581:イベントに向けていろいろ決まる
「あとは年下2人に聞いて、どう反応するかやな」
「せやね。それと、ステージの使い方。それもどうなるか」
「このあと一気に平井さんに確認のメールを入れる。あの人、仕事速いから、今日中、最悪、明日には返事が返ってくると思う」
「了解。それまでは、いつものようにこなすか。でも、あれやな。先に、試合中と試合後のパフォーマンス、練習してもええかもしれんな。特に〈ヴィクトリー〉なんか、パフォーマンスする機会も少なそうやし」
「確かにそうやな。そうしたほうがええかもしれんな」
「ちゃんと亜稀鑼と由佳の感想とか聞いたうえでね。それより先にできることはないでしょ?」
「それもそうやけどな。とりあえず、また、各々の仕事に戻るか」
「あっ、せや。美桜、いつものお願いしてもかまへん?」
いつもの?……あぁ、動画の誤字チェックか。
「わかった。あとでそっちに行く」
「助かる~。今日に限って、手が空いてる人が少ないんよね」
「俺は?」
「翔稀はたまに見逃すもん。こんなこと言うのもあれやけど、ちょっと信用にならんってところがあるんよね」
「さよですか~」
ちょっとふてくされたような表情を浮かべた翔稀だけど、まぁ、自覚があるのか、応接室を出て、自分の仕事場に戻る。
と思っても、私も沙良と同じフロアにいるんだけどね。なんて思いつつ、キリのいいところで終わっている仕事を再開させ、神戸アステルズの平井さんにパフォーマンス計画を送り、また仕事をキリのいいところでいったん立ち止まり、沙良のところに行く。
「どうですか、進捗状況は」
「タイミング完璧すぎ。ちょうどおわったところ。あとは、このまま確認してほしい」
動画は、オリエンタルライム所属で、野球球団のチアアイドルでもある『アイアンガールズ』の長尺動画。
野球シーズン中は、球場内での楽しみ方や選手インタービュー、曲の振り付けや、球団応援歌、応援の仕方などなど、様々な活動をする中で、動画編集が沙良の主な業務の一つになっている。
そこに、誤字チェックという形で私も入るんだけど、さすがに、人気球団の動画を扱うだけあって、変なことは許されないわけ。
だから、かなり慎重になっているし、慎重で堅実な私にチェックを頼んでくる。
私がいないときは、田村さんにお願いしているみたいなんだけどね。
長尺動画は20分ほど。野球チームの秋季キャンプの映像を編集して、キャンプの魅力を存分にアピールしている。そんな感じの映像かな。
これを見ると、私も行きたいな。って思ってしまうところはある。とはいえ、こっちでの仕事がてんこ盛りになる。
まぁ、その秋季キャンプが終われば、またいろいろと忙しくなるんだけどね。経理も管理している私が。
そこから30分ほど使い、字幕と動画の中に入れた文字に誤字がないことをしっかりと確認したうえで、沙良にはオッケーを出した。
「サンキュー、助かった。ほんま、いつもこの時間だけドキドキするんよね。美桜の顔が真剣やから」
「間違えたものは、世に送り出せないからね。それに、傷つくのはうちもどうだし、アイアンガールズもかわいそうだし」
「それは間違いないわ。よっしゃ。なんとかじかんないにおわった。あとは、予約投稿するだけや」
満足そうに仕事が終わったような沙良は、大きく伸びた後、「お茶お茶~」なんて言いながら、席を立った。
それじゃあ、私は時間までもう少し仕事を進めようかな。
まぁ、こうしないといけない分は、全部終わってるんだけど、やっぱり、翌日以降の仕事を減らしておきたいのが私の性。
さすがに、ちょろちょろと細かい仕事が残っているのも事実だし。
そんなことを思いながら、自分の席に戻り、キリのいいところまで済ませた仕事を再開させる。
経理関係の仕事、今日中に片付いたら後は楽だなぁ。なんて思いつつ、ゆっくりと丁寧に仕事を進める。
そんなことを思いながら仕事をしていると、平井さんからメールが返ってきていることに気づいた。
『内容、すべて承知しました!カメラは野球場でよく眠るような人が持って移動できるカメラ、3台を確保しております。また、全体を映すためのカメラも用意しております。当日、会場前にリハーサルができれば幸いです』
『こちらも内容を承知いたしました。確認ですが、当日は朝9時に開錠となる体育館前でよろしいでしょうか?』
『内容その通りです。私がお迎えに上がります。当日、よろしくお願いいたします』
そんな丁寧なやりとりを済ませると、ちょうと退勤時間。という名の振り合わせ開始の時間。
まぁ、ちょうどいいタイミングでいろいろ決まったし、ちょうどいいや。経理の仕事は中途半端なところで終わっちゃったけど。……いいや。霧のいいところまでやってから振り合わせに行こうっと。




