17.弱者と強者
「ちょっと、あなた何してるの?勝手に地下からゴミカス共を出すなんて、正気の沙汰じゃないわよ」
こいつは私の行動を監視でもしているのか?
どうして、こう行く先々で会う。
「おい、リリアーヌ。半分とはいえ血を分けた兄弟姉妹に随分な言い草じゃねぇか」
凄むルーファスをリリアーヌは鼻で笑った。完全に格下扱いをしている。
たかが、ガルンシアに選ばれた程度で。
「事実を言ったまでよ。私はお父様に正式に認められた貴族の令嬢。対してあなた達は?認知されていない、言わば婚外子。私とは違うのよ」
「てめぇ」
「何よ?暴力を振るうつもり?お父様に言いつけてやるわよ。あんたは、お父様の許可もなく暴れられない。私が悲鳴を上げればすぐに………」
リリアーヌはようやく気づいたようだ。
ルーファスの首に枷がないことを。奴隷紋もすでに解除済み。
彼は文字通りに自由になったのだ。
「あ、あ、あんた、正気じゃないわよ!こいつの枷を外すなんて、馬鹿じゃないの!ぎゃあああ、暴力反対よ!お父様、お父様、助けて。オルテンシアとルーファスがお父様に反旗を翻したわ!」
邸中に響き渡る声に使用人たちがわらわらと集まってきた。
そして、ルーファスが自由になっていることに恐れをなし、遠巻きに見ているだけだ。
誰も助けには入らない。
当然だ。助ける義理がないのだから。
主家の娘?
いいえ、私もリリアーヌも替えの利くただの道具
お父様を楽しませ続けるために存在するおもちゃよ。
壊れれば新しいのを用意すればいい。
それがここでの常識
にも、関わらずリリアーヌは叫び続ける。
自分の勝利を確信して。
「オルテンシアもルーファスもお父様に処分されちゃえっ!あはは、馬鹿な奴ら。お父様は裏切りを絶対に許さない。お父様、お父様っ!」
どんなに叫んでもガルンシアは来ない。
たとえ来たとしても自由を手に入れたルーファスは迎え撃つつもりだったようだけど。
構えて待っていたのに、一向にやって来ないガルンシアに二人は怪訝な顔をしていた。
来るはずがないのだ。
ガルンシアはこちらの洗脳下にある。
「いい加減、虎の威を借る狐はやめなさい。あの男にとって私もあなたも地下にいた連中も同じ。等しくゴミよ。ねぇ、リリアーヌ。いつまで捨てられることに怯えて生きるつもり?」
「っ」
オルテンシアに絡み、地下の連中を見下すことで自分は違うのだと強がって生きて来たのだろう。そうやって自分を守ってきた。情けないとは思わない。それが弱者である彼女の生き方であり、守り方だったのだろう。
彼女もオルテンシアも、誰も本当の意味で自分を守ってくれる人間はいなかった。
だから自分なりの守り方で自分を守ってきた。
たとえ、そのやり方に未来がないと分かっていても。
「守り方を間違えれば、破滅するだけよ」
「偉そうに」
偉いもの。だって、魔王だから・・・・・あっ、今は違うんだった。でも、元魔王だから身分的には偉いのかな?
「お父様は来ない。もう、誰も私たちを縛るものはない。好きに生きなさい。私も好きに生きるから」
「そ、そんなもの、信じると思っているの。オルテンシアの分際で私に命令しないで」
「信じる、信じないもあなたの自由よ。私は強制も、命令もしない」
人間の相手をしているほど、暇でもない。
さっさとオルテンシアを取り巻く問題を解決して、同胞を救わなければならないのだから。
私が守る民は魔物だけ。それは人間に転生しても変わらない。
たとえ、人間に転生したことで拒絶を受けようとも。
それは、守らない理由にはならない。




