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孤児で奴隷で女の子  作者: おがわん
第一章 僕の学園生活?
22/45

22.意地があるんですよ! 元男の子にはさぁ!

「《強化》! 《強化》!!」


 上級呪札の二枚重ねならなんとか耐えてくれそうです。ミシミシといやな音が響いていますがなんとか耐えることができました。

 ドラゴンが拳を振り下ろすのを黙って見ている訳がありません。僕にだって意地くらいはあるんです。


<パキーンッ!>


 しかし所詮は急造盾。押し込められた力に耐え切れず、小さな破片を撒き散らしながら粉々に砕け散ってしまいました。飛び散った鋭利な欠片は細かな刃の雨となって僕にも降り注ぎます。地面に届く頃には結界としての効力を失って消えてしまうのですから被害は僕が一方的に被るだけなのがちょっとシャクです。この程度では鱗を傷つけることもできませんし。


 傷といっても細かな切り傷。しばらくほおっておいても致命傷になることもないでしょう。まぁ見た目が派手なのであまりよい印象はありませんが……しかし何か気になります。僕の《閃き》が何か重要なことだと教えてくれるのですが……


「……ユウ!」


 うん。とりあえず姉様が無事ならヨシとしましょう。

 となるとドラゴンの取るべき次の手段は…… なんとなく想像がつきます。慌てて結界石をばら撒き周囲に結界を張り巡らせ、続けて《強化》を


<ゴワッ!>


 と、間一髪間に合いました。結界石の本来の使い方である『複数の結界石を用いての結界作成』で、一時的な安全エリアの確保ができました。といっても後何秒保つのかわかりませんが。

 火の玉だけでなく拳や尻尾も織り交ぜた攻撃が雨あられのように降り注ぐのを見ると、もうじきこの結界も砕け散るでしょう。


「ユウ……傷は大丈夫?」


 姉様の優しい声が耳に届きます。周囲から巻き起こる大音響の中でも彼女の声だけははっきりと聞こえてくるのだから不思議なものです。


「えぇ、別にドラゴンから受けた手傷じゃないですから。結界の破片で傷ついただけですし」


 ドラゴンからの直接攻撃で受けた傷だったら今頃間違いなくリタイアしていたはずです。というか耐えられるわけないですし。


「それより姉様。なんとか一撃食らわせてやりましょう。こういう強化はできませんか?」


 さっきから僕の《閃き》が煩いくらいに囁きます。こうすれば傷つけることができると。明らかに賭け要素しかありませんし、しかもかなり分の悪い賭け。


「……結論を言えばできるけど、それでいいの? ボーナスポイントをかなり使っちゃうわよ?」


「ここで負けたらボーナスなんて意味ないですから。それに、今動けるのは僕だけですし」


 さっきから動こうとするたびに姉様の表情が強張る。さっきの術の後遺症なんだろうけど、そんな状態の姉様を前戦に立たせる訳にはいかない。たぶん間違いなく失敗するだろうし。


「そうね、ここできっちり仕留めて、それで帰ってご飯にしましょう」


 ご飯を作る時間くらいは欲しいな。姉様はテキトウに済ませちゃうことが多いし。



----------



「それじゃ、行きます! 《俊足》」


 姉様に施してもらった呪札《俊足》。2枚の札を消費して対象の移動速度を上げる呪札です。

 急激に移動速度が向上するので普通は使いこなしなんてできないらしいけど、


「おっと! よし、いける!」


 吹き付けられる火の玉を、僕に当たりそうなものを《直感》で、避けるために最適な移動方法を《閃き》で、それぞれを駆使してなんとか逃げ回ります。時にはしゃがみ、時には木の棒で無理やり体制を変えて。無いはずの避けられる道を強引にねじ開けて。しかし、避けるだけで精一杯。僕の攻撃が届くような距離ではなく、ドラゴンの放つ火の玉が勢いを増していきます。間合いを詰めなければ話にならない。だけど相手との技量差は圧倒的。


 そもそもなんでこんな必死になって、それこそ不可能と思えるようなことをしてるんだろう?


 集中が途切れてきたせいか余計な思考が頭を過ぎる。いかんいかん、目の前に集中しないと本当に死ぬぞ!?


「ユウ!」


 姉様の叫び声にふと我に返ると、目の前にドラゴンの手のひらが迫っています。

 でもこれこそが待っていたチャンス!


