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Go high Go! We are MiASYS!  作者: 黒龍
1年目
35/558

33:ミアシス、初めてのステージで暴れる

 低めのビートとクラップの音が鮮やかに響きだし、体育館が少しざわつく。ざわつくといっても、いよいよ始まるんだというざわめき。

 キリのいいタイミングで私の声が響くけど、今日はマイクを通して喋ってない。事前に重ね合わせた音を用意して流している。

 いつもは決まり文句みたいな感じで、しゃべるけど、今回はどうしても事前にほしかったみたいで、仕方なしに収録という形を取った。

 あんまりこういうことはしたくないんだけどね。自分の声じゃない気がしてあまり好きじゃない。

 ただ、フリーにしてほしいってところは本当にフリーにしてる。

 本番じゃないときに力が入らないからって言って。


『The first things come on stage is Sara Hasegawa』


 ここからは地声(もちろん、マイクを通してね)でステージに呼んでいく。

 途中で沙良と由佳のお茶目な即興クラップが入ったり、亜稀羅と翔稀のハモリが入ったりとなかなか色の濃いオープニングステージ。翔稀がステージに来るときは、後ろから来たことにびっくりした女子生徒が黄色い歓声を浴びさせていたりと、思ったよりうまく行った気がする。


 で、私がステージに上がるときは翔稀にお願いをしてみた。どれだけうまく行くか見てみたかった。これでうまく行けば、マジックライブでも私一人でしゃべらなくて済むし。


「The last things come on stage is Mio Nakagawa」


 おもってもいなかった流暢な喋りで少しびっくりしたけど、思い切り飛び出していって黄色い歓声を浴びに行った。

 完璧に近い出だしで気分は早くも最高潮。カモンミアシスを踊ってるときも何もかも最高。


 曲は止まることなく、〈カモンミアシス〉が流れ終わると、そのままニューシングルの〈仮面舞踏会〉がそのまま流れ出す。

 そして、〈カモンミアシス〉の最後あたりで〈仮面舞踏会〉のフォーメーションを造っていたから、そのあたりはすんなりと入れる。

 少し軽いポップな感じが体育館を包む。舞台上は最初と変わらず黄色っぽい照明のまま。まぁ、こっちのほうが曲にはあってるけどね。



  ムーンライトに照らされた君が浮かび上がり

  こっちに向かってきてドキドキ

  ヒロインの君が手を差し出してきて

  その手にそっと触れるように手を重ねる

  ゆっくりと



 振りを変えた今日の仮面舞踏会。ファンサービスになるかわからないけど、女子にも男子の振り付けをしてもらって場内を沸かせる。

 曲はかろやかに流れていき、終盤に差し掛かった。

 少し盛り上がりは冷めて少しクールになった場内。

 曲が終わってフィニッシュした状態でしばらくフリーズ。

 声が上がると一気に黄色い歓声に変わり、場内は一瞬でヒートアップ。


「はい!ありがとうございます。改めましてミアシスです。よろしくお願いします!」

 さらにヒートアップして場内は最高潮に。

「もうすでに最高潮やな。俺らもテンション上がるわ」

「まぁね。そんなところでね。私たちミアシスのことを知らない人もいると思うんで、自己紹介しておきましょうか。いつものように沙良から!」

「はーい、ミアシスのダンサー長谷川沙良です。怪盗サラ、クールに参上!今日もあんたらのハートを華麗に頂くよ」


 最近、沙良の自己紹介は後半のフレーズが出てくるようになった。何かしら気に入ったよう。


「はーい、ミアシスのキュートとダンス担当でみんなの妹の田沢由佳です。今日も皆さんの力で頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします!」


 沙良だけというより、ミアシス全員がそれぞれのキャッチフレーズを持ち、最初の印象そのままに確立するようになった。

 そこから私も含めた3人が自己紹介も終わり、私がまた口を開く。


「ってことでね、今日は東森町商業高校の文化祭にお招きいただきましてありがとうございます。お話をいただいた時からメンバー全員がワクワクして今日という日を迎えさせていただきました。先ほどの曲はついこの間、9月23日にリリースさせていただいた〈仮面舞踏会〉という曲です。中世の舞踏会ををイメージした曲です。続いては、皆様を魅惑の世界へお連れいたします。なぜあなたは舞うの?教えて、〈アオスジアゲハ〉」


