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幻想世界の放浪者  作者: 紫貴
第十二章
115/122

12-3

 頂いたコメントからキャラクター設定を作る事にしました。出来る限りネタバレしない範囲でキャラクターの設定を公開しようと思います。ただ、自分で読み直したりなど時間が掛かると思うので、今すぐ投稿という事ではありません。


 四大ギルドに所属するPLは実力者揃いだ。だが、ギルドメンバー全員が前線組として活動している訳ではなく、前線には四大ギルド以外のギルドやソロPLにパーティーがいる。

 例えばキリタニさん達対サイバーテロ課の人達だ。後からエノクオンラインに来た彼らはゲームとしてのエノクオンラインに興味は無く、純然に囚われたPL達を現実世界に返そうとしている。一部それだけではないが、あの人らも仕事なので仕方がない。

 それはともかく、キリタニさん達をはじめ四大ギルド以外に活躍するPLは沢山いるという話だ。

 特にまだ未開拓、前線クラスでないと死にかける場所でのクエストを彼らは四大ギルドよりも先に行っている事が多い。それは四大ギルドはどれもエノクオンライン脱出を掲げているので不用意な事は出来ず、つい慎重になる為その足は緩やかだ。

 まあ、〈鈴蘭の草原〉は完全な内輪のみのメンバーで腰が軽く、俺を除いた連中は頭おかしいからバリバリ前線を突っ走っている。アヤネ? アヤネはほら、アレだから。ああ見えてアレだから。第一印象と中身とのギャップがある点で言えばマステマと同類だから。

 この南東地方にある国の首都であるオルテガで発生するグランドクエストを現在最も進めているのは四大ギルドではなく、一パーティーほどの人数しかいない小さなギルドらしい。名前は…………まあ、どうでもいいか。

「素直に忘れたと言ったらどうですか?」

「うるせえよ」

 メンバーの数は少ないがその実力は確かで、〈オリンポス騎士団〉とも友好的らしい。風の魔王討伐の時にもいたようで、地下に落とされた時も獅子奮迅の動きをしたとか。

「ただの仲良しギルドにしか見えませんが」

「〈ユンクティオ〉だって似たようなものだろ」

「あそこは類友の巣窟でしょう」

 どうしよう。否定出来ない。

「それよりも聞きたいのだけど、どうして私達はストーカー行為をしなくちゃいけないのよ」

「そりゃあ、お前。城に入る為だろ」

 双眼鏡から目を離して、単眼の望遠鏡で覗き行為を働いているシーラに振り返る。

「前に来た時は警備が厳しくて入れなかったからな。グランドクエストは金の王国の姫も出てくるらしいし、あいつらの後ろをついて行けば城に入れるかもしれないだろ」

「自分でクエストを受ける気はないのね」

「無い」

 正直に答えたというのにシーラから冷たい視線が照射される。男のガンは反骨心がくすぐられるのに、女のこのクズを見る目は何故こうも寒気がするのだろう。

 俺はシーラの視線を誤魔化す為に、テーブルの上に置いたパンを掴んで食べ始める。

 魔族に実効支配されているオルテガではPLはある程度自由に行動できるが、至る場所で魔族が見張っている。エコンラカも同じような状況だったが、オルテガには城に人間の王族(王は既に死んで、名ばかりながら代表はその娘がやっているらしい)がいるからか更に厳重に感じる。

「クゥ様が暴れたせいもあるでしょう。PLが魔族から賞金首認定されるなど、ある意味名誉ですね」

「それの一体どこが名誉なんだよ」

 前に、腹いせで魔族側の建物に火を放った事がある。そのせいなのだろうが、戻って来てみたら指名手配されていた。そして賞金額も結構高かった。全然嬉しくねえよ、クソッタレ。

 そのせいで正式な宿に泊まれず、空き家を探してそこを隠れ家にするには骨が折れた。幸い隣近所は人間のNPCなので金を渡して口止めさせる程度で済んだが。

「ひまー」

 部屋の中央ではスライムをトランポリンにしてリュナが跳ねていた。

「こう、バーッて感じでドッカーン的な事したい」

 頭悪そうに擬音を並べるリュナであるが、残念ながら頭が悪いのは事実だ。大人しく部屋に居させるようにするまで苦労した。

「なら私と外でも散歩する?」

「や」

「…………」

 即答で断られたシーラが目に見えて落ち込んだ。うぜぇ。そもそも、他のPLとは明らかに違う姿形をしているリュナが外を出歩けば嫌でも目立つ。アンクやハイドの事もあるのであまり自由にさせてやれない。状況が落ち着いたとしてもこいつ絶対面倒ごとを起こすので目が離せないのは変わらないけどな。

