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5.その日の夜
サマリナの話を聞き、サルモネイッサの精魂開発研究所から帰った昇には一つの大きな事件が待っていた。
「三人一緒の部屋?」
今日からこの地で宿泊する事になっている路地裏の小さなホテルの受付で昇は驚きの声を上げた。
「そうよ」とオリルは事もなげに言う。
「いや、おかしいでしょ。男女一緒の部屋って。ねえ?」
章子に同意を求めるが章子もどうやらオリルと同じ意見らしい。
「オリルの国がそれでいいって言うならそれでいいんじゃない? それに昇くんとはもう一緒の部屋で一夜を過ごしたこともある仲だし」
「それは最初だけでしょ。船の時もみんな男女別々だったじゃん」
「お金の問題よ。節約できるものは節約しないと」
「節約も大切だけど節操も大切にしてよ」
「大丈夫よ」
「何が」
「昇が何かしたら……」
「したら?」
「焼いて灰にしてあげる」
オリルの表情はにこやかだったがその目は笑っていなかった。