表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
頑張ってね、小林君!  作者: もう無理だよ
152/211

152_俺と召使いとトレバト冬季大会


俺の名前は小林匡宏。27歳、男、独身、彼女なし。



12月21日――


トレバト本選大会を優斗と見るため、会場の国際展示城に到着する。


「人がやけに多いな…今日はトレバト以外にもゲームのイベントをやってるし、コスプレ広場もあるからか?」


俺はパンフレットを読み込む。


「小林さん、『竜宮の召使』のリーダー、橘さんと会う約束、潤君から聞いてますか?」


「聞いてるよ。大会の前に挨拶したいって言われたから待ち合わせ場所に行こうか?」


そうですね、という優斗と共に館内マップを見ながら歩く。



事の発端は11月のマーチ会、阿部潤君の一言だった。


「小林さん、『竜宮の召使』は『青い淡水魚』におったメンバーが作ったチームって言うたの覚えてますか?」


『竜宮の召使』は関西の強いチームとして有名だ。もちろん、俺も知っている。


「覚えてます。去年かな…?トレバトの予選会で会った時、挨拶もしたんだ。リーダーは確か…橘さんだったよね…?気さくな感じの社会人で…」


「そうです、そうです、橘さんです。小林さんが12月のトレバト本選大会に来るなら挨拶したいって言われて…大会に行きますか?」


「あぁ、優斗と行こうかって話してるけど…。そもそも、どうして俺に挨拶したい、なんて話しになったの?」


「それが…トラのマーチって夏の本選を辞退したやないですか?その関係で竜宮が繰り上がりで本選に進めたのでお礼が言いたいって話です。俺、橘さんとはずっと昔からの知り合いで仲が良かったんです。竜宮のチームを作った後もちょこちょこ連絡取り合うとって…その関係で小林さんと優斗に挨拶したいって流れになったんです」


阿部潤君は『トラのマーチ』に入る前『青い淡水魚』のメンバーだった。


「そうなんだ…分かりました。俺も橘さんと話してみたいなって思ってたんだ。どうして『青い淡水魚』を抜けて『竜宮の召使』というチームを作ったのか…興味があるというか…」


「うーん…橘さんは……関さんと岩田さんから嫌われとって…基本的にカバン持ちをやらされとったさかい、嫌気がさしたんかいな…?あぁ、『青い淡水魚』のメンバーと橘さんは今でも仲がええんでっせ、特にリーダーの平田さんには好かれとって…だけど、それでチーム№2と№3から理不尽な扱いを受けとったんです…せやけどこれってチームのようある話しやねんなあ?トラのマーチが平和過ぎるんよ…」


「なるほど…」


話しを整理すると、『青い淡水魚』のリーダー平田さんに好かれていた橘さんは№2の関さんと№3の岩田さんから受ける仕打ちに耐えられなくなりチームを辞めた。その後『竜宮の召使』を作りそのチームリーダーになった、ということらしい。


「ほな…本選大会の当日に連絡します。優斗にも俺から言うとくさかい、よろしゅうお願いします」





待ち合わせ場所に向かうと阿倍君と橘さんはすでに到着していた。橘さんはモデルの阿倍君と並んでも見劣りしない、背が高くてスラッとしている。七三分けの髪型も似合っているが、残念なのは少々胡散臭く見えることだ。


そんな橘さんが俺たちを見つけ声をかけてくれる。


「どーも、こんにちは、小林さんとは一度話したことありますやん?せやけど、もっと話したい思てました」


「俺も話したいな、って思ってました」


「おおきに~。小林さんと広瀬さんとお話しできるのを楽しみにしとったんです~。広瀬君、初めまして~。俺は『竜宮の召使』のリーダー、橘誠です。よろしゅう~」


「初めまして、トラのマーチのリーダー、広瀬優斗です」


優斗は優等生キャラで対応している。


「潤から色々聞いてます。広瀬君は、トレバト強いし、男前やし、若いのにしっかりしてるって思てました」


「ありがとうございます」


二人の会話に阿部君が割り込む。


「橘さん、あんまりグイグイ優斗に話しかけんといてくれや、怯えてますで?」


「そら失礼…せやけど同じリーダーとして色々と情報交換したいな~って思うやん?」


阿倍君と橘さんは昔からの知り合いというだけあって砕けた雰囲気だ。




四人で話していると、二人組の男性が橘さんに声をかける。


『青い淡水魚』の№3、岩田雨月さんと№2、関泉さんだった。岩田さんは体格が良く、逆に関さんは小柄だ。


「あれ…誠…何してんのや?」


「ウチの子ぉが、ご迷惑かけたみたいで…」


関さんの発言に橘さんは難色を示す。


「ウチの子ぉって…俺はもう『青い淡水魚』から抜けたんですさかい…それに『トラのマーチ』のリーダーさんとマネージャーさんに挨拶しとっただけでっせ」


「チームを抜けたさかいって、わしらの可愛い後輩に違いあらへんよなあ…雨月?」


「そうやな、ちょい来い…あっちに旨そうな串の肉巻きが売ってる、食べよう?」


岩田さんがマイペースに売店を指さしている。


「ちょ、ちょい待ってくれへん…?俺はもうすぐ大会本選なんよ…『青い淡水魚』はシード権があってまだ時間に余裕がある思うけど…」


「大会本選って…竜宮はどうせすぐに負けるんやさかい出場する意味あらへんやろう?」


「雨月の言うとおりや、肉巻き食べに行こう、潤も来るやろう?久しぶりに話したいし」


「あっ、ほな…行きます!」


阿倍君はこんな会話に慣れているのだろうか…。俺と優斗はポカンとしているだけだ。

その間に早くも岩田さんが橘さんを強引に連れていく。


「行くで…」


「ちょお…待ってく…ぐへっ」


岩田さんが橘さんのマフラーを引っ張るので、首が締まりそうになっている。


「橘がご迷惑おかけしました…本人に代わって謝罪します…。トラのマーチのリーダーさんとマネージャーさん…でしたか?」


「はい…」


俺と優斗は名前を名乗るが、関さんは俺達のことを知らないようだ。


「私は関泉です。また改めてリーダーの平田と共にご挨拶させて下さい。ほな…」


きっちり一礼して関さんは3人の後を追いかける。


「小林さん…今のは何だったんでしょう?」


「分からん…分からんが…俺は橘さんの気持ちが分かるような気がする」


(犬のように扱われる感じ…俺が春樹さんに受けてきた行動と同じ匂いがする…いや、どちらかというと不破さんか…?)


