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<ティフェレト編>31.謁見

31.謁見



 王への謁見の日が決まった。

 王室クエストの2つを達成し、特にフォルテッシモをクリアした功績が大きかったようで今後の王室クエスト対応に使えるとでも思われたのだろう。

 スノウ一行は、周りを警戒してノーンザーレから魔物討伐のフリをして馬車で平原に出てきていた。

 そこでキャンプを張る形で作戦を整理しようとしている。


 「なんか随分あっさりしてるじゃねぇか。まぁ深く考えたって仕方ねぇ!ばっちり挨拶してこい!がはは」


 ゴーザはスノウの背中をバチンと叩いた。


 (この王との謁見でおれたちの進む方向が決まると言ってもいい)


 だが、スノウにはひとつ引っかかるところがあった。

 ソニアックの立ち位置だ。

 彼らは今スノウの仲間として共に行動しているが、元々というより本来はユーダの護衛を任されているリュラーだ。

 素直に作戦を伝えてもよいのか。


 「ソニア、ちょっといいか?」


 「はい、スノウ」


 考えていても仕方ないと思い、直接問いただすことにした。

 あくまでスノウ自身の感覚による判断だが、駆け引きで相手の心の内を探って判断するより、直接ストレートに聞いた方がよいと思ったのだ。


 エスティやゴーザはスノウのソニアへの声がけに状況を察し呼び止めるようなことはしなかった。

 ゴシップ好きなレンがこっそり盗み聞きしようと立ち上がったのをエスティが恐ろしい形相で睨みをきかせ制止した。


 しばらく離れたところでスノウが切り出す。


 「ソニア、ソニックも聞いていると思うがおれとエスティはこの世界を救って、ホドという別の世界に戻らなければならない。それに同行してくれているゴーザやレン、ケリーは既に仲間だし、この世界を救った後どう行動するのかはまだ決まっていないが、おれは彼らのその後についても考えた上で進むべき道を決めて行動しようと思っている。そして君たちも今ではおれの大切な仲間だ」


 ソニアは少し目を潤ませながらスノウの話を真剣に聞いている。


 「今おれたちは決断を迫られている。彗星衝突を信じスメラギに加勢するか、ユーダを信じるか‥‥だ」


 「はい」


 「おれたちの行動は、おれたちが決めるべきだと思っている。つまり、スメラギにつくか、ユーダにつくかではなく、おれたち自身が判断したもので行動するという意味だ。そしてその判断を間違えるとこの世界が終わるか、どういう意志によるものかはわからないが何らかの支配下に置かれる状況のいずれかになるだろう」


 「はい」


 「おれはバッドエンドを避けたい。だから自分たちで判断し、場合によっては両方を敵に回すことも覚悟している。そしてここからは本当に信頼し合える仲間と行動しないとおれたちが描く結末にたどり着くことはできないと思っている」


 「‥‥‥‥」


 「率直言う。おれたちについてくるか、ユーダの配下としてここで別行動をとるか決めてほしい」


 「‥‥‥‥」


 ソニアはついに来たかという苦しそうな表情をしていた。

 しばらく沈黙したあと、ゆっくりと口を開き始めた。


 「スノウ‥‥。今弟とも話をしました。結論から申し上げると一旦離脱します‥‥」


 「そうか‥‥」


 スノウは一瞬残念そうな表情を浮かべたが、あらかじめ覚悟していたのだろう、すぐにいつもの表情を取り戻した。

 悪戯に引き止めるわけでもなく、かと言ってソニアたちが不要な存在として突き放す訳でもなく、ソニアたちの決断を仲間としてしっかり尊重して受け止めたという表情だった。


 「スノウ。私たちは‥‥上手く説明できないのですが、あなた様を心の拠り所としています。これは単純にこの短期間で一緒に行動させて頂いた中で至った想いというより、なんでしょう‥‥はるか昔からあなた様のものである事が決まっていて、獄寒の地に暖をもたらし、地獄の業火に静寂をもたらすあなた様の炎と氷だと言うことが決定づけられていると納得していました。これは日に日に言葉というより自然と響く音の中で心が納得しているという感覚です」


