83話:円弧
前にも書きましたが、作者は戦闘行動と判断は全てキャラに任せています。
倉庫街に竜巻が吹き荒れ、旋風が地面ごと削り砕いた。
──なんだ!?
その破壊螺旋は近くに居た哀れな【バグベア】を巻き込みながら、俺たちへと吹き荒れてきた。
だが狙いは甘い。直撃コースではないな。俺たちを狙ったものじゃなさそうだ。
【イチモンジ】に一撃を入れ、刀で弾かれつつ、その反動を利用。
地面を滑りながら同時にシャードブースターを機動。急速に方向を変えながら暴風から逃れた。
「なん、だこりゃ!!??」
シュラも驚いている。お前もかよ。
どうやらあちらの"権能"による攻撃では無いらしい。
ハンサムか、もう一機暴れ回ってる海賊機のどちらかか定かじゃないが──
どちらかが発生させたのだろう。多分ハンサムの背負ってた装備かな。
軽量機であるこちらは回避することが出来たが、あちらは逃れきれなかった。
たとえどれだけ脚力が速度があろうとも【イチモンジ】は重量機だ。
どうしても動作のたびに踏み込み分のラグがあり、素早い退避はできないのだろう。
そして攻撃を防御した直後だ。吹き荒れる防風と瓦礫の渦の範囲から逃げ出す隙はなかった。
分厚い装甲と強力なフィールド効果からしてダメージは無いが、動きは完全に止まった。
──好機!
防戦一方だったこちらに攻撃の隙がやっと訪れた。
近接攻撃では重量差で弾き飛ばされ、連撃をする暇は無かった。
だが、【サークル・ザンバー】は近づかずとも重量級を"切り倒せる"。
──そろそろ本気で遊ぼうぜ【サークル・ザンバー】。
俺はジェネレータの奥底に込みに行き、微細なコントロールを奪いに行った。
循環液を通り、機体のジェネレータ、その心臓へとアクセスする。
この機体の内なる声を俺は聞き──
いいよ〜、使いな〜。軽っ。だって使ってくれるだけで嬉しいし、まともに使えたの君で3人目だし〜。難儀だなぁ、じゃ指先まで使わせて貰うぜ。好きにして〜、あと足も使えるようにしときなよ〜。
掌握。
これから相当微細な操作を要求される。その際のタイムラグを消したかった。
しかし、操作難易度が高すぎて使えるやつ居なかったのか。不憫なやつだ。設計者を呪え。
さて、俺の思いつきを実行させてもらおう。
両腕にエネルギーを回し、"短く"ワイヤーを射出。
思えば、下手に射程が長いチャクラムスロワーの機構が俺と相性が良くなかった。
冗長な射程により攻撃の間隔が広く、思ったよりその攻撃力を発揮出来なかったと思っている。
だが、腕に張り付いているエネルギーブレードとして扱うには短すぎる。
張り付くような超近接距離か、攻撃を防ぐ盾代わりの防御にしか使えない。
殴り掛かるような近接戦か、撃ち合いに近い半端な中距離での戦いを要求され続けた。
威力だけは高いが、どちらの戦い方でも有利に戦える訳では無い半端な機体。
ならばその半端さを生かした、折衷案だ。
俺は腕を前へ伸ばし、ワイヤーを指に絡めた。
その指先と手首でスナップし、ワイヤーはぐるりと回転した。
それを加速させ、指と手首を中心に光輪が回る。
光輪は紐に繋がれたおもちゃのように、円の軌道を軽快に描き廻った。
「うぉ──なんだそりゃ!?」
──お前を倒すために思いついた全身全霊の悪ふざけだよ。
適当に名付けて──"エネルギーヨーヨー"とでもしておこう。
光輪に遠心力を載せたまま右側の弧を投擲。ワイヤー機構を緩め射程を伸ばす。
エネルギーの刃が足を止めている【イチモンジ】に直撃した。
「ぐあぁぁ!?」
腕を引っ張り即座に回収。
結構良い一撃が入ったが、浅いな。
エネルギー調整を失敗している。もっと出して良さそうだ。
指先と、エネルギー出力の調整関連の制御は俺の能力で掌握している。
コンソール操作では成し遂げられない微細な制御を、感覚による大雑把な調整を可能にした。
俺の手元に来る時は刃を薄め、投げた時に爆発的に放出させた。
引く右指とは逆に左を投擲。
「うぉ、マジか! ちょ! うおおおお!!!」
二撃目はシュラが刀で防御する。あの刀も折れない。相当良い加工をしているのだろう。
閃光が迸り、光輪は弾き飛ばされ──それを指先の動きで即座に回収した。
そして、回収動作と共に右の弧を投擲。
シュラが防御。弾け飛び、光輪を回収。
その動作と連動し、逆側の左を投擲。
弾き飛ばされ、回収。連動して右の光輪を投擲。
「う、お、おおおおおおおお!!!!」
攻撃を左右に交互投射することで、遠心力が乗ったリズミカルな攻撃を繰り出し続けた。
投げて投げて投げて投げて投げて投げた。
弾かれて弾かれて弾かれて弾かれて。
動きに慣れたな。今だ。
指と手首のスナップをほんの少し変え、肘を引いた。
光輪を軌道が激変する。防御のタイミングを逃した【イチモンジ】の肩口へと命中させた。
「ぐああああ!」
やけに強固な対エネルギー防御力だ。今の一撃もそこまで有効打になっていないだろう。
恐ろしく頑丈だが、騎竜の制御システム上中身へのダメージもある。無駄にはならない。
光輪を回収。出来うる限りここまま連撃を続けて削り続ける──!