「《強化》!」


 木の棒の先にくくりつけた結界石を発動する。形状は穂先。そして呪札は伝説級。

 そう、知ってたかい? ドラゴンスレイヤーって実は槍のことなんだよ?


 石突部分を地面に付けて無理やり足で固定する。僕の力で貫けなくても、ドラゴン自身の力でならどうだっ!


<スブッ!>


『ナニッ!』


 一瞬の輝きを残し、その役目を終えた結界槍が砕け散る。といっても根元まで食い込んだ木の棒が抜けることも無く、結果としてドラゴンは自分の手のひらを地面に縫いつけました。

 だが所詮ただの木の棒だ。ドラゴンの力に逆らえるはずもない。すぐにでもへし折られてしまうでしょう。


「更に、《強化》!」


 そうなる前にもう一度《強化》。握り部分に仕込んだ結界石を発動。イメージは木の棒の中に通す硬い鉄の棒。

 数秒程度かもしれないが、確実にドラゴンを縫いとめる楔の完成だ。


 残った結界石は一つ。それを握り締めながら結界に形を与える。思い描くのは……これだっ


「……姉様! 行きます! 《強化》!」


 作り上げたのは、僕の身長ほどはありそうな大きな大きな、一本の包丁? 両手で抱える程の大きさの結界包丁を思いっきり振りかぶる。


「よし、行け! 《神斬》!」


 姉様の手から放たれた呪札が結界包丁にまとわり付く。

 次の瞬間、グンッと一気に加速され振り下ろされ、そのまま地面に突き刺さる。


<パリーン!>


 振り回された僕の体が地面に叩きつけられるのと同時に結界包丁は砕け散ってしまった。





「……ん~、失敗したかなぁ……」


 僕が狙ったのはドラゴンの指。流石に指を落とされては文句のつけようがないと思ったのだけど。


「そうね、まだウロコが落ちてないしね」


 ゆっくりとドラゴンの手が引き抜かれる。効果時間も切れているせいか、木の棒はあっけなく砕け散ってしまった。

 狙ったんだけどなぁ……。まぁ欲張っちゃしょうがないよね。


 地面にカラリと音を立てて転がったのは、ドラゴンの指から切り落とされた爪だった。



----------



「で、どうなの? やっぱり認められないのかしら?」


 切り落とした爪を手に姉様が問い詰める。

 落とした爪は2本、いや2枚というべきかな? ちょうど爪先の部分で長さにして30cm程度しかない。いや爪先っていうか普通に考えたら随分大きいんだけど。


『確かに鱗ではない。鱗ではないがな、流石にこれを認めぬほど狭量ではないつもりじゃ』


 爪が切り取られた部分をじっと見ていたようだが、その声が心なし楽しそうな感じがする。何か面白いものを見つけた子供のような印象だ。


『いやしかし、いやほんとうにだが、我に手傷を負わせることができるとは。しかもこんな手段とはまるで想像しておらんかった。これだから人種というのは面白い。道具を使わせると予想もしなかったことを平然とやりこなしよる』


 タネを明かせば簡単。僕にドラゴンに通用する攻撃スキルはない。でも《調理師》だったら? Lv1だから通用しないかもしれないけど、限界までLvを上げれば? という《閃き》を信じたんだ。

 後は料理に相応しい道具を準備するだけ。本当は手を止めるのも槍というよりは杭というか串なんだけどね。


 『食材を包丁で切る』とイメージすればいいだけ、といってもドラゴンの肉体を断ち切れる保障はない。いくら虎の子のミスリルゴーレムのコアを使ったといっても限度ってものがある。そこで姉様に《神札》を切ってもらった。攻撃の瞬間にタイミングを合わせるなんて僕には無理だからね。



『本当に見事。試験突破を認めよう』


 その言葉を聴いてやっと一息つけた。

 と思ったら気が抜けたんだろう。カクンと膝から崩れ落ちてしまった。


「……ふぅ、よかった~ これでダメって言われたらどうしよう…かと…… あ、あれ?」


 いやぁ、本当に気が抜けるってのはこういうことを言うんだねぇ。腰が抜けると歩けないってのは本当だね。っていうかまるっきり動かないよ。


「……ユウ!? そういえば止血は!? 早く手当てを!」


 あぁ、姉様が呼んでる。まぁ試験クリアできたからちょっとはいいですよね? いやほんとちょっとだけですから。


「ユウ!? どうしたのユウ!? しっ……」


 あぁもういいや。なんかもう疲れた……



----------



 ふと目を覚ます。どうやら少し寝ていたみたいだ。


「いたっ!」


 意識が戻ると同時に手足に残る痛みがぶり返す。いやぁ何しろ両手足は切り傷だらけ。手のひらは加熱した鉄の棒を握り締めていたせいもあって酷い火傷、だったはずだけど今はすっかり直っているみたい。あれだけ酷かった状態が見た目だけはすっかり元通り。皮膚の下まで治ってないのかも。これがAPP補正ってヤツかな。正直めちゃくちゃこえ~。