 「‥‥‥‥」


 「そして昨日、不思議な夢を見ました。2人揃って同じ夢をみたのです。分岐点の前に立つ私たち2人の前に、はっきりとは見えませんでしたが神々しい光を放った腕だけの存在が現れ、分岐点の片方を指さしました。その先にはスノウ‥‥‥あなた様の温度というか音感というか魂の雰囲気が立ち込めていたのです。そしても片方には大司教様を始めとしたスノウ以外のあらゆる存在が感じられました」


 「‥‥‥‥」


 「これは、今後訪れる自分の進むべき道を選択する際に常にあなた様と共にあれ、という神のお告げだと受け取りました」


 「神?」


 「はい。初代王プレクトラムとズュゴンにそれぞれの役割を与えた存在です。名前は存じ上げません。私ども地上の生き物が知り得る存在ではありません。ただただ信ずる存在の神です」


 ソニアはそう言い終えると苦しい表情を再度浮かべた。


 「ですが、私たちはリュラー。リュラーは守護すべき主人を得る時にこの身が滅するまで仕える従属血判を交わしております。それを無効にするためには大司教様の許しが必要です」


 そう言い終えるとソニアの表情はうっすら涙を浮かべさらに苦しいもになった。


 「スノウ。しばしお時間を頂けませんか?必ず大司教様の許しを頂き心身共にあなた様の従者として魂が尽きるまでお仕えできるようにいたします」


 スノウは、やさしく抱きしめた。


 「君たちの想いは伝わった。おそらくリュラーの掟は軽くないのだろう。そして万が一、ユーダの心の内に邪悪なものがある場合、君たちの身にどれほどの危険が訪れるのかも想像できない。だけど、ソニア、そしてソニック。おれは君たちを待つ。おれには君たち2人が必要だ」


