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孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第二章 僕の日常生活?
25/45

02.やっぱりお風呂はいい……一人ならもっといい……


 覚悟は決めました。

 でもなんかちょっとこわ、いや恥ずかしいですね。なんだかいろんな意味で。

 ともかく、ここに立ち止まっていては「なにこの子?」とか言われて注目されかねないので移動開始です。


 ガラガラッと引き戸を開けます。


 一面押し寄せてくる湯気の渦。体の回りの気温が一気に上昇していきます。

 この湿っていながらも暖かな空気。僕は帰ってきたんだ……。


「あ、やっときた、お~いこっちこっち!」


 武志君が呼んでいますが、体を直視される危険を冒すわけにはいきません。そういうわけで湯船へ直行です。

 転ばないように注意しながらも足早に駆け寄り、風呂桶に手をかけいっきにっ


「と、だめだよ体を洗ってからじゃないと。他のお客さんにご迷惑になるでしょ?」


 ……ガッシリと手を掴まれてしまいました。怖いですよ転んだらどうするんですか。主に僕以外ピンチじゃないですけど。

 ……え、えっと、体を洗わないと、ダ、ダメですよねははは……


「せっかくだからさ、背中を流してあげるよ!」


 いえいえご遠慮致します。僕は一人がいいんです。特に今は一人がいいんですってばっ!



----------



「うわ~なんかすべすべだね~、優君の肌ってこんなツヤッツヤだったっけ?」


 はい。無駄な抵抗でした。レベルアップでSTRも上昇していたはずなんですが、全く抵抗できなかったのはどういうことでしょうか? いつも以上に強引な武志君のせいだとは思いますが、ちょっと謎です。

 特別何かいいスキルとかは持ってなかったと思うんですけどね。どういうことだろ?


 ちょっと確認しといたほうがいいかもしれません。武志君に[鑑定]っと……。

 ってひぃ! なんか脇腹とかやらなくていいからっ! [直感]! 仕事して!


「ん? くすぐったかった? ごめんごめん! 優君とお風呂なんて久々だったからついうれしくて。でも最近なんだか大変だったよね。おとといの呼び出しの時なんかもう心配してたんだよ?」


 あちらの時間では随分とたっていたんですが、こっちでは前回と同じように2時間程度しか経過していませんでした。一度の滞在時間に関係なくです。どういう理屈なのかいまいちよくわかりません。


「ひぃ!」

「あ、ごめんごめん。なんか優君て肌弱くなった?」

「そ、そんなこと……あるかも?」

「う~ん、どうしてかなぁ。でもお風呂入ってなかったワリには綺麗だよね? どうしてたの?」

「え~、まぁそれはいろいろでうっ! 脇触らないで下さい!」

「ごめんごめん。なんか面白くて」

「僕で遊ばないでくださぅひっ!」

「あはは。なんか優君ビンカンだなぁ~。大人しくしてくれないと洗えないよぉ?」


 せめて背筋を指でつつ~っとするのはヤメて下さいっ! マジビクビクしますからっ……


 はぁはぁ。

 一応満足したのか、後は大人しく洗ってくれているようです。もうこっちは声が漏れないように必死ですよ。

 ん~。背中にお湯がかけられてやっと一息つけそうです。暖かくていいですねお湯。


「ん~じゃあとは前?」

「それは自分でやります!」

「はは、だよね~、じゃぁ僕は先にお風呂に入ってるね」


 先に体を洗っていたせいもあって僕が背中を流してあげる必要はないそうです。僕も自分でできると言ったのですが、せっかくだからとかよくわからない理由で強行されました。いやほんと、どうしてこうなった。


 しかしさっきもそうでしたけど、武志君ってこんなに力強かったでしょうかね? 同じような……というには語弊がありますが、そうでなくてもある程度は張り合える程度の腕力はあったと自負していたのですが。もしかすると常に手加減してくれていたんでしょうかね。存外に骨太の将来力強く育つのではないかと感じさせる何かがあります。僕とは大違いです。本当に大違いなのでなんとも言い様がありませんけど。


 とりあえず今のうちに頭を洗って…… う~ん、未だに目が開けられませんね。ちょっと染みるというか痛いんですよねシャンプー。 っとシャワーヘッドはっと、あれ? このへんじゃぁ…… っと、ここでしたか。とりあえずお湯を、


「ひっ!」


 水じゃないですかっ! あぁ押す方を間違えてたんですねってもう。凄い声が出ちゃいましたけどまぁいいでしょう。えっとこっちこっちっと、ふんふんふ~んふふんふ~んっていやぁサッパリしますねやっぱり。ちゃんと洗えないから気分としていいものじゃないんですよね。


