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幸せは、その手の中に  作者: 散華にゃんにゃん
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第五章 二つ目の器 1

 エルシーは話を終え、ボウルに注がれた水を猫らしく舌を使って飲んでいる。

 天力を用いて発声しているので、のどが渇いたというわけでは無く、器となった黒猫の為に水分補給をしているのだ。


「その、リルちゃんって女の子はどうなったの?」

 白花が質問をすると、エルシーではなく、片山が答えた。

「あんた……話聞いてたの? 天使達と一緒に消えちゃったって言ってたじゃん……」

 エルシーが顔を上げる。

「ルミアって子の言ってた『神様の世界』に行ったのか、消滅してしまったのかはわからないけど」

 白花はそれ以上聞き返さなかった。エルシーがそう言うのなら、余計な詮索はしまいと疑念を胸にしまった。


 今度は、片山がエルシーに質問した。

「それよりさ、瞳がその天力に覚醒したにしては、話に出てきた『リル』って子や『ルミア』って子に比べてめっちゃ弱そうなんだけど?」

「確かに。私、弱そう」

 白花が自らの両手を見つめる。

「これは半分憶測だけど、あの赤い結晶体が落ちて来た時、結晶体は地球の一部と同化した、もしくは変質させたんだと思う。それに巻き込まれたリルとルミアはその莫大な天力の一端をその身に宿した。今世界中で生まれている能力者は、赤い結晶から放たれた天力に当てられて覚醒したって違いがあるんだと思う」

 エルシーの返答の中に、さらなる疑問を抱いた片山が聞く。

「『半分』っていうのは?」

「さっき話した出来事の後、ヨーロッパに数人だけ、能力者が現れたの」

「でも私達、そんな話歴史の授業でも聞いたこと無いよ? 内緒にされてきたのかな?」


 白花の意見はもっともだ。現代に生きる全人類は、エルシーの話を聞くまで誰一人、天力の存在を知らなかったのだから。

 しかし、エルシーの口から、歴史の教科書に載っている単語が出てきた。

「『魔女狩り』って知ってる? あの後天力に覚醒した能力者は、その力の使い方がわからず、みんな『魔女』として処刑されたの。私は、見てることしかできなかった……」

 悲しそうな声で話すエルシーに、白花が声を掛ける。

「エルシーちゃんのせいじゃ無いよ! 可哀想だけど……。悪いのは全部天使だよ!」

 慰めにはなっていないのだが、慰めようという気持ちはエルシーに伝わった。

「ありがとう、瞳ちゃん」

 エルシーは少し笑っていた。


「口を挟むようで悪いんだけど……」

「何? 都ちゃん」

「あたしもだけど、天力に覚醒していない人間がいるのは何で?」

 少し不満そうな片山の問いに、エルシーが答える。

「厳密にはわからないけど、初めて天力の影響を受けた時に、何か『強い意思』みたいな物を持っているか、いないかの違いかな?」

「それじゃあ、あたしが空っぽな人間みたいじゃんか……」

 明らかに不満そうな顔をする片山に、エルシーは慌てた。

「ごめんごめん! そんなつもりじゃ無いんだよ! 都ちゃんだってこれから天力に目覚める可能性はあるよ! というか、目覚めても良いこと無いと思うけど……」

「言われてみれば、天使って化け物と戦うのはいやだな……。不思議な力ってのにちょっと憧れちゃって、こっちこそごめん」


 二人の話を聞いて、暗い顔したのは白花だ。

「私……、戦わなくちゃいけないんだね……」

 片山が白花の背中を叩く。

「大丈夫だって、瞳! 噂の『モンゴルの女神』がいるじゃん! …………ん?」

 そう言いながら、片山は首を傾げた。続けて、新たな疑問を投げかける。


「エルシー。あの『モンゴルの女神』ってのは、リルちゃんと同じ……?」

 片山が次の言葉を発する前に、エルシーが答える。

「そうだよ。それも、五百年前の数倍の天力を秘めた赤い結晶体によって能力者へと変えられた、今現在、天使に対抗できる唯一の人間」


 白花と片山は、エルシーの後ろめたい気持ちには気が付かなかった。


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