 ソニアは抑えきれない嗚咽を声だけは出ないように堪えながらスノウの胸に顔を埋めた。

 スノウはソニアの頭に手をのせ、話を続ける。


 「だが、元々の依頼は王が偽物かどうかを確かめるもので王の謁見の場で声を記録しユーダに真偽を確かめてもらうことだったね。そこまでは同行しよう」


 「はい‥‥」


 スノウはソニア、そしてソニックをふたりの気持ちが落ち着くまでしばらくの間抱きしめていた。



・・・・・


・・・



 スノウはソニアックを信頼し作戦会議に加えていた。

 エスティたちにも彼女たちが一旦離脱することを伝えていた。

 ゴーザは少し納得のいかない表情を浮かべたが、彼もまたソニアックを好いているひとりで複雑な気持ちなのだろう、言いたい事を飲み込んでいるようだった。


 「おれの作戦は、ソニア、ソニックは予定通り王の声を記録する。それをユーダの元へ持ち帰ってそのまま離脱だ」


 一同の雰囲気が少しだけ暗くなる。


 「離脱といっても一時的だけどな」


 そう付け加えた後も話を続ける。


 「そしておれたちはおれたちで、王が本物かどうかを確かめる行動を取る」


 「つまり、ユーダのことを信じるのは危険だからってことだな?」


 「そうだ。そこでおれの考えた作戦はこうだ」


 スノウは順を追って説明し始めた。

 謁見の間に行くのはスノウとゴーザ、そしてソニア、ソニックだ。

 だが、謁見の間そのものに行くのはスノウとソニア、ソニックだけになる。

 実はゴーザは音変化したレンであり、途中で王の側近に音変化し潜入する。

 その後、側近に変化したレンの手引きによりエスティとゴーザは王宮に潜入し、王に接触する。

 そして王がスノウとの謁見を終えた後、自室に戻るタイミングで3人で入り込み、王に直接問い正すという作戦だ。

 つまり謁見後に王城に留まり潜入する手引きは音変化しているレンが行うというレンが要の作戦となる。

 ちなみにケリーは馬車で待機とした。


 「なるほど、それでレンのボウズがこの作戦の主役って言ったんだな?」


 「ええ?!オイラが主役っすか?!えへへ!まぁそんな感じはしたっすけど、このタイミングで来ますかぁ?!」


 わかりやすい青年だった。

 頼りにされればされるほど上機嫌になる。


 「そうだ。レンが主役だ。逆に言えば、レンが失敗すればこの作戦は失敗する。最悪死人がでるかもな」


 意地悪いスノウのコメントに、ニヤニヤしていたレンは表情を一変させ青ざめた。


 「そしてみんなに言っておきたいことがある」


 「なんだよスノウ、改まって。他にもなんか作戦でもあるのか?」


 ゴーザだけでなく、ソニアック、エスティ、レンもスノウから何を言われるのか注目している。


 「あ、いや、作戦とかじゃなくてだな。おれたちは既に仲間だ。そしてそれなりに人数も増えてきた。トライブを結成してもいいと思うんだ」


 「トライブ?」


 「まぁ、なんて言うか、深い絆で繋がった仲間って思ってもらっていい」


 「おお!」


 「トライブには通常名前があるんだが‥‥」


 「まさか、スノウ!」


 エスティは少し嬉しそうにスノウを見つめる。


 「ああ。おれ達仲間の絆としてこのトライブに名前をつけようと思う」


 みんなどんな名前になるかワクワクしているような顔になっている。

 エスティは次の展開が分かっているようだ。


 「レヴルストラっていうトライブ名にしようと思う」


 「どういう意味だ?」


 「意味?‥‥意味はわからないけど、おれやエスティがホドにいた時に所属していたトライブ名なんだ。信頼できるとても大切な仲間との絆を表している名前だ。そしておれはホドの仲間同様にお前達を大切な仲間だって思っている。だからその名前をこのトライブにつけたいって思ったんだ」