「優君だいじょうぶ~?」

「あ、うんだいじょうぶ~」

「そう? 何かあったら呼んでね~」


 決定的に運が悪かったこれまでを知ってくれているので何か心配かけまくってしまっているようです。幸運が強く働くなら今日くらい一人でお風呂に来れでもいいものじゃないかと思うのですが……そこまでは高望みでしょうか。


 はい、妙に敏感になった肌に四苦八苦しながらもなんとか体を洗い終え、やっとお風呂に入れるのでした。ゴシゴシ洗うのが好きだったんですけど、これからは注意しないとダメですね。



「でもなんでタオルなの? 普段そんなのしないじゃん」


 湯船の中でもタオル着用。温泉番組では定番のスタイルだそうですが、僕としては必然なのでどうしようもありません。


「だってほら、知らない人いるし……」


 先ほどから低めの温度の湯船に腰までつかってのんびりとしているおじいちゃんの方を見ながら小声で話します。申し訳ないけど言い訳にさせてもらいますね。見知らぬおじいちゃん。


「ん~、気にしなくてもいいと思うけどなぁ。まぁ優君がそうしたいならそれでいいけどね」

「でもさ、気持ちいいねやっぱり。広いお風呂って」


 それはなんの疑いも無く同意できます。広いお風呂は問答無用で気持ちいいものです。もうなんですかね。ぽわぽわとあったかいという事実だけでなんだか幸せ気分が満喫できるかんじです。もはや意味不明な素敵気分ですね。


 あぁ、このまま居たいのは山々なのですが、あきらかにのぼせたりしちゃうのが確定的に明らかですし、テキトウなところで妥協しなければなりませんね。それにしてもいいものですお風呂というのは……



========== (武志) ==========



 今日は一人お休みだったので少し余計に回らなければいけなかった。おかげで優君が仕事終わりで上がってから一時間くらいたった頃だったらしい。


「あぁ、この券あげたらすごい喜んでいたわねぇ」


 ついでとばかりに手渡してくれたのは、銭湯の無料券。気紛れというか本当に優君のついでってヤツなんだろう。特に何かあるわけでもないし門限までに戻れば問題は無いとはいえ、優君一人で外を歩かせるのはちょっと心配。とにもかくにも僕は急いで移動することにした。

 流石にそれほどの額はないけど、ある程度のお小遣い程度の金額は持ち合わせているし、一回お風呂に付き合う程度なら問題ないと思う。お風呂って入場料以外にもかかるだろうし。


 前を通りかかったことはあるくらいには知っていたのですぐに到着することができた。ちょうど優君らしき人影も番台さん?のところで見かけることもできたし。しかしこんな服持ってたのかな? シンプルだけど優君らしい飾らないところが可愛らしい。いや何言ってるんだろうねこれ。


「良かった! 優君きてたんだね!」


 とりあえず無事でなにより。最近なんだかいろいろと騒がしいし、院内の風呂でもトラブルが多かったせいもあって心配していたんだ。風呂好きの優君がまったく風呂に入ろうとしないのとか特に。

 ここなら人も少ないし、広くてのんびり出来るに違いない。たぶんだけどね。


「ここのチケットも、らったって聞いてさ、一人じゃさ、心配だったからさ、慌てて追いかけてさ、来ちゃったよ!」


 とにかく慌ててきちゃったせいか息が途切れ途切れ、いやけして優君の私服姿に見とれて言葉が出ないとかそんなことじゃないよ? たぶんきっとそう。

 妙な気分を起こす前にまず移動だ、とにかく風呂に入ればば妙な気持ちも洗い流せるに違いない。

 僕は優君の手を掴むとスタスタと歩いていった。あぁちゃんとチケット渡しましたから大丈夫だよ?


 さて、妙に着替えに手間取る優君を置いて僕は一人体を洗っているのですが、やっぱり落ち着きません。なんだろう、なんだか場違いというか、何かいけないことをしてしまったようなそんなドキドキみたいなものが溢れてきます。


《ガラガラッ》


 脱衣所からの扉が開かれ、祐君が現れました。全身にバスタオルを巻いてなんだかとても恥ずかしそうです。なんだろう? 確かに知らないおじいさんが一人いるけど、普段の優君なら目をキラキラさせてお風呂に一直線って感じなのに、いや行動は変わりませんね。本当に風呂好きなんだから。


 慌てる優君を捕まえてとりあえず体を洗う手伝いをします。背中は洗いにくいからね。とりあえず前に座らせてバスタオルを外させてます。なんだかキラキラして見えるのはお湯とか湯気のせいだと思います。妙に濃い湯気が気になりますが、とりあえず手ぬぐいに石鹸をつけて、優君の背中をゴシゴシと。


