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ノーアタックザジジィ

翌日、めぐみは、勉に怒り狂ったように咎めていた。

 「もうおじいちゃん!良い加減にして!」

 めぐみは、昨日の晩の事に付いて勉に怒っていた。

 「すまない…。だって、酒飲んでいるから良くないと思っていて」

 勉が慌てた様子で弁解した。

 「そんなのおじいちゃんが言う事じゃないでしょ!もう、何とかステファニーの友達が抑えてくれたから何とか収まったけど…。もし、おじいちゃんのせいでステファニーとトムの仲が悪くなったらどうするの!ねぇ!聞いているの!」

 めぐみが激しく問い詰めるように聞いた。

 「すまない…だけど…。その…」

 勉がうつむいて畏まった様子で言った。

 「もうおじいちゃんは、本当に怖い…」

 めぐみが呆れるように疲弊した様子で言った。

 「まあまあ、今回は、おじいちゃんは、未成年の子が酒を飲んでいるのを注意しただけじゃないか」

 父が勉を庇うように言った。

 「まあ、そうだけど。本当に怖かったからね。もう、私死ぬかと思ったもん」

 めぐみが怯えた様子で言った。

 「わし、やっぱり日本に帰国した方が良いかな…」

 勉が落ち込んだ様子で言った。

 「お義父さん、そんな事言わないで下さい。確かに未成年で酒を飲むのは、良くない事です。お義父さんみたいなしっかりとした人が注意しないと今の若者は、成長しませんよ。ありがとうございます」

 父が深々と頭を下げて勉にお礼を言った。

 「あ…いや。そんな…。それほどでも…」

 勉が少し照れた様子で頭を下げて頷いた。

 「もう、おじいちゃん。お父さんに褒められたからって調子に乗らないでね…」

 めぐみが呆れるように言った。

 すると、家のチャイムが鳴った。

 「はーい」

 めぐみが扉を開けた。

 立っていたのは、ステファニーだった。

 勉に大事な話があると言い、訪問したのだ。

 「おじいちゃん!ステファニーが話したい事があるって」

 めぐみが勉を呼んだ。

 「おう。そうか…。分かった…」

 勉は、ステファニーに歩み寄った。

 ステファニーは、勉に驚くべき事を言った。

 自分の通う学校で食事の内容に付いて詳しく教えて欲しいとの事だった。

 ステファニーの通う学校の校長先生が自分の生徒が飲酒をしている姿を真剣になって怒ってくれた日本人の老人と話がしたいと言ってステファニーに来てもらうように言ったのだった。そこでお礼とこれからの健康面の指導を生徒にして欲しいそうだ。

 しかも今日来て欲しいとの事だった。

 それを聞いためぐみは、目を見開いて驚嘆するかのごとく声を上げた。

 「え!そうなの!凄い!おじいちゃん!凄い!」

 めぐみが勉の肩を強く叩いて言った。

 「どうした?」

 勉がぼんやりとした顔で首を傾げて聞いた。

 「ステファニーの通う学校に来て欲しいの。おじいちゃんがステファニーの友達で酒飲んで怒ってくれた事を聞いた校長先生がおじいちゃんにお礼が言いたいそうよ。おじいちゃんに食事面について学校の生徒に指導して欲しいみたい」