 『‥‥‥‥』


 数秒の沈黙がおこる。


 「いいじゃねぇか!」


 「いいっすね!」


 「レヴルストラ!なんて素敵な名前でしょうか!」


 「レヴー!」


 みな喜んでいる。

 エスティは何かを思い出しているのか少し涙ぐんでいる。


 「ありがとう。よし今日からおれたちは新生レヴルストラ!言い換えればレヴルストラ2ndって事だ!切れない絆で繋がった仲間だ!」


 ソニアは涙ぐんでいる。

 みな嬉しそうに、そして決意新たにした表情を浮かべている。


 「さぁ、では出発だ」


 「ちょ、ちょアニキ!そう言えば最悪死人がでるってどういうことっすか?!ねぇ!アニキーーー!」


 レンはスノウやエスティにまとわりついて騒いでいた。

 ケリーはゴーザにおぶさって嬉しそうにしている。

 涙ぐんでいたソニアはそんな彼らのやりとりを後ろから黙ってみながら少し寂しそうだった。



・・・・・


・・・



―――ラザレ王宮都 王宮入り口―――



 スノウとゴーザ、そしてソニアは王宮前に来ていた。

 作戦通りゴーザはレンが音変化している姿だ。

 目の前に巨大な門がある。

 その前に衛兵が10名ほど警備として立っている。

 スノウは王への謁見の招待状を衛兵の1人に見せて通してもらうように話をした。


 「ほう、貴様我らが王への謁見が許されているのか?貴様のような冒険者風情が我らが王の前にひれ伏せるなど、本来は有ってはならないのだがな」


 「おい、待て。貴様はドワーフか?よく見れば大罪人ゴーザ・ロロンガではないか。よくここに足を運べたな。私に権限があったら即刻首を切り落としてくれたものを」


 「いやぁ、だんなすみませんねぇ。この通り俺も呼ばれてるんでねぇ」


 「フン!せいぜい一時の栄誉を堪能しておけ」


 「あまり無礼な物言いはあなたの出世に響きますよ?」


 ソニアは、被っていたフードを外し上着を開いて胸についているリュラーの証である紋章を見せた。


 「こ!これは大変失礼しました!」


 衛兵は罰悪そうに顔を赤らめスノウたちを中へ通す。


 プゥ〜


 通り際ゴーザは故意に放屁し、まるで子供のように舌をだして意地悪そうに笑みを浮かべた。

 嫌味な衛兵たちのいる場を抜け中に入るスノウたち。

 ホドのヴォヴルカシャ蒼市にある元老院大聖堂以上の大きさと豪華さを誇る王城には多くの兵や給仕たちが従事していた。


 (この人数ならレンとエスティ、ゴーザが紛れ込むのに心配はいらないな。あとはわらしべ長者のように王に近い人物に音変化していけばいいんだが、そこはエスティもいるし問題ないだろう)


 スノウは少し安心した。

 城の内部に入るとゴーザ(レン)は驚きを隠せない表情であたりをキョロキョロと見渡している。

 城の外観もそうだが、内部もファンタジー世界にお決まりの中世ヨーロッパの雰囲気を(かも)すものだったが、ところどころ部分的に近代科学によって手を加えられている。

 灯りはほとんどが電灯になっており、治水もかなり施されているようで、フロア毎に水洗トイレが完備されていた。

 ゴーザ(レン)はいちいち物珍しそうに触ったり動かそうとしたりと寄り道ばかりしており、付き添い人も流石にイラついたのかゴーザを(たしな)めた。

 しばらく進むと行き止まりになったが、目の前にある壁が自動で開いた。

 上層階にある王謁見の間へはエレベーターを使って行くらしい。

 当然ゴーザ(レン)は驚いている。


 「こりゃぁすげぇな!誰が動かしてんだこの箱を?!」


 「ぷっ」


 ゴーザ(レン)の子供のような感想に、付き添い人が思わず吹き出す。

 これ以上あれやこれやと触ったり騒いだりしないようにスノウはゴーザ(レン)にエレベーターが動く仕組みを説明し時間稼ぎを試みる。


 「この箱にワイヤーが付いていてぶら下がっている状態なんだ。上に滑車が付いていて下にモーターと言われるワイヤーを巻いたり戻したりする装置がありそれと繋がっていて、それをエレキ魔法で動かしているんだ。モーターは簡単にいうと、永久磁石と銅線を巻いた軸で出来ていてそこにエレキ魔法を伝えると磁力一定方向に働くちからによって、軸が回転するっていう仕組みだよ」


 「ほぉ!!なるほど!確かに磁石のくっつく力と反発する力を上手く操作できれば、軸を回転させて巻いたり戻したりできる!そのもぉたぁっての見てみてぇな!職人としてのドワーフの血が騒ぐな!がはは」


 意外とレンは頭が良いようだ。

 スノウは自分の説明が少し難しいと知りながら説明したのだが、納得したゴーザに扮したレンの理解力とその演技力に驚いた。

 一方先ほど思わず吹き出した付き添い人は、スノウの知識に驚いていた、というよりスノウの説明を理解出来ず、逆に理解したゴーザ(レン)に負けたと言わんばかりの悔しい表情を浮かべている。

