32.繰り返される歴史
???視点
ああ、憎い。憎くて、憎くて、たまらない。
あれから何年経った?何百年か?もしかして何万年も経っているのだろうか?
分からない。分からないくらい時間が経ってしまった。
あなたを失った世界で、どうして私は生きている?
「ねぇねぇ、父ちゃん」
声がする。子供の声だ。
人間の子供の声がする。
ああ・・・・ああ、ああ、ああ、ああ。
憎い、憎い、憎い、憎くて、憎くて、憎くてたまらない。
「うわぁ、魔物だぁっ!」
逃げる親子を背後から襲った。
まず親の足を切断し、子供は背中を切りつけた。
どちらも汚らしい悲鳴をあげて地面に倒れた。
痛いだろう?痛くて、たまらないだろう。
でもな、あの方はもっと痛かった。痛かったんだ。
だから簡単には殺さない。殺してやらない。
お前たちが悪いんだ。
お前たちが殺すから、殺されるんだ。
俺たち魔物から、俺からあの人を奪ったから、奪われるんだ。
奪われる悲しみを、絶望を、失う憎しみを知れ。
奪ってやる。今度は俺が奪ってやる。全部、お前たち人間から何もかも。俺たちが奪われたように、今度はお前たちから。
奪ってやる
***
「酷い有様だな。村は、全滅か・・・・・生き残りがいないか探せ」
「はっ」
「おそらく、いないだろうがな」
ここ最近、鳴りを顰めていた魔物の動きが活発になってきた。
被害も拡大し、多くの犠牲が出ている。まだ、都心から離れた田舎故に、国自体が混乱するものではない。しかし、それも時間の問題だろう。
「食われた形跡はないな」
どの死体も惨たらしいものだ。
一息で死ねた者はいない。それは騎士団として多くの犠牲者を見てきたプロの目だから分かる事実
子供も大人も女も男も関係ない。
死の瞬間まで痛みと苦痛に喘ぎ死んでいった。その証拠にどの死体の顔を苦悶に満ちている。
いつだってそうだった。
魔物たちは奪うのだ。簡単に、児戯でもしているかのように、楽しげに、奪っていく。
生きるためではない。
ただ、殺したいから殺す。それが魔物だった。
「どうして、魔物なんかがこの世に存在しているんだ。何がしたいんだ。どうして、こんな酷いことができる」
怨嗟を撒き散らす男は騎士団の団長だ。
魔物狩りという職業についている人たちから、ここ最近の魔物の行動に異常なものを感じると相次いで問い合わせがあり、調査に来た。
調査を始めて一ヶ月、小さな村ではあるが五つほど全滅していた。どれも魔物によるものだと判明。
これは、国を挙げて調査及び魔物の大規模な討伐に乗り出さなくてはいけない。
「魔王は死んだって言うのに、また繰り返すのか?あの悲劇を?俺たちの代で」
「団長」と一人の若い騎士に声をかけられ、団長は無意識に止めていた息を吐き出す。
「生存者はいませんでした」
「・・・・そうか。彼らを埋葬したのに、このことを国王陛下に報告しなくてはな」
「はい」