「……貴方の作った回復ポーションの効き目って凄いのね。あんな酷い火傷があっという間に治っちゃうなんて」


 僕が起きたのに気が付いたようで、姉様が優しく声をかけてくれる。

 って膝枕!?


 慌ててがばっ!と起きようとしたところを上から押さえ込まれた。


「いいからもうちょっとじっとしてなさい。本当に無茶するんだから……」


 そういいながらも姉様の表情にも疲れが見える。無茶をするのはお互い様ですよ。


「……それはそうと、ここはどこでしょう?」


 ダンジョンの中のような寒々とした空気とは明らかに違う気配。抱え込まれているせいで周囲が見渡せないのも手伝ってどこにいるのか見当もつかない。一応ベッドの中にいるんですがここは本当にどこなんでしょうか? というかあれからどうなったんでしょう?


「ここは屋敷のベッドよ。学園の医療室に押し込められそうになったけど、どうにか言いくるめて来たわ」


 どうやらダンジョン内から無事脱出できたようです。


「あれからドラゴン経由で連絡を受けた治療担当に連れられてここまで来たの。試験終了まで手出ししないルールだからしょうがないわね」


 本来なら各階層を無視して、というより『事故で転移させられて』しまった生徒であるフィリー姉様にはすぐさま救助が差し向けられるはずだったものが、転移先が『たまたま階層守護者のフロア』だったせいで試験が発生し手出しできない状態だったそうだ。


「まぁ、結果としては良かったってことかしらね? 一応期間内にダンジョン踏破を達成したからこれで私の問題も解決したにはしたわ」


 うん。一応ミッションコンプリートってことなのかな。


「ところで聞きたかったのだけど、どうして指ではなく爪を切り落としたの? 明らかに指のほうが切りやすかったでしょうに」


 ちょっと真剣な表情も素敵です姉様。

 といいたい所だけどそこはグッと抑えて。


「……いやほら、指を切ったら痛いかなぁって。爪ならまた生えてくるだろうしって……ダメでした?」


 ほら、ドバッと血が出たりしそうだし、なんかイヤじゃん? [調理師Lv4]だとドラゴンと言えど骨まで切ることも可能になるみたいだけど、命の奪い合いでもないんだからそこまでしたくはなかった。おかげで姉様に《神斬》を使ってもらうまでは爪を切る「太刀筋」というか「包丁筋」みたいなものは見えてこなかったわけで。結構ギリギリだったのかな。槍を刺しただろって? まぁあれくらいなら大丈夫大丈夫。


「まぁ、そういうことだとは思ったけど、ドラゴンって指くらい普通に再生するみたいよ?」


 おぉ、なんだか知らないけど凄いなぁファンタジー生物。


「流石に牙とか角とか瞳とかは簡単には再生しないみたいだけどね。あぁこれ預かってきたから」


 といって差し出してきたのは切り取った爪と、直径50cmはあろうかという大きな鱗が3枚。


「指の代わりにくれるそうよ。磨り潰して粉にすれば上位ポーションの材料になるらしいわ。あぁ、あとオマケでネックレスももらえたの。お揃いよ?」


 シルバーのチェーンの先に鈍い光を放つクリスタルを抱えたシンプルな一品。僕が何か言う前に姉様にかけられてしまった。目の前に迫る姉様のおっぱいにドキドキしっぱなしだったのはちょっとだけナイショだ。たぶんバレバレだけど。



~~~


シルバードラゴン・ネックレス:MP(30/30)

シンプルな装飾のネックレス。クリスタルに封じられた魔術効果によりMPの自然回復量が1.2倍になる。


~~~



 おぉう。ものごっつぅ微妙な効果だけど案外役に立つ……?