 そうこうしている内に謁見の間のあるフロアについたようだ。

 エレベーター内に表示があったが、階層表示ではなく、フロア名の表示だったため現在どの階にいるのか不明だった。

 感覚的には15階程度に思えた。


 エレベーターを出ると真っ直ぐ伸びた長い廊下があり、一同はその廊下を進んでいく。

 しばらく歩くとより位の高い従者と思われる者がふたり豪華なドアの前で待っている。


 「それではわたくしはこれで失礼します」


 付き添い人は自分の入れるエリアはここまでと言わんばかりにドア付近にいる側近から少し離れたところで頭を下げて帰っていった。

 スノウはゴーザ(レン)にアイコンタクトを送る。

 その合図を受けてゴーザ(レン)は行動を起こす。


 「あいたたた‥‥これから王様に会うと思ったら緊張で急に腹が痛くなっちまった‥‥」


 「何?!そのすぐ横にトイレがあるだろう。まだ少し時間があるからさっさと済ませてしまえ」


 「あ、いや‥‥こんなすげぇ最新な設備のトイレ、どう使えばいいか分からねぇ‥‥そこのお偉いさんのダンナ‥‥ちょっと教えてくれねぇか?」


 「はぁ?!全くこれだから、遠慮を知らないドワーフは好きになれんのだ」


 面倒くさそうに従者の1人がゴーザ(レン)に付き添ってトイレに入る。


 「ついでに私も行かせていただきます」


 スノウも後を付いてトイレに向かう。

 ソニアは残った従者に話しかけて注意を自分に向けていた。

 数分後、スノウと従者の2名がトイレから出てきた。


 「あいつはダメだな。何か変な者でも食べたのだろう。とても謁見時間に間に合わない。今回あいつには気の毒だが、そちらのリュラー様とこの冒険者の2名で謁見ということにしよう」


 「わかった。それは仕方ないな。王にドワーフ風情が謁見できるなどそもそもあってはならないし、あいつは元々犯罪者だからな。かえって都合がよかったわけだ」


 2人の従者はそう会話すると、スノウとソニアを少し下がらせて謁見時間まで待つよう指示した。

 トイレから戻ってきた従者はもう一人の従者に見えないようにスノウとソニアにウインクした。

 当然トイレにはロープでがっちりと縛られガムテープのようなもので声を出せないようにされた本物の従者が泣きながらもがいていた。

 時間になったようだ。

 突然扉が開く。

 少し暗かった廊下に目が慣れていたが、突然視界が開け一気に光が差し込んだことで眩しさのあまり目を背けてしまった。

 ゆっくりと前方を見ると恐ろしく広い部屋が見えてきた。

 奥には数段の段差があり、その上に明らかに王が座るはずの豪華な玉座が見えた。

 そこまでの30メートルほどの赤を基調とした絨毯の両縁に数名の屈強な兵士たちが等間隔で立っていた。

 どうやら警備のためのようだ。

 列の先頭にはそれぞれ騎士隊の総司令と副総司令が立っているとのことだった。

 グコンレン軍討伐で出発事に挨拶した総司令の男、アルフレッド・ルーメリアと軍を指揮していた副総司令のザリウス・ルーメリアだ。

 そして行動を共にしたジャンジャンことジャン・ジャングレンも列末席に立っていた。

 絨毯を進むと、スノウの登場に気づいたザリウスがいきなり寄ってくる。


 「おお!鬼神殿!」


 「??」


 「おお、これは失礼、俺は副総司令のザリウスだ。先のグコンレン軍との戦いでの貴様の見事な戦いぶり、あれはまさに鬼神そのもの!俺は強いやつが大好きでな。また一緒に戦争したいものだ、わっはっは!」


 スノウはなんのことやら状況が把握できずにキョトンとしていたが、その後のコメントで察した。

 どうやら副総司令に気に入られたらしい。


 「ザリウス!間も無く王の御出ましだぞ」


 「ちっ」


 総司令のアルフレッド・ルーメリアが注意した。

 以前ソニアが説明してくれた通り、アルフレッドはザリウスの父親で容姿や傷の多さはそっくりだったが、アルフレッドが紳士的なのに対し、ザリウスには粗暴さがみられた。


 (あの2人には確執があるのか?)


 王の側近によってその場にいる全員が(ひざまず)かされた。

 不思議な音色の打楽器がならされ奥から人影が現れた。


 「王様のおなりです!」


 豪華な服に煌びやかな紅いマントを羽織り、王冠をかぶった一眼で王様とわかる出立ちの男がゆっくりと現れた。

 スノウは片膝つき首を垂れた状態からかろうじてその姿を捉えた。

 王はゆっくりと玉座に腰を下ろした。

 ソニアは声を記録するために小さい弓の形をしたアイテムを密かに作動させている。


 「余がこのラザレの王、ムーサ・プレクトラム・マッカーバイである」


 王の威厳のある声が広い謁見の間に響いた。





12/29修正

・・・・・・・・・・・・・・・・・

3話/週くらいのペースになります。

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