78話:擁護
雑すぎる無双というか作業の事後説明です。
本当なら毎回このくらいのペースで投稿したいですね。
【バグベア】は信じられないくらい弱かった。
現状、俺達の眼の前に動いている機体はいない。
会場の正門側から来た50機は全て戦闘不能か、湖に叩き落として浮かんでいる。
正直、今回の勝因としては【サークル・ザンバー】が想像の数倍強かったのが大きい。
一応敵を擁護しておこう。
実はそこまで楽勝というほどではなかった。そこそこに対処が面倒であったのは事実だ。
面倒程度で脅威とあまり感じなかったとも言えるのは哀しいところだが──
相手も思考する知的生命体だ。愚直に射撃戦をダラダラとしていたわけではない。
小型機に対しては面制圧か重量で押しつぶして対処するのがセオリーだ。
それを実行するため、勇猛な数人ほどが【サークル・ザンバー】へと近接戦に挑みにきた。
ショットガン等の面制圧武器も近づかなければ充分な威力を発揮できない。
距離を詰めるのは正しい行動だろう。
だが、【サークル・ザンバー】の光輪は近接兵装としても利用出来る。
腕に取り付けたまま起動することで、手の甲を覆う短いレーザーブレードとして機能した。
設置面が横になっているため独特の角度でしか振るえず、少し使い辛いが、威力は充分だ。
ノロマな【バグベア】の動きを咎めるように先手を取る。
【サークル・ザンバー】の軽快な足さばきの機動で、逆に距離をこちらから詰めた。
敵も即座に対応してギア用の斧を振るってきたが、大きすぎるそれは充分な速度で振るえない。
振りかぶったあたりでこちらから光輪の刃を押し当て、腕を切り飛ばした。
コックピット以外の強度は高くない。瞬時に【バグベア】の間を滑るように切り刻んでいった。
まずは腕部を攻撃し、攻撃力を喪失させる。これで脅威度が格段に下がる。
そして再び元の位置に戻るように疾駆する際に足を切り飛ばす。
機動力も喪失させることで、体当たりも不可能になった。これで戦闘不能だ。
俊敏な【サークル・ザンバー】の挙動は、瞬く間に敵機をバラバラにしていった。
一撃で戦闘不能になる【バグベア】の脆さに問題はある。
だが、高出力の光輪を防ぐのは通常機でも困難だろう。
【サークル・ザンバー】の再評価をしたい。
これは「近接がちょっと出来る射撃機」ではなく「射撃がちょっと出来る近接機」だ。
この違いは俺の意識としてはかなり重要だ。
戦輪投射機による投擲がメインの行動ではなく、牽制を兼ねた副兵装であるという事実は大きい。
その点を考えると、武装の使い勝手に問題があるが全ての性能が高水準で纏まっている。
距離を詰める前に"飛ぶ斬撃"を繰り出すことが出来る近接機と考えると、悪くない機体だ。
ちょっと常人には武装が上手く使えないという哀しい欠点はあるが──
それ以外の面はすべて優秀だと評価できそうだ。
そう思い込もう。うん。
いや、本当に使いづらいんだよ戦輪投射機。
そう思わないとやってられん。なんだよこれ。癖が強すぎる。
光輪の威力は高いが、攻撃軌道の制御がひたすら困難だ。
直線的な投射と、回収時の軌道変更くらいは出来るが、自由自在に扱うのは難しい。
一応、5射目くらいでだいぶ慣れて、普通に投射する分には一応なんとかなる。
だが、以前見たあの変幻自在の軌道変化はどうやってるのかマジでわからない。
機動と同時に扱うのすら難しいんだぞ!?
