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没
アグネスは他者や集団と関わる能力に乏しかった。
友達を作るためには心の理論を理解した振る舞いが社会から要求されるが、アグネスには心の理論が理解できず、社会に適応する上で困難を抱えていた。
心の理論の一つに、互酬性の原理というものがある。何かをもらったら何かをお返ししなければならないという暗黙のルールのことだ。この規則から逸脱する行動を取る人間は、社会から弾き出されていく。このように、心の理論の体系を網羅的に理解しなければ、社会から簡単に弾かれてしまうし、友達を作ることも叶わないのである。
アグネスの人生を賭けた一大プロジェクトとして、心の理論を体系的に理解するように努めるというものがある。アグネスは今、このために生きていると言っても過言ではないのである。
アグネスは、心の理論を理解するために何をするのが近道なのかと考えた。その結果、アイドルになるのが比較的近道なのではないかと結論づけるに至った。アイドルとは、顧客の心を気持ちよくすることでお金を稼ぐビジネスである。心の理論を理解していないアイドルは人気が出なくて苦しむことになる。一方で心の理論に習熟したアイドルは人気が爆発してたくさんお金が稼げるようになるのだ。
アグネスは、アイドルとして活動しながら、心の理論を勉強することにした。




