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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
1年目
38/558

36:折れきった心

 着替えて、スタジオの鍵を閉めて、外に出るころには夕日も沈み切って闇が支配しつつある。


「ほんなら、明日もよろしくね~」


 そういって、年下三人は駅のほうに歩いていった。


「そしたら私たちも行こうか」

「どこ行くん?」

「ごはん、行かない?おごるけど」

「いいのか?」

「励ましてくれたおかげ」

「はぁ?俺はなんもしてねぇよ。また深く考えてるとまた病むぞ」


 翔稀が痛いところをついてくる。


「う、うるさいなぁ。わたしだって病みたくて病んでるんじゃないんだから」


 そういうと、前を向いて歩きだした。

 一人で先に前を歩く私。その後ろを翔稀が何も言わずついてくる。

 そのまま歩いてきた先は、イライラした時、いつも自暴自棄で食べにくる中華料理屋さん。


「らっしゃい!おお、美桜ちゃん!どうしたん?彼氏?」

「大将、バカなこと言わないでよ。グループのメンバーだよ」


 こじんまりとした店で、学生で知ってるのは私くらいなんじゃないかというようなお店。

 店長は私のことをよくわかってもらえて、応援してくれる。

 ここの魅力は、チャーハンを大盛りにしても値段が変わらないところ。イライラしているときには大盛りを食べて帰分を紛らわせる。(それでも体重が落ちていく一方だからどうかしてる)


「こんな肉々しいところ来てるのかよ」

「でも私の行きつけ。おいいしいんだから。大将、いつもの二ついい?」

「あいよ。大盛りのほうがいいかい?」


 うん。それだけ言うと、一口お冷を口に入れた。

 そして、翔稀の目を見ていった。


「翔稀、リーダー、変わらない?」


 唐突に言った私の言葉を理解するのに時間がかかった翔稀は「はっ?」としか言わなかった。


「何かおかしいもん食うたんとちゃう?」


 ようやく意味を理解した翔稀が笑いながら言った。


「翔稀は笑ってるけど、私は本気。正直いって、今まで数えきれないくらい迷惑をかけた。それなのに、私がリーダーでいいのかって。翔稀は何をしても華麗にこなすし、優しい。今の翔稀が、私の描いてた理想のリーダー像なの。何もできない私より、よっぽど翔稀のほうがリーダーに向いてる。そんな気がした」

「……言っとくけど、俺、美桜が思ったより何もできひんで。ダンスしかできないし、美桜より頭は悪い。リーダーになったところでライブの演出かて考えられへん。俺は美桜より何もできない。俺がリーダーになったところでミアシスを退化させていくだけだ」

「バカだとか、頭が悪いとかは関係ない。優しくて、パフォーマンスが上手い人じゃないと、リーダーは務まらない」

「美桜、こっちに来てから余計にアホになったんちゃう?リーダーってもんは周りを考えられる奴がするもんやで。俺は美桜みたいに立ち回りもうまくない。それに、最初のデビューシングルの時、リハーサルでぶつかりそうになった俺を本番でいきなり立ち位置を変えてまで避けたのは誰やねん」


 あぁ、あのときか。そういえば、そんなこともあったな。


「あの時は単純に間違えただけ。〈インマイストマック〉でしょ?翔稀が言ってるの。あれは、1サビと2サビを間違えただけ。フォーメーションを崩してダサく見えたでしょ?ぶつかるとかは全く思ってなかった。翔稀が上手く回避してくれると思ってたし」


 ホントは嘘。相談する時間もなくて勝手に変えただけ。うまく回避できてよかったと思ってるし。


「そこやで。自分のミスに見せかけてダンサーのパフォーマンスアップさせるところ。ほかにも、亜稀羅のど忘れ事件の時もそうだっただろ?〈そよ風に〉の2サビ。もともと亜稀羅のパートであいつの見せ場でど忘れしても、乱さずにお前が入ったんじゃねぇか」

「あれは、亜稀羅の表情が異様に焦っていたし、ど忘れした時の仕草が見えたから」

「ほら、全部見えてるやんか。俺は、そんな美桜みたいなことができねぇから無理だって言ってんだよ。今の俺ら4人は今やることで精いっぱいなんだよ。周りを冷静にみられるのはお前だけやで美桜」


 私だったからできるのかな?亜稀羅の時は、声が似てて、より低い声を出せれば気づかれないと思っていた。だけど、翔稀には見えていたんだね。


「翔稀の癖に生意気なこと言って。なんだかむかつく」

「なんやねんその言い方。そっちが煽ってきたくせに。わけわからん」


 翔稀がそう言ってしばらく静かになった。


「はい、お二人さん、お待たせな。中華飯大盛り」


 うん?いつもよ何かが違う。


「大将、これ特盛じゃないの?」

「俺からのサービスや。ええ話ししてくれるやないか。おっちゃん感動したわ。翔稀くん言うたかな?美桜ちゃん支えたってな。この子いつも一人で抱え込むさかいに」


 そういうと、ガハガハ笑って厨房に戻った。

 しばらく翔稀と顔を見合わせた後、まっ、いっかと言って食べ始めた。

 幸せそうに頬張る2人をみて大将が満足そうにみていたのは、2人に向けられる視線を感じてわかった。

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