 めぐみが誇らしそうに嬉しそうに言った。

 「…そうなのか…」

 勉は、信じられない様子で歓喜に極まったような表情をしてうずうずした雰囲気を漂わせていた。

 「そうなのか?」

 父が目を見開いて驚いた様子で駆け寄って聞いた。

 「そうよ。本当よ!凄いわね!」

 めぐみが目を見開いて嬉しそうに声を上げて言った。

 めぐみの声には、張りがあり力強かった。

 まさに自分の祖父が世界で認められた事が嬉しいような感じがした。

 「やった…。やったぞ!」

 父が両手を上げて激しく喜びを露わにした。

 勉は、笑顔で大きく頷いていた。

 その様子をステファニーは、微笑ましそうに見ていた。

 早速、勉は、ステファニーの通う学校に行く事になった。

 めぐみも勉の付き添いとしてステファニーの学校に入る事を許可された。

 ステファニーの通う学校は、家から徒歩十数分の所にある場所にあった。

 とても広々としていて、大きなコートで囲まれたコンクリートのグラウンドがあり、バスケットコートも設置されていた。

 早速、学校の入り口付近の警備員にステファニーは、事情を説明して、めぐみと勉を学校の中へと案内した。

 めぐみは、初めてアメリカの学校の建物を見て好奇心のような眼差しを向けて校舎を見ていた。

 「アメリカの学校は、広々としていて大きいな…」

 勉の学校の校舎の広さに唖然とした様子で見渡していた。

 校舎の中へと入って行き、職員室の前にステファニーは、立ち止まった。

 白人の若い男の先生だ。

 名前は、スミス先生だった。

 スミス先生は、めぐみと勉に英語で自己紹介をした。

 めぐみもスミス先生に自己紹介をした。

 スミス先生は、めぐみを校長室に案内した。

 ステファニーは、自分の教室に戻った。

 めぐみと勉は、ステファニーに手を振ってまた後でと言って別れた。

 校長室は、職員室のある階の上にあった。

 校長室の扉をノックした。

 校長先生が姿を現した。

 校長先生は、茶髪の六十代くらいの白人の女性だった。

 目尻を下げて、深々と勉にお辞儀をした。

 「すいすいすいやせやせん!すいますすいませ…」

 勉が畏まった様子で噛みすぎた様に言った。

 「もう、おじいちゃん!」

 めぐみが勉に緊張を解す為に強く背中を叩いた。

 「あ!すまん!」

 勉が苦笑いしてめぐみに深々と頭を下げて謝った。

 「もう謝るのは校長先生でしょ!」

 めぐみが勉の背中を強く叩いて、一喝するように声を上げた。

 「もうビシバシ叩くな!」

 勉が苛立った様子で声を上げて言った。

 その様子を見て、校長先生は、微笑ましそうに見て頷いた。

 校長先生は、勉に対してこう言った。

 あなたの力強い行動に私は、勇気をもらいました。未成年飲酒という行為がいかに良くないか教えてくれた事がどれだけ心強いか。今もこの地域は、犯罪なども多発しており、決して治安が良いとは言えない。この学校の生徒も犯罪組織による接触も出てきています。飲酒から犯罪に手を染める事は珍しい事ではありません。どうか、あなたが私達の助けになって下さい。そして、食と言う重要な事を生徒一人一人に説明して下さい。お願いします。あなただけが頼りです。

 校長先生は、英語でそう言った。

 めぐみは、校長先生の英語を聞き取り、勉に日本語で説明した。

 「それは…何て申し訳ない…恐れ入ります…」

 勉が深々と抑揚のある透き通った声で言った。

 校長先生が今から学校案内すると、校長室を出て、勉とめぐみと一緒に校舎の中へと向かった。

 めぐみと勉は、校長先生の後を追った。

 すると、激しい銃声の音が聞こえた。

 マシンガンを連射する音が響き渡った。

 校舎の窓ガラスが割られて、生徒の悲鳴の声が響き渡った。

 校長先生が恐怖が入り混じった青い血相に変えた。

 めぐみも突然の事で何か分からず困惑している。

 勉も何が起こっているのか分からないまま困惑していた。

 すると、激しい銃声の音が校長室近くまで聞こえてきた。

 激しい銃声の音と共に逃げ惑う生徒達の姿も見えた。

 衣服に血が付着している生徒もいた。

 「え!何!」

 めぐみが悲痛な叫び声を上げた。

 勉は、あまりの衝撃的な場面に言葉が失い体を震わせて座り込んだ。

 すると、マシンガンを手に持った赤い帽子を被り、白い長袖に黒いベストを着て、ジーンズを履いた三十代くらいの男が勉とめぐみと校長先生に銃口を向けた。

 校長先生は、顔を歪めて声が出ないほどの悲痛な表情を浮かべた。

 めぐみと勉も死を覚悟した様な激しく顔を歪めて顔面蒼白になっていた。

 死ぬ…ワシは、ここで死ぬ…。

 勉は、心の中で必死に呟いた。

 すると、マシンガンを手に持った男の少し離れた後ろの方でステファニーがいた。

 ステファニーは、逃げている時めぐみと勉の姿が視界に入った。

 ステファニーは、勉とめぐみがマシンガンの銃口を向けられているのに気がついて一瞬怯んだが恐怖の感情に唇を強く噛み締めて、強引に消し去り、勢いよく男に体当たりした。

 男は、体当たりされた衝撃で倒れた。

 しかし、男は、ステファニーを突き飛ばして、銃口を向けた。

 そして、引き金を引いた。

 激しい銃声が校舎に響いた。

 その時駆けつけた警官が男を取り押さえた。

 勉とめぐみは、撃たれたステファニーを恐怖で硬直した顔で見た。

 ステファニーは、目を半開きにしていた。

 顔の血色は、悪くなっていた。青白くなりかかっていた。

 撃たれた胸の部分は、赤黒くなっていた。

 そして、勉とめぐみに向かって口元を少し上げて笑った様な表情をして目を閉じて静かに息を引き取った。

 「ステファニー!ステファニー!」

 勉は、目から激しい涙を零して、激しく絶叫した。

 勉の涙の雫がステファニーの頰に静かに滴り落ちていた。

 めぐみも絶叫を上げてステファニーを抱き締めた。

 勉の絶叫が校舎に鳴り響いた。


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