱ優君って運がいいのかなぁ」

「びぎなーずらっく?ってヤツだよたぶん?」


 うん、口調が変だった気がする。


 それはともかく、賭けたコインに対して大当たり!とかジャックポット!とか連打することはないけど、けして負けるということもない微妙な成績でした。

 う~ん、もしかして僕の能力というのは戦闘系に特化したものなんでしょうか? でも料理とかあんまり関係無い気がするし。まぁ普通の人よりはラッキーな気がしますが……なんとなく解せない感じです。ステータスってなんなんだろうね?




========== (ゲーセンのバイト) ==========



 うわ、また当たった。ここでバイト始めてから随分たつけど、あんなに外れ率少ない人って始めてみた。ジャックポットとか絡まない本気で只の運だけってヤツ以外であんなふうに稼げる人って見たこと無いよ。


 コインゲームって基本的に客が損するように出来てる。でないと店が儲からないからね。当たり前なんだけど。一応「当たりを出して喜ぶ客」ってのがいないと誰も遊ばないから、それでもトータルでは絶対負けるように造られてる。そういう機械。


 あそこの二人組み。の可愛いのが座ってるスロットのって、特にスロットやるヤツなんて長時間プレイするのが普通だから勝率は渋めだ。地味だし目立たないし。たまにジャックポットのベルが鳴ることで俺も俺もって思わせる装置でしかない。

 そういう騒いだり落ち込んだり、その様子を回りに見せるための機械であって儲けが出ない代表的な機械と言えるはずなんだ。


 それなのに、メダルのIN/OUTを確認すると間違いなく増えてる。相方が大きく減らしてるから実質可愛い方が一人で儲けた計算だ。ざっと3倍にはなってる。

 店長なんか途中で気が付いて設定を操作してやったとか笑ってたくらい。リア充爆発しやがれとかまぁそれは別に反対するつもりもないんだけど、そういうことをされたに関わらずだ。


 別にメダルを何かの景品と交換するって訳でもないから、特に損してるわけじゃないんだけどね。

 むしろ当たるたんびにニコニコと笑ってくれるほうが店としてもありがたいってもんだ。というかあんな子いたっけ? もう帰っちゃったけどまた来てくんね~かな。次来たら写メ取らんとね。すっかり忘れてたわ。



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