 ステージの照明がおちて、5人がスポット来を浴びだすと音楽が流れ出す。


  月の照らす淡い光 街並みを優しく照らす

  人並みのない町中に軒の光がともる


  隠れるようにアゲハがきれいな蝶に


  季節外れに衣を脱いだアオスジアゲハが寂しく

  切なく羽ばたいていく悲しい姿

  誰にも見せずに羽ばたいていく


 この曲の序盤はかなり哀愁の漂う感じ。かなり切なく歌い上げないと後半の強く飛び出すことができない。やっぱり感情は大事。

 力強く羽ばたかせるんだったら1番は弱めに歌って、2サビを爆発的に強く歌い上げて高揚を悲壮の両方を表現させる。

 気づけば曲の後半。高揚は二サビだけで、Cメロから後ろは弱く悲しく歌い上げる。


  命を尽きる瞬間まできれいな姿で羽ばたいていく

  誰にも見えない蝶の命

  人目のつかないところで燃え尽きていく


  青空の広がる

  木陰の中で


 最後の2フレーズは私が歌い上げて〈アオスジアゲハ〉は終わり。

 ここからは上げていく曲ばかりを歌っていく。

 そしてMCを慣れてきた翔稀に変わる。


「ってことであっという間に3曲披露させていただき、ミアシスの持ち曲の約半分が終わりましたけれども、切ない幻想を見せられて静まり返ってませんか?」

「確かに。由佳もそれ思った。ちょっと静かすぎひん?みんな盛り上がってるん?由佳はめっちゃテンション上がってんのに」


 確かに由佳のテンションはすでに最高潮。結構暴れてるからなぁ。


「まぁ、しんみりした曲が多かったからしゃあないやろ。ただここから上げていくんでついてきてくださいよ!ダンサーでお届けしましょう。カモンムービングシャイン!」


 この翔稀の言葉でボーカル2人は二手に散る。ダンサーのトラックで、いきなりそれぞれ側転から始まり、翔稀に関しては、センターに寄ってからバク転。

 しかもバランスを崩さずにきれいに決めるんだから大したものだ。私なんか絶対にできない。

 それに、このダンストラックは今までに見たことが無いパフォーマンス。曲もかなりビートはきついけど、ミアシスの曲をリメイクしてつなげたような感じ。結構カッコイイ。

 いつものように沙良と由佳の細かすぎるコンビネーションがさく裂して翔稀の前宙が間に入る。

 ただ、今回はレベルをさらに上げたみたいで、翔稀の前宙の直後に、沙良と由佳の交わる側転が入る。

 見ててヒヤッとするタイミングで3人が動き回るから、交錯して怪我をしないか心配になる。

 前から見てるとそう思うかもしれないけど、実際は前後が結構空いてたりするところも事実。交錯しないためにも翔稀を前宙の時に沙良と由佳が後ろにバレない程度に下がってたりする。


『カモンミアシス!』


 私がいつも言うフレーズの声がかなり低く編集されて体育館に響き渡る。私の声が響き渡ると、一瞬動きを流していたダンサーが爆発するように、またハードに暴れるように振り付けをこなしていく。

 派手に翔稀の大技を繰り返しだしていく。そして華を添えるように沙良と由佳の腕が絡みそうなコンビ。やっぱり見ていてひやひやする。


 最後はそろってフィニッシュ。とたんにステージの照明にが落ちる。ここで私と亜稀羅が出てきて瞬時に『フライトゥブルーバード』に移る。


「ここからまだまだ上げていきますよ~!へばってる場合じゃありません!まだまだいけるよね?最後まで暴れるんでよろしく!」


 なんとか前奏の中に言いたいことを詰め込んで、私から始まるAメロを歌いだす。



  風が穏やかなこの町に濃い青空に広がってる

  白い雲がぽつぽつと浮かぶ中でフライトゥブルーバード



 ここからいつも苦戦していた全音符がいくつも続くくせにブレスが無いサビ。

 ここはライブの時は踊らずにボーカルに専念するという方式に変更。今はあんまりなくなったけど、テレビの収録とか、生放送では本気で踊って歌う。

 そうしようと決めたのはつい2ヶ月前。あまりにもボーカル陣の負担がきつく、声の伸びもなくなるから仕方なしにってことでこうなった。

 そのおかげで弱々しい声で歌うこともうなくなったし、振り付けも少し楽になった。

 これをするのとしないのとでは、次の曲に行く疲労度が全く違う。


「さぁ、まだまだ続きますよ!続いて〈ビューティフルデイズ〉!」


 ここからミアシスの猛攻が止まることを知らない。〈ビューティフルデイズ〉〈君のハートはインマイストマック〉、そのあとにカバー曲で〈ハイテンション〉の3曲をノンストップで続ける。そして最後に私たちのデビュー曲〈そよ風に〉を歌う。そして、アンコールを期待して、この間のワンマンライブの中で披露した〈夏のカケラ〉を置いてる。


 テンションが上がり始めた場内をされにヒートアップさせていくのが私たちの仕事。

 ただ、ヒートアップしていく曲があんまりないのが実情で、他のアーティストさんの曲も借りないと上げていきにくい。ましてや、高校生の体育館。上げていく曲じゃないと、全く盛り上がらない。

 上げていくとするならば、トークで話題性をもらわなきゃいけない。まぁ、年は一緒なんだし、なんとかなる。


 曲を次々に披露していって、あっという間に最後の曲。

 前奏の時に「これが最後の曲です。私たちのデビューシングルから、〈そよ風に」!」と無理やり詰め込んだ。


 ライブの時間は本当に楽しい。このままもう少し続けばいいのに。とか思う反面、学校の体育館のステージでライブをするよりも、慣れかけたマジックホールでライブがしたいという気持ちがぶつかり合った。

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