「さて、本当はもっとゆっくりしていたいのだけど、時間切れまであんまりないのよね……どうしようかしら?」


 と胸元のもう一つのネックレスを確認すると……あと30分!?


「た、大変だっ! 早く準備しましょう! とりあえず呪札とポーションの補充! って預かってる戦利品の整理もしないとっ! あぁ、姉様用のお食事も準備しないとっ!」


 こうなっては一刻の猶予もない。帰るまでにできるだけのことを済ませておくしかないっ!




 同時並行で様々な準備を整えつつ(《直感》と《閃き》によって大幅に助けられたのは言うまでも無く)帰還直前までギリッギリで支度を終えるのだった。


「このお鍋は軽く一煮立ちさせればある程度持ちます。サンドイッチにしたものもこの氷のケースに入れておけば少しは持ちますけど過信しないでください。あとやっぱり次ぎ呼ぶときはもうちょっと長めにいられるようにお願いします、でないとお部屋のお掃除も進みませんっ!」


「はいはい、次に呼べるのはもう少しかかるけど、なるべくこっちにいられる時間を引き延ばせるよう努力するから」


「本当ですね? 僕がいなくてもちゃんと三食食べるんですよ! できたらお野菜もちゃんと食べてくださいね!」


「ハイハイ。面倒だからユウに任せるわ」


「だから僕のいない間の話なんですってば~~!」


 という猛抗議をしようとした瞬間、僕は元の世界に戻された。

 ぎゅるっとかギャギャーとかそんな効果音などなく、非常にあっさりと。地面に着地するときに足踏みの音を立てた程度かもしれない。



 抗議する相手も既にいないし、声を上げても仕方ない。

 周囲は暗く、あれからどれくらいの時間がたったのか見当もつかないけど、どうやら呼ばれてからそんなに時間がたってないことは想像できた。

 なにしろ僕の目の前に、脱がされて踏みつけられボロボロに汚された僕のズボンとパンツが落ちていたのだ。

 ちなみに財布は別の所に落ちていた。たぶんお金が入っていなかったからだと思う。

 お金が無かったことを喜ぶべきなのか、お金が無かったことを悲しむべきなのか、ちょっとアンニュイな気分になっちゃうのは仕方ないよね。


 そんなことを思いながら僕はズボンの汚れを払って履き替えた。

 ……だってスカートのまんまだったし。




~~~


ユウ・ユキヅキ 性別:女  レベル:21  年齢:12

HP: 40/215 MP:210/845


STR: 7 CON: 7 DEX:12

INT:13 POW:14 APP:17 LUK:16

称号 :[捨てられたモノ][学生][学生アルバイト][自動修復サンドバッグ][おやつ係(笑)][自己犠牲(笑)][次元踏破者][異邦人][被従魔契約(主人:フィリーオ・フォン・エストン)][ゴーレムクラッシャー][学園迷宮クリア]


スキル:[異界語(日本語)][苦痛耐性 Lv2][精神耐性 Lv1][環境適応 Lv1][サバイバル Lv2][裁縫 Lv1][清掃 Lv1][洗濯 Lv1][算術 Lv1][効率向上 Lv2][共通語][魔術の才覚][鑑定][獲得経験増加][レベルアップボーナス増加][支援魔術 Lv1][危機察知 Lv5][緊急回避 Lv3][生活魔術 Lv3][MP回復強化][アイテムボックス Lv3][術具作成 Lv5][調合 Lv3][棒術 Lv3][調理師 Lv4][直感][閃き]



ボーナスポイント :35

▼取得可能スキル一覧


~~~

以下言い訳。



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とりあえず区切りが良いところまでは書けたということで公開してみることにしました。

以降の展開もある程度(そこそこ酷いんですが……)も考えてネタふりしてあるんですが、

思ったようにまとまらずに放置されていたりするのがこのお話です。


お約束でキャラクタープロフィールというかキャラ設定を公開しようかと考えていたのですが、

用意してある設定には次章以降のネタバレが露骨に書いてあるので公開停止処分です。

(もしまともな状態で公開できるようならこの文章そのものを書き換えて起きます)



さて、これまで読んで頂けた方で楽しんで下さる方がいらしたなら本当にうれしく思います。

なんか感想とか頂けるとマジ感謝です(露骨



2016.01.27 おがわん



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と思ってたら続きが書けました。びっくりですね。

一章と比べると1話少ないのはちょっとアレで申し訳ないんですが、キリがいいので。


2016.03.06 おがわん


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