「さ、せ、る、かぁぁぁ!」
ようやく崩れた瓦礫の山から解放されたシュラは、回避と共に機体を横に疾駆させた。
正面から突っ込んでも攻撃回数が増えるだけと判断したのだろう。
こちらの不手際を狙っているのか、隙を見せるまで回避しながら距離を維持し続けていた。
その優れた身体能力を反映した柔軟な"五肢"で倉庫街の壁を使い円を描くように、逃げ続けた。
だが、掌握した指先はワイヤーの操作を失敗することは無い。
俺達は一切ミスをすることなく、"エネルギーヨーヨー"の投擲を繰り出し続けシュラを狙った。
シュラが駆る【イチモンジ】は自慢の"五肢"で倉庫街の壁を蹴りながら駆け抜けた。
その竜騎兵は、光輪がぶち当たりガラガラと瓦礫に変わっていく倉庫街を全速で疾駆した。
「今か!!!」
数手程の攻撃を繰り返した後、こちらの攻撃の遅れに気がついたのか、一瞬の方向転換。
そして、こちらの連撃の隙間を見切り、左右の切り替えのタイミングで吶喊してきた。
重量機である【イチモンジ】がリング状港湾の脆い床面を踏み砕きながら爆速で接近してきた。
その口から重い咆哮が響き、正確無比な刀の振り下ろしが煌めいた。
「っっっッシャアアアア!!」
だがなぁ。
お前。まだ若いな。どう見てもブラフだろ。
「ッッッ!!」
回収動作をしたように見せた光輪を、そのまま弧を描くように回転させ再攻撃。
そして突撃に合わせて逆側の光輪も同時に投げつけた。
「ガアアアアア!!!!」
両腕に接続されている光輪が同時に直撃し、光刃の奔流が閃光を放ち、夜を鮮やかに照らした。
二枚の光輪が直撃した【イチモンジ】は、派手に吹き飛び瓦礫の山へ激突した。
もくもくと瓦礫の砂煙が撒き散らされ、視認できなくなったが、相当の手傷は負ったはずだ。
攻撃動作の最中だったため、カウンターのように無防備に直撃したのをこの目で見た。
あの異様に高いエネルギー防御力からするとそれでも中身は無事だろうが──
今の衝撃は、どれだけ防御力が高くとも、内装まで貫通したダメージが入ったはずだ。
これで再起不能になってくれればいいんだが──
「へ、へへへ。ははははははははは! すげぇ、すげぇよ!」
──おいおい、マジで頑丈だな。
シュラと【イチモンジ】は、今の光輪の一撃に耐えたらしい。
ちょっと信じられないくらいのエネルギー防御性能だ。どういうカラクリしているんだ。
「ははは、ダメだ。こりゃ、"今のままだと"勝てねぇ」
砂煙に刀の影が見える。
しかし、そのシルエットを正確には捉えられないが、不可思議なものが映っていた。
刀の"柄"の部分が、外側に見える。
刃の部分を持っている? 何をする気だ?
薄い砂埃が晴れた。その先に見えた──【イチモンジ】は──
「こりゃ、"腹を切るしかねぇ"や」
自らの手で、腹部に刃を突き刺し、背中まで貫通させた。
超電磁ヨーヨー!!!
なんかカラスが突然、超電磁ヨーヨーしだしたんだけど!!??(作者が驚いている)
あとシュラが突然、自分に刃突き立てたんだけど!?!?(作者が驚いている)




