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塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる  作者: 梅酒わいん
mission9:水上都市外敵排除

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80話:連携

 この作品は一週間に一回の投稿を目指しています(開き直り)

 最近絵描きが楽しくて……&お仕事と新人教育が忙しくて……という言い訳をします。

 三機の騎竜型(ドラグーン)は各々が好き勝手に動いたように見えた。

 だが、それは明確な意図を持っての機動であり、連携の練度の高さを俺達に知らしめた。

 膂力に優れた刀使いの赤い大型騎竜(ドラグーン)を中心に伝統的な武装を揃えた二機が両横へ展開。

 その二機は挙動と共に、物理ブレードをびゅんびゅんと軽く振るい、嫌な角度で盾を構えた。

 そこからはどの方向からの攻撃にも即応し、そのまま反撃行動を繰り出せる意図を示していた。


 今の緩やかな挙動だけで、乗り手の技量が垣間見える。

 豪刀使いの赤い大型機は機動が直線的だ。練度はそこそこだが明らかに若い。

 才覚を中心にして動かしているのだろう。ヒルダと似たような動きだな。

 だが、両横の二機は、四肢と尾、剣と盾、これらの位置を常に細かく動かして牽制していた。

 これだけで俺達へ安易な踏み込みを許さなかった。無防備に近づくのは危険すぎる。


 両横の二機はそれぞれ見た目が判別できないながらも、相当の手練だ。



「ちっ、僕たちを動かさせないつもりか」

「おおっと、こちらの武器は熟知しているようだな。唆るね」


 セドリックも、ハンサムもどうやら相手の技量を把握できたらしい。

 だがセドリックが経験値の差が出ているのか、少し距離を見計らいそこねている。

 かなり【エスクワイア】に不利な位置だ。近接戦にも射撃戦にも向かない位置に居るな。

 そしてハンサムとは連携が上手く取れそうにはなさそうだ。

 俺はハンサムの技量を知らず、得意な行動を把握できていないからだ。

 自由にさせておくしかないだろう。命令するような立場でも無いしな。

 そして、俺は機体に不慣れであるため踏み込みを躊躇う。

 これが慣れた【オンボロ】か【クロスガード】ならば強襲も出来ただろう。

 だが、流石に慣熟していない【サークル・ザンバー】ではまだ無茶が出来る自信が無い。



 まずいな、刃を交わす前に練度と連携の二点で遥かに劣勢だ。

 俺は判断を下した。



 ──まずは射撃戦! 距離空けて削れ!



 そう、二人に通達し、俺は【サークル・ザンバー】を後退させ距離を離そうと後方へ──




「させんよ」




 音も構えも挙動も無かった。

 しかし、結果としてそれは既に空中に飛来していた。



 投擲用ナイフ。



 先ほど地面に突き刺さっていたものと同様の武器が、既に射出されていた。

 俺の後退機動に追従するかのような見事な軌道で、このままではコックピットに直撃する。



 驚愕。完全な無拍子の投擲。完全に虚を突かれた。

 思考が真っ白になり、スローモーションのように自分に命中する軌道を眺める羽目になった。



 俺の脳が現状の状況の把握を強要したが、飛来物の形を認識する情報処理だけでも一杯だった。

 このままでは命中するしかなかったが──



 しかし俺の指は膨大な経験値と勘と感覚だけで、反射的に動いてくれた。



 後退機動から急激に真横へのブースター噴射。

 身体をひねり直撃軌道を逸らし──


 鋭い衝撃。

 【サークル・ザンバー】の軽い体躯がその一撃で弾き飛ばされる。

 肩部に被弾したそれは、装甲を盛大に破砕した。

 だが、内装部分には命中せず、後方に突き抜け倉庫街の壁面にぶち当たり刺さった。



 なんとか体勢を崩さず着地──



「っっせいやぁァ!」



 一瞬で距離を詰めていた赤い大型騎竜(ドラグーン)の豪刀が既に振り下ろされ掛けていた。

 連携攻撃。射撃で体勢を崩した相手への強撃!


 だが、こっちの方は予想できる範疇の行動だ。

 戦闘なんてものは何も分からない時に畳み掛けるのが一番だからだ。



 ──やられてたまるかよ!