スナイパーネキの技量はやっぱりどこかおかしい。普段使わないのによくアレだけ扱えたな。
さて、戦闘の過程に話を戻そう。
近接してきた【バグベア】をバラバラにした俺は、後続の対処を継続した。
そして、流石に攻撃間隔から射撃戦が分が悪いと思い始めていた。
いくら威力が頼りなかろうと、こちらも所詮小型機だ。ダメージの蓄積は避けたい。
だが、こちらも機動前提の戦闘は、武装の問題と足場の問題であまり選択したくはなかった。
建物の脆さとリング型の湾港の狭さから、戦場での機動にかなり制約がある状況だった。
建物を利用したら足場が崩れ、水場近くで足を踏み外せば水没する恐れがあるからだ。
どうしようかと考えた。そして周囲を見渡して、俺の頭に閃きが走った。
──いいことを考えた。凄い頑丈な、"盾"があるじゃないか。と。
俺は四肢をバラバラにして機動力を失った【バグベア】のコックピットに近づき、持ち上げた。
そして、残骸をかき集め地面に立てかけて、射撃戦の"盾"にした。
頑丈な【バグベア】のコックピットは軽い上に竜型熱線砲の直撃に耐える。
【サークル・ザンバー】の膂力では持ち運ぶのは難しいが──
設置盾として利用するならば充分な強度を誇る極めて堅牢なオブジェクトだ。
それを構えたあたりで敵後続からの射撃がバカスカと撃ち込まれて来た。
だが、この強靭な盾は見事な防弾性能を発揮してくれた。
──中から何度か悲鳴が聞こえた気がしたが──無視して、後続との射撃戦を繰り返し続けた。
たまに接近しようと試みる愚かな勇者たちを、高速近接の速度で切り刻み、再度射撃戦に移行。
以降、これを繰り返した。
紆余曲折はあったが、実際にやったことは本当にこれだけである。
ま、増援も居たしな。
「弱すぎないか? 要塞街の一般兵機でも容易く倒せるぞ」
戦いが一段落して、セドリックが話しかけてきた。
射撃戦が硬直したあたりで横から【エスクワイア】で殴りかかってきたのだ。
正直、あまり必要はなかったが、グダグダ戦ってるよりは遥かに楽を出来た。
──【バグベア】と殴り合ったのは流石に初めてだが、本当に弱かったな。
──まぁ、妥当な結果だろ。なにしろ、対ギアを想定した機体じゃない。
──鎧機と戦って勝てる要素はほぼゼロだ。
「なんでだ? シャードジェネレータ搭載基のはずだ。これだけ弱いのはおかしいだろ」
──ああ、理解してないんだな。わかるよ。
──分類としてはAGとして扱われるが、この機体の本質は『バカみたいに硬い重歩兵』だよ。
「はあ?」
──戦闘中だから解説するには時間がかかるな。テオドール卿に教えてもらいたいところだ。
──だけど大体は内部抗争と、工作と、農業と、水利権のための機体だよ。
後日、【バグベア】に関してメイド二人も含めて解説することになった。
こいつらが使われているのは、"強さ"以外を求められていることが挙げられる。
この機体は農業協働連合の政治と生活の事情で用いられることが前提である。
移動農場で工作機械の一部として使用が出来て、水槽を装備して水を運ぶことを想定されていて、水に浮かび、農業協働連合の範囲内のどの地形だろうが運用が可能で、生存性が異常に高く、そして内部抗争で利用しても法的な問題が無い。
湖に近づけば近づくほど、スクラップやゴブリンの襲撃や塔の脅威、他国との折衝は減る。
しかし、水利権と移動農場の位置の奪い合いにおいて隣人との諍いは激化していく。
農場の大湖に近い農場主にとって、もっとも身近な脅威は"隣接した農場主"となるのだ。
だから、必然的に"脅威"に対抗するべく農業協働連合での内戦のルールに則って利用でき、農場主たちが確保しやすい【バグベア】が量産され続けた。
農業協働連合における一般的なAGである【ケンタウロス】は、"脅威に対抗できない"無駄な兵器であり、維持コストがかかる余計な装備でしかない。
そのため、強力なのにも関わらず、防衛騎馬兵団以外での所有数が激減してしまっている。
「ほぼ内ゲバのせいとは聞いてるな。無駄だ」
そうだよ、マジモンの無駄だ。
「せめて【バルワーク】を要塞街から仕入れれば済むだろうに」
【ハッチポッチ】原型機の【バルワーク】とか逆に高くつくだろ。
更新がほぼ終わって残存機体が少ないんじゃなかったか?
ちなみに【バグベア】の値段は【ハッチポッチ】より少し安いくらいらしいぞ。
「戦闘力から考えると高すぎだ、せめて【ケンタウロス】揃えろバカども」
うん、俺もそう思う。【ケンタウロス】のほうが圧倒的に強いのにな──
まぁ傭兵からしたら戦闘力を頻繁に外注することになって、仕事が舞い込む要因になってる。
だから、俺達はここの政治問題は放置させてもらってるのが不文律だ。そっとしておけ。
「他国とは言え、やるせないものがあるな──」
あまりにも情けない他国の惨状を目の当たりにして、セドリックは嘆いた。
Q.どのくらい弱いんですか
A.ラストモンスターのときにセドリックが乗ってた錆びついたライトフレームよりは強い、ハズ。




