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お父さんから大体の位置を教えてもらい、アメリカ北部へと向かった。もちろん以心伝心の力を使っている。その力は素晴らしい。ヒトリと五感の共有が出来る。だからこんなこともできるのだ。今、僕はヒトリが見ているものを見ている。それは、お父さんの船にあるモニタースクリーンで、それにより、方向のズレを直しながら飛行している。凄い、本当に凄い。今の僕に出来ないものはない。まさに無敵だ。
「艦長大変です」
「どうした」
「例の少年が、コロニーに向かっています」
「何!」
不味い。何かあったら我々の計画が、未来が……、水泡に帰す。
「直ちに降下。それとコロニーとの通信回線を開け」
ドーム型の建物の上空に到着すると、中でも小さめのドームの上部が開いていくのが見えた。その意図を察し、ドームの中へ入って行った。
中に入り床に立つと、横にある人が通れるほどの小さなドアが開き、数名の人が出てきた。
そのうちの一人が話しかけたくるのだが分からない。今の僕でも出来ないことがあった。まさか言葉が通じないとは……。そう言えばそうだよな。この世界に来てから不思議に思わなかったが、今にして思えば、何処へ行っても日本語が通じるというのも変な話だ。
相手はどうやら英語を話しているようだ。それをヒトリが日本語に訳してくれるのだが僕は話せない。しょうがないから、
「come also(また来る)」と言って、転移した。
お父さんを連れて行こうとすると、茜も行きたいと言い出した。僕が英語だよと言うと、私、日常会話ならできるよ、当然よね、みたいな態度を取るので、結局連れて行くことになった。
転移して元の場所に現れると、二人がそこにいて、僕たちを案内してくれた。
大きなテーブルに僕を挟んで右手側がお父さん、左手側が茜が座った。その反対側には、白髭を蓄えた老齢の人を中心に五人が座る。そして自己紹介もそこそこに、お父さんが切り出した。
「君たちはここで何をしている」
「私たちには新しいすみかが必要なんだ」
「ほう、それで侵略か」
「なに、貴様何様だ!!」
向かって右端に座る如何にもといったでかい男が立ち上がり叫んだ。それをお父さんは見向きもしないで前にいる老齢の人に、
「君たちはこの星を捨て逃げた人間だ。今更この地をどうにかしようとするのは虫が良すぎる。この地は、この地で生まれこの地で息づいている者たちのものだ」
「確かにそうかも知れない。だがもう1万年以上も前のことだ。そのことを知るものはもういない」
白髭を蓄えた老齢の人が静かに言った。
「そんな事はない。少なくともここに3人いる。私たちはあの惨事を体験した人間だ」
「そんなバカな」
またあのデカブツが喚いた。それを老齢の人が手で制し、「コールドスリープ」と、呟く。
「そうだ。そうして私たちは生き抜いた。だが、ほとんどの人間は国に裏切られ死んでいった……。私の家族も、知人も、みんな死んだ。私はそれが許せない」
お父さんは感情的になっている。その憤りは分かるが、今は良くない。僕はお父さんの肩にそっと手を置き、振り向いた目に目線を合わせる。それで分かったようで、お父さんは軽く頷き、一つ大きく息を吸い吐いた。
「そのことを今更どうこう言っても何も出来ない。虫のいい話かも知れないがどうか、私たちを難民だと思って受け入れてはくれないだろうか」
白髭の老齢の人がテーブルに頭がつきそうなほど下げる。それに続き周りの人たちも頭を下げる。ただ1人でかい男は頭を下げなかったが、隣の人に小突かれ渋々頭を下げた。
僕はそっとお父さんの背中を叩いた。




