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「万国のプロレタリアよ……うん?」


目覚めて第一声、マニフェストを唱えようとしたがまだ暗いことに気づいて口上が尻すぼみになる。


照明はどうやって使うのだろうか。


「知恵・戦略・工芸の女神アテナよ、マイページを寄越せ。ブヌテュリニイ・パスパルト!」


照明タブを開く。


従量課金制とか定額プランを契約すると照明を使用できる。


支払い先は領主一族。つまりエーレンシュタイン家が管理しているであろう銀行口座に振り込む。


この都市は領主一族の管理する礎によって構築されている。礎の魔法によって、この物件から付属の照明まで生成されているので、これらを使用する際には領主一族にみかじめ料を納めなくてはならない。


資本主義の包摂ならぬ礎の包摂によって、都市住民は生かされているのだ。


AR表示されるメニュー欄から照明を選択し、従量課金の契約を行う。


メニュー欄で照明を付けたり消したりしてみる。


次に、壁に設置されたスウィッチを何度か切り替えてみる。


両方とも問題なく動作している。


「なんでい。なんかあったのかい、アンちゃん」


ヤァプが目を覚ました。


昨日の橋での闘争にて、ヤァプはマルクスの家に居候することが決まったのだ。


「すまない、起こしてしまったようだな。照明を使うのが初めてでね。動作確認をしていたんだ」


「照明使うのが初めてたぁ……都市に来るのが初めてだったりすんのか?」


「あぁ、そんなところだ」


私は話を変える。


「同志ヤァプ、これからどうするつもりだ」


「そうだなぁ。働いて生活を再建しなきゃならんのだろうが、俺は一度死のうとした身だしなぁ。身が入らねぇってもんよ」


「確かに。労働によって自殺しようと試みたのに、再び労働に従事しようとはならないだろう。では労働から足を洗えばいいだろう」


「なんだって?」


「労働が苦しくて仕方ないのだろう? ならば労働以外の方法で貨幣を稼げばいい。正確には、疎外された労働ではなく疎外されない労働を探して、それに従事すればいいということだ」


「どういうことだってばよ……」


「疎外の要件は4つだ。労働の生産物からの疎外、生産過程からの疎外、人間性からの疎外、他者からの疎外。これらを上手いことハズしている仕事を我々は探さなければならない」


「すまねぇアンちゃん。俺にはどうもしっくりこねぇんだが、俺みたいな社会不適合者が、そんな贅沢な労働をさせてもらえるもんなのかい?」


「今のままでは無理だ。だが、方法はある」


私は話を続ける。


「まずは生活を立脚させることだ。そして労働の合間に、自身の生産能力・生産装置を獲得する努力を行わなければならない」


「その努力が実ったとき、晴れて疎外された労働から解放されるのだ。道のりは遠く、数年かかることは必至だが、それでも取り組む価値は大いにある」


「アンちゃん。それなら俺は物語を書きたいぜ。物語を生産する能力やら装置やらを獲得できれば、アンちゃんの言う労働の疎外からも逃げられるんじゃねぇかい」


「良い考えだ。同志ヤァプは物語を作る事業家を目指すのが良いだろう」


「おぉ。アンちゃん、俺頑張るぜ!」


「あぁ。疎外された労働からの解放を目指して、共に精進しよう」


私は同志ヤァプを伴って、ギナジウムへと出勤した。

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