考えるのはやめよう。昔のことだ。


「優斗…そろそろ大会が始まるし、俺達は応援席に移動するか?」


「そうですね…そうしましょう…」


飲み物を買って席に着く。


司会進行はちょっと有名なお笑い芸人だった。


本選大会に出場するチームは「ドッグタグ」、「青い淡水魚」、「黒猫のタンゴ」、「眠れる森の小鳥」「運命の赤いリボーン」「竜宮の召使」だ。



第1回戦――「眠れる森の小鳥」VS「黒猫のタンゴ」


市川 菜月  VS 森  咲弥

杉本 美紀  VS 山崎 斗真

花崎 詩織  VS 石井 樹希



司会者のお笑い芸人が呼び込むと、音楽が流れる。左側から「眠れる森の小鳥」、右側から「黒猫のタンゴ」が出てくる。



眠れる森の小鳥は、高橋星羅さんを先頭に3名出てくる。


「詩織さん、この大会に出場するためにレギュラー争いを頑張ったって聞いてます」


「俺も聞いてる。女子のチームは色々と細かいルールが多いし、忖度も大変だって話しだな…」


眠れる森の小鳥に入った花崎から、交流会が終わるたびに話しを聞いてほしい、と電話がかかってくる。




「眠れる森の小鳥」VS「黒猫のタンゴ」2対1で眠れる森の小鳥の勝ちだった。


拍手を送ると、花崎が俺達を見つけて、手を振ってくれる。


わぁーパチパチパチパチ…!!


花崎が観客に向けて手を振る図…のようになり、アイドル並みの歓声が沸き起こる。


「大会が終わったら詩織さんに挨拶に行きませんか?久しぶりに話したいです」


「そうだな…時間があればそうしようか?お昼はドッグタグの田中さんと吉川さんからインドカレーを一緒に食べよう、と誘いを受けている」


「いつものコースですね、僕も楽しみです!」


今日の優斗は機嫌がいい。

学校のテストも終わって、もうすぐ冬休み、と楽しそうにしている。




第2回戦――「運命の赤いリボーン」VS「竜宮の召使」


中村 裕子  VS 橘  誠

加藤 理沙  VS 多田 颯太

本谷 百合花 VS 石上 亜須磨



『それでは第2回戦を始めます。出場者の皆様はステージにお越しください』



右側から「竜宮の召使」チームが出てくる。橘さんはマフラーを外していた。


「橘さん…大会に間に合って良かったですね…」


優斗がホッとしている。


「だな…肉巻きを食べたのかな…?それともあの二人から逃げたのかな…?ちょっと気になるよな」


「はい、本当に…。今度、潤君に聞いておきます」


左側から「運命の赤いリボーン」チームが出てくる。こっちは全員が赤いリボンを結んでいる。



対戦が始まる。


竜宮の召使の3人は上手いと思う。


「僕…「竜宮の召使」がプレーするところをちゃんと見たことがなかったんですけど…面白いですね。危なかっしい…というか見ててハラハラしますけど、皆さんお上手で…「青い淡水魚」とは違った頭脳プレーを見ている気分になります」


優斗の解説を隣で聞きながら観戦した。


「運命の赤いリボーン」VS「竜宮の召使」0対3で竜宮の召使の勝ちだった。




見応えがあった。


「やっぱりトレバトは楽しいですね…次の大会は絶対に本選まで進みましょうね!」


「そうだな」


「あっ…でも、夏の大会まで半年もありますね…」


「それなんだが…実はさ…優斗に内緒でトレバト4の制作発表会を見に行ったんだ」


「そうなんですか…?」


「うん、優斗はバイトだったから誘わなかったけど…その中で発表があったんだ。来年の2月にトレバト3の最後の大会をやることが決定したって」


「トレバト3の最後の大会…?」


「そう…その大会のエントリー、今日で締め切りなんだ…どうする?応募するか?」



2008年12月21日、クリスマスプレゼントをもらう子供のような優斗の表情を見て、俺は答えを確信する






インドカレー屋さんに向かう途中の会話――


「…トレジャーバトル4の制作発表会、誰と行ったんですか?」


「田中さんとだよ。俺は途中で帰ったけど…」


「…どうして途中で帰ったんですか?」


「遠藤さんから電話が来たんだ…優斗の様子が変だって…それで優斗を迎えに行こうと思って午後は帰ったんだ…」


「そう…だったんですね…」


「うん…だけど…結局迎えは必要なかっただろう?午後からはトレバト個人戦で宮永さんが優勝したって話しだし、見逃したのは残念だった」


「それは…すみませんでした…」


「ウソだよ、冗談…でもあれだよな…迎えに行かなかったのは、ライア君に優斗のそばに自分がいるから大丈夫ですって電話で言われたからで…優斗とライア君は本当に仲良しなんだなって感じだよ」


「………ハァ」


「うん…?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