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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
2年目
79/558

77:ハンドスプリング

橋爪さんと林さんのハーモニーはやっぱりきれいなものだ。たぶん、私を含む3人で歌うことを想定して作った曲なんだろうけど、私がいなくても十分説得力がある。というか、私がいないほうが説得力がある気がする。

 やっぱり、今回は断ってよかった。私が出る幕じゃないって言うのを改めて感じる。

 2人だけのハーモニーは、一番を抜けたところで終わった。


「私たちも大丈夫そうね。みさも調子が出てきたんじゃない?」

「でも懐かしいわね。こうやってると昔を思い出すわ。千佳がリハーサルで暴れだして、セットの一部を破損させちゃうって言うのなかったっけ?」

「そういえばそんなこともあったわね。今回はそんなことはないわよね?」


 2人が昔を思い出すようにして苦笑いを浮かべる。その目は一瞬だけ、私に向けられたように感じたのは気のせいだろうか。

 まぁ、視線を感じただけといわれても反論はしない。私だってやりかねないから。さすがに、セットを破壊してしまうことはないだろうけど。


 リハーサルが終わったのはちょうど12時。ここから16時までは自由時間。

 さっきは言わなかった不安の解消と、新しい技を挑戦してみようかなんて思ったりもして……。

 ほぼ完成間近だから、今日中に完成させて、〈ダッタン人の踊り〉に組み込めたらなんて思ったりもして……。

 ただ、練習する前にご飯を食べてこようっと。で、13時から練習して、16時前には終わって、コンサートの準備。私はこのスケジュールで行こうか。

 とりあえず、ご飯を買いにいこうっと。

 ライブ前には『10秒チャージ』でおなじみの栄養ドリンクとおにぎりって決めていて、今日もそれを踏襲。そのほうが、体もしっかりと動くから。

 しっかりとお昼を食べた後は、奈緒美さんにならずとも、必然的に臨戦態勢に入る。

 ここからもしっかりと気を張らないと怪我をする。まぁ、たぶん怪我をしたとしても、強行で行くとは思うんだけど……。

 さっ、とりあえずメインステージで練習しようっと。


「美桜ちゃん、どこに行くの?」


 先にご飯を食べ終わって、ステージに向かおうとする私に、萌奈ちゃんが聞いてくる。


「ちょっとね。練習したいことがあるから。場慣らしも兼ねてね」

「ふぅーん。わかった。行ってらっしゃい」


 珍しく何も言い返してこない萌奈ちゃん。久しぶりのライブで緊張しているのかもしれない。ただ、その何千倍に私が緊張している。隠しきれてると思えてるなら、まだいいのかも。まぁ、ばれてるかもしれないんだけどね。

 さっそくメインステージで体を動かして行く私。ある程度あったまったところで、新しい技に挑戦する前に、〈ダッタン人の踊り〉の振り付けを確認していく。

 不安はないんだけど、ついさっきのリハーサルでできなくて、自主練の時に少し合わなかったところがあるから、少しばかり確認の意味をこめて。

 さっきは、口に出さなかったけど、萌奈ちゃんが演じる『妖精を捕まえる少女』が妖精(私)を捕獲しようとしてネットランチャーに近いものを発射させるタイミングで、シンバルが叩かれるんだけど、そのときのタイミングがわずかに合わなかった。

 ここで確認するのはここだけだと思ってる。ただ、何回かあるから、振り付けをこなしながら、何回か同時に確認していこうと考えている。

 本番だったら、ここで舞台下から曲にあわせて紙ふぶきが飛ぶんだけど、そのタイミングはどうにかなるだろう。少しでもずれたら格好悪くなるし、その後の動きに続いていかない。そこをしっかりと修正しようか。

 それが終われば、ハンドスプリングの練習をしよう。

 そう。このハンドスプリングこそ、私が習得したい技。

 いつまでも側転ばかりじゃ面白くないけど、無理して怪我をするのが怖い。ただそれだけで、見た目上は難しいけど、徐々にステップアップできるならということでこれを選んだ。

 これができたら、翔稀が挑戦していたタッチダウンライズって言う技に挑戦してみたい。

 まぁ、たぶんだけど、タッチダウンライズはこの公演中には間に合わない。できたとしても、いつになるかわからないから、とりあえずは、あと少しというところまできているハンドスプリングだけでも完成させたい。

 耳にはめていた自分のイヤホンをはずし、オリエンタルライムの振付師の山添さんに教えてもらったこつを思い出しながら練習をしていく。

 そして、30分くらいが過ぎて、ひとつずつこなしていた練習メニューが一通り終わり、ちょっとだけ自信がついた。

 さぁ、ちょっとやってみるか。


 少しだけ助走を入れて、逆立ちをしたあとすぐに手で地面を押して反動をつけて立ち上がる。……はずなんだけど、逆立ちのときの勢いが強すぎて、手で地面を押せず、背中から豪快に落下。背中から落ちた反動で、一瞬、呼吸がつまる。

 案の定、ドスンという音が少し場内に響き、私はそのままステージ中央で仰向けになったまま天井を見上げる。


 ……やっぱりまだ早いみたい。今は無理をしないで、徐々にできるようにしよう。

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