34:美桜さん、反省する
「それでは、ミアシスのライブはこれで以上になります。皆さん、楽しい時間をお過ごしいただけたでしょうか?少しでも楽しい時間が過ごせたら、私たちミアシスも来てよかったって思えます。これでミアシスのライブは終了です。あとは後片付けというやりたくない仕事も待ってると思います。でも、そこまでがね、文化祭と思ってるんで、皆さんも最後まで楽しみましょう。そうしましたらミアシスも撤収を始めましょうか。それでは、以上!」
『ミアシスでした!』
「ありがとうございました」
そういって、ステージの下手に消えていく。
ここで少しの間休憩。タオルで汗をぬぐったり、足を伸ばしたりと、メンバーそれぞれ違うことをしてる。そして、一息ついたところで、男の子の声が聞こえてきた。
「文化祭の華が帰っちまうぞ!俺らはまだまだ満足してねぇ。まだまだ行くぞ!アンコール!」
裏で聞いてて、無理やりな言い分な気がする。けど、正直に言ってうれしいというのが本音。もう少しだけ煽らせておいて、ちょっと声が小さくなってから飛び出してもいいかも。
アンコール!アンコール!と声が大きくなるともに、手拍子も大きくなる。小さくなることを知らない。
行ける?私が聞くと、もちろん、と帰ってくるメンバーの声。
「よし、セットリスト通り暴れていくよ!」
私の一声でみんなが飛び出した。
「アンコールありがとうございます!ただね。ミアシスの持ち曲はもともと少ない上に、そろそろお時間のようなので、これが本当の最後です。最後まで上げていきましょう!〈夏のカケラ〉」
短めのイントロのあとに私の声を響かせる。
ふぅ。何とかって感じ。なんだか、ちょっとだけ盛り上がりに欠けた気がする。
アンコールがもらえたことはうれしかったんだけど、なんだか、無理やりもらったような感じがして、素直にうれしいとは思えない。
もっと、ミアシスに盛り上がる曲がほしい。
今までのライブとは違ったエネルギーの使い方を知った今日の文化祭。
私たちが楽しければみんながついてくる。そういった考えは根本的に間違っていて、みんなを楽しませなければ、私たちも楽しくない。ということを初めて思い知らされた。
なんだか、自信を持っていたことに対して、一発で砕かれた気分。このままミアシスはミアシスらしく活動し続けていけるのだろうか?そんなことを思ってしまった文化祭でもあった。
なんだろう、この悔しさ。やってきた期間こそ短いものの、今までやってきたことの全部を否定されたみたいでものすごく悔しい。このまま終わるのはミアシスじゃないけど、折れてしまってこのまま終わっちゃいそうな気がして仕方がない。ちょっとだけ話しあいして、今日は帰らしてもらおう。
文化祭のステージが終わり、メンバーは先に事務所に戻り、私は教室に戻って、ホームルームが終わるのを待った。
「そしたら、月曜日は代休やから、火曜日、そろってみんな来てや。一人だけ揃ってへんとか恥ずかしい話はないで。ほんなら、今日はこれで終わります」
なんだか、そんな話だった気がする。ショックが強すぎて話が頭に入ってこない。どうしたらいいんだろう。
「美桜、どないしたん?浮けへん顔して」
ホームルームが終わってしばらく動かなかった私に菜乃葉が声をかけてきた。
「うん?特に何でもないよ」
「そう?ライブ終わってからずっと上の空やけど」
「だから、なんでもないって!私はいつもの私だから!」
怒鳴ったあとに気付いた。なんで、私、菜乃葉に当たったんだろう。菜乃葉はなんにも関係ないのに。
「……ごめん。菜乃葉は何も関係なかったね」
「別に構へんけど、ホンマにどないしたん?」
菜乃葉に泣きつくことはない。これは私の問題だから。
「ううん。ほんとに何もない」
そう言ってバッグを持ち上げ教室の外に出た。
「ごめん。今日行くとこあるから先に帰るね。じゃっ、またね~」
後ろでもの言いたそうな菜乃葉に反論させず、スタスタと廊下を何も無いように見せかけながら歩いた。
本当は今すぐ泣きたい。でも、学校だし泣けない。本当にどうしたらいいのか自分でもわからなくなる。
なぜだか、マジックホールに足を向けにくいな。なんていうか、行きにくい。何かと失敗してるしなぁ。
もしかしたら、マジックライブでも、何かとミスしたのに、気付かなかったのもかもしれない。完全にリーダー失格じゃん。
『ホームルーム終わったん?』
ふと携帯の画面を明るくさせた時、この文字が映った。翔稀からのメッセージだ。
『終わったよ』
『今から反省会するからマジックホール集合な』
気分が乗らないんだけどなぁとか思いつつ、返信せずにマジックホールの中に入っていった。
「お疲れ~」
気の抜けた私の声がミアシスの部屋に響く。
うわっ、学校の時の美桜姉や。と亜稀羅が茶化すけど、反論する元気は今の私にない。
はいはい。と適当に受け流すと、いつも座ってる椅子に座った。
「美桜、なんかいつもより疲れてへん?おかしいで」
明らかにいつもと違った私の異変と感じ取った沙良が声をかけてくる。で、ここでは何でかわからないけど、弱音を吐ける気がする。
「まぁね。あれだけ思い通りにライブが行かなかったからね。あそこまで盛り上がらないとは思わなかった」
「確かにな。盛り上がったところって言えば、俺らダンサーのパフォーマンスくらいやろ?あとはなんかじめっとしてた。アップビートの曲が少ないんも関係あると思うんやけど」
いろいろと考える事もある。そこからミアシスは年上3人を中心に話し合いが始まる。
「やっぱり、私たちが楽しかったらみんなもついてくるって言うのはやっぱり間違えてる気がする。みんなが楽しいって思えるステージを作って一体になって私たちも楽しむって言うのが正解なのかもしれない」
「そうやな。俺らも考え方が根本的に間違ってたな。今までライブのセットリストとかは一応みんなで話し合ってきた。やけど、中身は全部美桜に任せてた。美桜やったら楽しいステージを作ってくれる。いつも違う演出やったからそれでいい。ってどこかで思ってた。やけど、楽しかったん、俺らだけやったかもしれんな」
「盛り上げるんやったら、カバー曲をまたいくつか覚えなあかんな。たぶん、それだけの問題とちゃうと思うけど」
「まぁ、今日の反省というか、今までの反省点は全部美桜に任せっきりになってたところやな。そこは考え直して次につなげて行こか」
そうやね。と沙良から声が飛ぶ。
「ほかになんかある?亜稀羅とか由佳はなんもない?」
二人からは声が上がらない。しびれを切らした沙良が内心イライラしてるんだろうけど、優しくは言った。