 投擲用ナイフ回避と同時に起動していたビームチャクラムの刃を豪刀にぶつけた。



 凄まじい閃光。対レーザーコーティングで弾け飛ぶ光が戦場を照らした。

 重量も膂力も完全にあちらのほうが上だ。

 だから斥力との反発で完全に敗北し、おもちゃのボールのように跳ね飛ばされた。

 だが【サークル・ザンバー】の優秀な出力は、強撃の防御を成功させ無傷で切り抜けられた。


 俺を追撃しようと赤い大型機が、二の太刀を浴びせまいと体勢を立て直し──



「がああ!」



 立て直したその隙に攻撃を叩き込んだ。


 悪いが、真似させてもらったぜ。

 なんたってチャクラムスロワー兼用の機構だからな。

 "ビームの刃をその場に置く"なんて芸当は軽く出来る。


 先程の一撃で大幅に威力は減衰したが──

 出力特化機である【サークルザンバー】自慢のビームチャクラムの威力を味わってくれ。



 赤い大型騎竜(ドラグーン)は、大きく前面装甲を切り裂かれたが、致命的なダメージには至らなかった。

 威力減衰もあるが、純粋に装甲が厚い。大型近接機にふさわしい優秀な防御力だ。


「っやるじゃねぇか【天使】! 避けるどころか反撃されるなんて思いもしなかったぜ! 」


 ──そっちこそ見事な連携じゃねえか。うちの新人に見習わせたいレベルの練度だ。



 俺は敵を褒め称えた。ちょっと今のは真似は難しそうだ。

 防御面はともかくヒルダの攻撃面はまだ雑だからな──

 そう思いつつも、一拍ほど呼吸を整えられそうなタイミングが訪れた。

 状況観察。最低でもセドリックたちの位置を確認したい。


「っち! 強い! だが【エスクワイア】を簡単に貫けると思うな!」

「やはり若いな騎士殿。意気は見事。しかし気迫に技量が追いついておらぬぞ!」


 セドリックは近接戦を初めてるな。【エスクワイア】に敵機に張り付かれている。

 リザードマンの足さばきと尾さばきに若干翻弄され気味だな。

 セドリックの【エスクワイア】は中距離を維持しつつ戦うのが最もベストな位置だ。

 しかし、相手はそれを理解しているのか、張り付くような位置での戦闘を強要されていた。

 技量は不利。だがビームシールドで身体を覆った【エスクワイア】を貫くのは容易ではない。

 物理ブレードの一撃も軽く装甲を削る程度でしかダメージを与えられていないようだ。


 相性はお互いに悪い。

 持久力と技量があるリザードマンが勝つか、一撃は重いセドリックが勝つかわからない状況だ。

 展開時間切れを待つか、強引な突破を狙うかは不明だが、少なくとも当分敗北はなさそうだ。

 相手の意図はわからないが、技量差があるにも関わらず充分戦いは成立していた。


「ははは! 二次会の場でまさか美女とダンスを踊れるとは僥倖だ! 楽しくなってきたぜ!」

「醜女では無いと自認しているが、美女かは定かではないぞ」


 ハンサム側もリザードマンと殴り合っているな。

 機械槍を鈍器のように扱い、敵機の盾に叩きつけている。重量差で優勢かな。

 水陸両用(ダイバー)型は地上での機動力に問題を抱えている場合が殆どだ。

 水中を想定した機体群であり、地上での戦闘距離を自由に選ぶ機動性は搭載されていない。

 逆に言えば地上でも戦うことは想定されているため、それは乗り手の技量に依存している。

 ハンサムは地上での貿易を行う船長であり、これらに難なく対応していた。


 そして、近接戦闘に不備はない。そりゃあ当然だろう。

 "あんな武器"を標準装備した海賊略奪同盟パイレーツ・アライアンスは近接戦を重要視している。

 どれだけ機体が重かろうと、いや。"水の抵抗で全くと言っていいほど機体が動けなくても戦える"のが海賊略奪同盟パイレーツ・アライアンス水陸両用(ダイバー)乗り達だ。

 それで言えばこの状況は重い機体ですら軽やかに動くように感じるのだろう。


 リザードマン達の強力な近接戦闘を見事に捌きつつ、重量武器での反撃を繰り出していた。


 一進一退の攻防。こちらも決着もそう付きそうにはないな。



 他の箇所でもバラバラバラと射撃音──いや破壊音が鳴り響き、戦いは継続していた。

 誰か戦ってんのかな。残った海賊略奪同盟パイレーツ・アライアンスの一機かな。


 まぁ、この突然現れたリザードマン達とのガチバトルを放棄出来ないから正直助かる。

 今まで戦っていた【バグベア】たちのことは完全に放置しているからな。

 好き放題暴れまわってくれ。


 刀を構え直した赤い大型騎竜(ドラグーン)は少し体勢を緩め俺に声がけしてきた。



「さて、そういや名乗りも何もあげてなかったな。失念してたぜ。

 俺は東の大密林の炎の氏族の子、産まれてからシュラと名乗らせて貰っている。

 駆る騎竜は二つの心臓を持つ【イチモンジ】。見ての通り刀しか振るえねぇ最高の騎竜だ」



 ──名乗っていいのか?



「そりゃあ【天使】よぉ、夜襲なんだから当然──」



 一拍の静寂が訪れた。



「ダメじゃん。聞かなかったことにしてくれ」



 締まらねぇなぁ。まぁいいか。

 さっきからなんで俺を【天使】と呼ぶのか、経緯を知りたいところだが──



 ──名乗らせてもらうぜ。俺の名はカラスだ。これからはそう呼べ若武者。



「へへっ。答えてくれて嬉しいぜ【天使】! いや、カラスよぉ! 」



踏み込み。強烈な身体能力で滑るようにまっすぐ俺へと駆けだした。

風のように疾駆する赤い大型騎竜(ドラグーン)はその名の通り、一直線に俺達へ切り込んできた。

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