「あっ、くっ、……んっ!」


 何か我慢するような、なんだろう喘ぎ声? 口から漏れてくるように囁かれる声、なんだかモチモチというかスベスベというかツルツルという感じの優君の肌。優君ってこんな柔らかかったかな? 僕とあまり変わりない、体つきに恵まれないというに相応しい小さな体だったように思うんだけど、今の優君はとてもチャーミングにまとまっていそうです。いつの間にこんなに成長して……友達としてうれしく思うぞ。


「ん~じゃあとは前?」


 と冗談交じりに聞いてみたけど、まぁ普通自分でやるよね。顔を真っ赤にして反論してました。うんうん。 ……ちょっと惜しいとか思ってませんよ? 多分。

 僕が浴槽に入ったところで髪を洗い始めていました。鏡が遮蔽物になって後ろ姿しか見えないところなのが少し心配ですが、他に入っている人もいないし平気でしょうか。


 あ、何か探してる。シャワーかな? あ、おじいさんが手に取らせてくれてる。後でお礼言わないと。

 あ、水とお湯を間違えてる。ほんとに妙なところでおっちょこちょいだなぁ。

 驚いて体に巻いたバスタオルがはたけちゃってるよ。


 ……あれ? いや、あれ?

 なんだろう、見てると妙にドキドキする。

 うん、最近はいつでもそうだけど、今日は特にドキドキするなぁ。

 これはなんだろう? 更衣の先生に聞いてみたけど「最近は男の子同士もアリなのよ?」とか少し興奮気味に言われてしまいました。僕と優君が何かあるわけないじゃないか。


 ……無いよね? 無い。無いったらない。


 無いんだけど、裸の優君? が目に入ると、見ちゃいけないんだけど見たい、そんな気持ちにさせる、そんな何かを感じる。こうなんか胸がドキドキして顔が火照ってくるような。お酒を呑むとこういう気持ちになるのかなぁなんてなんか適当なことを考えたりもしたよ。


 あ、おじいさんがじぃ~っと見てる。何か気になるのかな? ってなんだかニマニマしてる感じだから、優君の可愛さに見とれてるのかな。……って流石にジロジロ見すぎじゃないかな。どうしてそんな舐めるように背中から腰に向けて視線を投げているんだろう? なんだか妙にイヤな感じだ。


「ゴ、ゴホン!」


 咄嗟に出た咳払いに僕自身が驚きながら、しかし確実にお爺さんの耳にも届いたらしい。急に視線を周囲に泳がせたと思ったらそのまま隣の低温風呂に戻っていった。優君は優君でシャンプーに忙しくて気が付いてなかったみたいだし、やっぱり僕が一緒に来てよかったね。ってどうしてそんなことしちゃったんだろ? うん、ほんとどうしてだろう。



 しばらくして優君が湯船に入ってきた。いつもよりもより一層艶やかな光を放つ肌、揺れ動く髪、したたる汗すら輝きを纏ったようにキラキラとして、ただのお風呂のはずなのにとても心地よい空間がここにはあったんだ。そう、桃源郷っていうのはこういう場所なんだと思う。優君と一緒ならどこでも楽しいのかもしれない。次も一緒に来よう。優君いないとつまんないし。


 優君の口からこぼれ出す鼻歌が、お風呂場の中でエコーのように響き渡る。山彦のような輪唱となって僕ごとこのお風呂を包み込んでとても贅沢なオーケストラを聴いている気分にさせてくれる。優君にこんな才能があったなんてビックリだ。こんど音楽の課題では歌手に推薦してみようかな? でもそうすると優君の歌声が僕だけの秘密みたいなものにできなくなっちゃうのか…… それはちょっとさびしいかな?


「……どうしたの?」


 いつの間にか優君オーケストラは終わりを告げていたみたい。僕が無反応だったから気にさせちゃったのかもしれないね。


「ううん、なんでもないよ。なんだか優君って歌も上手いんだね。全然知らなかったよ」


「え? そ、そそそ、そんなことないよ? ちょっと久々のお風呂で気持ちよかったとか、そんな気分でつい口から出ちゃっただけで何かあるわけじゃ……無いんだからね?」


 その照れながら弁解する優君の、その真っ赤に染まった頬が余りに可愛らしくて、僕もつられてなんだか妙な気分になりそうだった。


「で、でももう帰らないとダメかな? 僕もう上がるね!」


 サバッ!


 少し大きな水音を立てて祐君が立ち上がる。

 バスタオルが少しめくれあがって、僕の正面にちょうど優君のお尻が迫ってくる。

 咄嗟に目を瞑ってしまったのは何故だろう? な、なんでもないはずなのに。



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