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簡単だったはずの任務

読んで頂きありがとうございます

アルカナ版ムジナお楽しみください

上手く立ち回れるはずだった。


限界集落に侵食した魔の排除。

先ずは住人を速やかに避難させる。

そこココに沸いた魔物の制圧。

浄化の効果のある薬と護符で、辺りを浄化。

住人に帰ってきて貰う。

終了。


規模も小さい、レベルも低い、勇と詩なら余裕の任務だったはずなのだ。


何故こうなった?

討ち死に覚悟で退路を開くと息巻く勇を諌めながら、詩は歯軋りした。


件の寒村に着くや否や、やたらと住人に歓迎され、あれよあれよという間に、村長宅に案内された。


先ずは、歓迎の宴とか言い出して、住人は避難を始めない。なんとか二人で危機感の薄い彼らを説得している時、鋭い咆哮が聞こえた。


魔物の襲来だ!


逃げ惑う住人を、どうにか村長宅に押し込め、魔物と対峙する。

手応えのない魔物。


何かがおかしい...。


「勇、この任務、一旦持ち帰るからね。住人を連れてここから離れるよ!」


そんなタイミングで一気に魔が濃く大きくなった。

ほんの少し判断が遅かった、魔が辺りを飲み込む。

寸前のところで護符を使い、住人達の安全を確保するのがやっとだった。

村長宅とその周りの僅かな空間以外は闇色に染まり、どんなに目を凝らしても向こう側が見えない。

幸い住人は、なぜか皆落ち着いていて協力的だ。


任務終了の報告がなければ、その内西の山から応援が寄越される、今はそれを待つのが最善だ。


「なあ。やっぱり周を連れて来るべきだったんじゃね?」

勇の言い分も分かる。でも、西の山の方も人手が足りない。師匠の『異界封じ』の真似ごとが出来るのは現状では周だけだ。


「あの子を動かす訳にはいかない事くらい分かりなさいよね。」

ここで仲間割れなど愚策中の愚策!

詩は精神力を総動員させて感情を抑える。


もう我慢し過ぎて、目から脳みそが噴き出しそうだ。このバカをしばき倒して、今更従順なフリをする住人にも説教をかましてやりたい衝動が抑えられない。


「詩、気負いすぎ......。」

駄目だ、本気で駄目だ、ついに幻聴まで聞こえてきた。


「うぇ。お前なんでココ居んの?」

勇の言葉に振り向けばそこには、今一番いて欲しい、でも、いてもらっては困る仲間の姿があった。


神出鬼没。こいつなら分身とかも、やってのけそうか。詩は若干の安堵と強い怒りを感じた。

「あんた、何しに来たのよ?大きなお役目をお師匠様から賜ったんでしょ?」

怒りのあまり吐きそうだ。


「うーん、えっとね。大丈夫だと思うよ多分...。」


「うわー。出たよ周の多分。どんだけ秘策用意してんだよ。」

笑顔全開で周の背中をバシバシ叩きながら、手放しに心強い応援に喜ぶ勇を詩は少しだけ羨ましく思う。


「これから、状況の説明をしても良い?」

気持ちを切り替えて任務の早期解決に動こう。


「うん。それより、お腹空いてない?」


「はぁ?」

前言撤回だ。このバカにはまず説教が必要だ!詩の拳が震える。


「僕ね、ここまでの道中で色々集めてきたんだよ。」

にこにこと背の荷物をほどく周の緊張感のなさに、さすがの勇もドン引きしている。

「ほら ナツハゼにユズラウメ。どれも美味しいよ。空腹じゃ、出来ることも出来なくなるからね。」

柔らかい笑顔、掴みどこも緊張感も今ひとつ伝わらないこの感じ......。

間違いなく周だ。

でもなんだろう、この気持ちの悪さは。


ちなみに、ナツハゼは酸っぱいので西の山では双六の際に負けた者への罰ゲームに使われる。


詩が言いようのない困惑に襲われていたその時だ、不意に勇が剣を抜いた。


ザシュ!袈裟懸けだった。

迷いなど何処にもない。

勇お得意の電光石火の剣。


後ろから周に切り掛かったのだ。


「勇?」

琥珀の瞳が揺れる何故と語りかけているようだ。


「とっとと正体現しやがれ!いちいち真似してんじゃねよ。キショイってんだ。」


周の姿が消えた後には大きなムジナの死体があった。

驚いた事に村長宅も、そこにいた住人も皆消えていた。

後に残るは土クレと枯れ枝ばかり。



後日。


「それにしても、あの幻術をよく破ったものだ。抗魔力の高い詩でもやっと、といった相手だろうに。」


「え?だって有り得ねーじゃん。あいつが山で採ってきたもんを、詩にそのまま食わすなんて、芸のないことするはずないじゃん。」


「なあ!詩」と同意を求められたが詩は少しばかり悔しさがまさり、知らんぷりを決め込む事にした。


お楽しみいただけたなら幸いです。

もしよろしければ、評価や登録などもよろしくお願いします。

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