「クゥ、ひまー」

「うっせぇな。シズネがケーキ作ってくれるからそれ食って寝てろ」

「いつの間にそんな事になっていたのでしょうか?」

「置物みたいに壁際に立ってるんだから暇だろう。下に厨房があったから何か適当に--」

 シズネに命令していると、〈気配察知〉が警報を鳴らす。咄嗟にシーラの襟首を掴んで壁を蹴り、窓から離れる。

 直後、窓際の壁が外から破壊されてコンクリートの破片が飛び散る。壁が破壊された瞬間に電気のようなものが見えた。恐らくは雷系の魔法だろう。

 跳び退いた勢いと壁を破壊された際に生じた衝撃で俺とシーラは床に転がり、リュナのスライムにぶつかる。

 弾力のあるスライムは俺達がぶつかった衝撃を受け止め、普通ならば跳ね返すであろうがそのまま俺達を中へ飲み込む。

 内部は粘性などない水の抵抗程度の重みしかなく、すぐに浮上できた。

「邪魔だッ」

 浮上してスライムから顔を出したらリュナの背中があったので腕で払い、それを反動にスライムから跳び出す。

 シーラはスライムの中から出るのに手間取っているようだが気にしてはいられない。俺は見晴らしの良くなった壁際に移動して、攻撃を仕掛けて来た馬鹿野郎の姿を確認する。

「厨二病ッ!」

「ファウストと前に名乗ったでしょう!」

 道を挟んだ向かい側の家屋の屋根に燕尾服にマント、シルクハットで仮面をつけ、先端に宝石が付いた杖を持つアイタタなPLが立っていた。

 こいつら、まさかこんな所にまで追いかけて来たのか。すると、アンクやハイドもいるのか。嫌だなぁ、なんかあいつらが喋ってるだけで疲れるんだよな。

「何か用か? 用なんだな。分かった。帰れ」

「滅茶苦茶言いますね」

 ファウストが肩を竦める中、左方向から爆音が聞こえた。あの方角は、ぐクエストを行っていたパーティー達がいた場所だ。

「――チッ」

「ライトニングエッジ」

 俺の意識が一瞬向こうに行った隙にファウストが魔法を放って来た。三つの電気の刃が落ちて来るが、俺は無くなった壁から外に飛び出して頭上から来た魔法の刃を避ける。

「シズネ、追え!」

 向かい側、ファウストが足場にしている家屋の壁の引っ張りに捕まりながらシズネに指示を飛ばし、壁を走って屋根にまで昇る。

「判断が早いですね」

「見たまんまじゃねえか!」

 ファウストが雷球を杖から飛ばして来るが、横に簡単に避けられる。その直後に俺は屋根を強く踏んで急停止をかける。

 直後、鼻先に屋根から上へと発生した放電が通り過ぎた。

「なにっ!?」

 後ろからファウストの驚く声が聞こえた。

 不意打ち仕掛けた魔術師が堂々と姿を現したのなら当然、罠が仕掛けてあるのは予想出来た。こっちは〈鈴蘭の草原〉一のトラップマスターことハルカのせいでこの手の仕掛けの配置はなんとなく分かる。あいつ、恋人のシュウ同様に人畜無害な顔して意外とエゲツないのだ。一度嵌ると死ぬまで抜け出せないピタゴラスイッチだぞピタゴラ。

 放電が止んだところで再び駆け出す。他にも罠が仕掛けられていそうな箇所を避けて走りながら、爆発のした場所に向かう。

 後ろからファウストが追って来てるかも知れなかったが、さすがに魔術師よりも足が速い自信はある。

 収納ベルトから槍を取り出しながら走っていると、現場に近づくにつれて戦闘音が聞こえてきた。すると、未だに黒煙が昇る路上から複数の影が屋根の上に跳び出して来た。

 一人は大剣を持ったPL。こっちはグランドクエストを受注していたパーティーメンバーの一人だ。

 そして剣士のPLを囲む残り二人は前にファウストと一緒にいた手甲のPKと巨漢の二人組だった。

 俺は巨漢の男に投擲スキルで槍を投げ、相方の頭に突然槍が刺さったのを見て驚き隙の生まれた手甲の男の脇腹を投擲スキルで蹴り飛ばす。

「はい敵決定。ぶっ飛ばす。ぶっ飛ばした」

「ええぇ!?」

 投擲スキルのせいで大したダメージは無いものの派手に吹っ飛んでいくPKを見て、大剣使いが驚愕して声を上げた。気にすんなよ。エノクオンラインで人がゴミのように飛んでいくのは良くあることだろ。

「あんた、前にエコンラカで…………」

 大剣使いは驚きながらも俺の顔を見て、前に一度会った事を思い出したようだ。確かに、エコンラカでヴェチュスター商会の店を出る時に彼らのパーティーとすれ違っている。よくもまあ、覚えているものだ。

「そういう訳で、じゃあな」

「いきなり出てきて何がそういう訳!? せめて事情を!」

 中々にツッコミの反射神経が良い奴だが、生憎と弄ってやる時間は無い。槍も回収せず、俺は急いでその場から駆け出して離れる。

 直後、屋根に無数の銃弾が着弾する。見れば、中身の入っていない動く騎士鎧のモンスターが俺に向けて銃を構えていた。その後ろからは機械仕掛けの猟犬が屋根の上を走ってこちらに走ってきている。

「魔族の兵? 何でこんなに早く…………」

 すまん、それ俺のせいなんだわ。だって俺、指名手配中の身だし。奴らの隊舎に火を掛けたからメッチャ恨まれてるし。

 ファウストがわざわざ奇襲仕掛けて俺を引っ張り出そうとしたのは魔族連中の警戒度を上げさせる為だろう。

 奴らの目的の正確な所は分からないが、グランドクエストの邪魔をしたいのは確かだろう。だとするなら、内容的に魔族への反乱と変わらないグランドクエストの妨害に打って付けなのはやはり魔族やモンスターだ。鬱陶しいぐらいにAIの高い連中ならそういった反乱分子がいるのなら警戒を密にした挙句に難易度をガン上げしてくる。

 そういう点で既に目の敵にされている俺の存在は丁度良い撒き餌だろう。さて、このまま走って逃げる――というか現在進行形で逃げてる訳だが、これから先どうしよう。マジで何も考えてないんだが。





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