30:美桜さん、沙良由佳に引きずられる
タイムスケジュールか。正直、何時に入ればいいかだけ分かればそれだけでいいのに。とか思いながらパラパラとめくる。
終わるのが15時で、その30分前まで1時間半がミアシスの時間か。入り時間はその20分前の12時40分。思ったより早い。
まぁ、決まってることだし、足りないところはカバー曲で補うつもりだし。
一枚物の紙を折りたたんで胸ポケットに入れる。そして、何もなかったかのように教室に戻る。
そして、そのまま自分の机に突っ伏す。
集中力が切れて、何もする気になれない。
なんだろう。この倦怠感は。いろいろだるい。
そんなときに携帯が鳴った気がした。
見ると、翔稀からラインが入っていた。
『どこおんの?』
一言だけだけど、そういえば、田村さん以外はみんな私が文化祭に出演する学校に在籍してるのを知らないのよね。
話が合ったのも、生徒会からだけど、メールでリクエストあれば検討してみるって言って、本当にメールを送ってきて、事務担当の私がミーティングで提案したんだけど、そのときにも、私の学校って言った記憶がない。
『東森町商業高校だけど。朝のホームルームが終わったら合流する。私、ここに通ってるし』
『おー、マジか。りょーかい。終わったら連絡くれよ』
『わかってる』
それだけ交わして翔稀とのやり取りは終わった。
そうか。マネージャーも、今日のことで最終打ち合わせに来てるんだった。それでも、マネージャーの姿を今日は見てない。
まっ、どこかのタイミングで合流できたらいいんだけどね。
教室に戻って少しすると、ホームルームを知らせるチャイムが鳴った。
周りはまだがやがやと騒がしい。なんで教室って先生が来るまで騒がしいんだろう?そのあたりが全く理解できない。ゆっくり羽を伸ばして待っておけばいいだけなのに。よくしゃべるからなのかな?そんなことは関係ないのかもしれないけど。
ちょっとして明川先生が入ってきて、私が予想してたことを話し始めた。……って言っても、毎日話すことは一緒だから、耳も貸さない。
バッグを枕にしてうつぶせになっていた私。解散ということが聞こえて、ごそごそと動き出す。
小さなバッグを取り出して、財布やノートとか必要なものを中に入れる。
通学用のバッグはロッカーの中に入れて、そのまま教室をでる。
やりたいことは何もない。何かを見るでもないし、何かを食べたいというわけでもない。とにかく、文化祭は何かと苦手。面白くもないしね。
さぁ、何しようか。屋上に行って振り付けの確認をするか、あてもなくふらふらするか。どっちにしろ、メンバーの面倒を観なきゃいけないのか。まぁ、それはメンバーに任せるか。
そうだ。翔稀にラインを送っておかないと。
『ホームルーム終わったよ。正門で待ってる』
それだけ送って正門に向かう。徐々に正門も人が多くなり出してくるけど、メンバーの顔は見ればすぐにわかるはず。
って思った瞬間に見つけた。中高生4人だと私服でも目立つなぁ。まだ、たぶんバレてないからいいものの。バレるのも時間の問題ってところかな。
まぁ、昨日のミーティングでサインと握手くくらいならしてもかまわないって言うマネージャーからのお墨付きはもらってるから別に逃げることはない。
あっ、私に気付かないでスルーしようとしてる。バレてないならちょっとちょっかいかけてみようか。
「あっ、あの、ミアシスさんですよね。握手してもらっていいですか?」
稀にこうやって声を変えてメンバーをひっかけることがある。これがまた楽しい。
「あっ、はい。って美桜かよ。何してんねん」
翔稀が一番初めに反応して、そこからほかのメンバーが「あーっ!」って感じで反応する。
「いつもと全く雰囲気ちゃうからわからんかった。なんでそんな暗いん?」
「学校の私はいつもこうだけど。別に機嫌が悪いとかないから」
「うわっ、今日の美桜姉、取っつきにくいわ」
いつもの私と違うことに違和感を抱く4人のメンバー。それにも関わらず、言い方が変わることはない私。
「だから、普段の私はこっち。で、どうするの?」
「何が?」
「文化祭。楽しむつもりなんでしょ?グループ単位で動くのか個人で移動するのか?」
「別にどっちでもええけど、美桜がおるだけで、ミアシスが文化祭に来てるってバレるんちゃう?」
「ミアシスが来ることはもうバレてる。でも、どこに出没するかはシークレットだし、気付かれた時だけってはなしだから、どっちでもいいんだけど」
「俺は別々のほうがええと思う。由佳と沙良姉に振り回される気がする」
「なんやねんその言い方。ほんならうち、由佳と一緒に行動する~」
子供みたいな沙良の言い分。ちょっとかわいく見えちゃう。
「ほんなら男子と女子と別れて行動しよか。美桜、それでいいやろ?」
「いいんじゃない?好きにすれば」
「なんやねん、その態度。むかつくわ」
「ごめんごめん。いまだに気分変えられなくて」
「早く変えてくれよ。俺らの調子が狂うわ」
翔稀がガヤガヤ言うけど、聞く耳を持たない。私だって変えたいけど、今変えたら、今までの私はどこ行ったってなるから。
「あっ、そうだ。今日の入り時間、12時40分だから、12時半には正門に来てよ。控え室とかの場所はわかってるから」
「12時半か。案外早いな」
「しょうがないよ。公立高校で、終わるのも早いんだし」
「それで枠が1時間半なんだろ?長すぎねぇか?」
「なんか、今年はシャイな生徒が多いんだって。で、有志も思ったより数が集まんなくて長くなったみたい。考えていたのは長くても1時間らしいんだけど……」
「延びたな~。俺らの30分は結構しんどいでMCも結構引っ張らなあかんし、振り付けかて練習する時間めっちゃいんで」
「でも、それを知ったのは今だから大丈夫でしょ?もともと一時間半分練習していたんだから」
「まぁな。ほんなら、あとで合流な。亜稀羅、行くで」
そういうと、人ごみの中に消えていった亜稀羅と翔稀。
「ほんならうちらも行っこか。美桜、案内してくれるやんな?」
半ば強制的に連れて行こうとする沙良の声。返事をする前に両手を2人に捕まれ引きずられていく。




