<ティフェレト編>30.彗星破壊計画
30.彗星破壊計画
「この世界を救う手とは?」
「音魔法だよ。この世界を支配している音はエネルギーを蓄える事ができる。破壊の力を蓄えた音をエレキ魔法で拡大させ、それを巨大なこのティフェレトを覆い尽くすほどの網のような音のバリアを彗星に向けて放つというものだ。その装置は私が開発する。半月もあれば作れるだろう」
「そんな短期間で?!」
「元々宇宙船も開発していたからね。それを利用する」
「宇宙船?!」
「ああ。私は宇宙から落下してきた。だから宇宙にその戻り口があると推測していた。だが、天体望遠鏡で観察したのだが、私が渡ってきたような眩い光の川は存在しなかった。この世界には科学では説明し得ない事象がいくつも存在するからね。あの光の川はおそらく多次元で繋がっている回廊なのだろう。単純に宇宙に出たところで戻れるものではないという事が証明されたわけだ。そして並行して製作していたのが宇宙船だ。もちろん地球に戻るためじゃない。このティフェレト以外にも不思議な魔法というエネルギーを使える世界があると推測したわけだ。疼くじゃないか、科学者としての探究心がね。だが背に腹は変えられない。宇宙船などはまた作ればよいのだからね」
(この男凄すぎる。一体何を企んでいるんだ?!)
スノウは爆発的な発明力、開発力を有するスメラギに驚きと警戒心を持っていた。
この世界を牛耳る事も簡単だ。
「そう警戒してくれるな。世界征服しようというわけじゃない。私はね、今最高に楽しいのだよ。自由に発明し、それを何のしがらみもなく使い喜ぶ者たちがいる。かつての地球にあった最も醜く不毛な経済原理というものが存在しないんだ。いや、いずれそう言うくだらないものは出てくるはずだとは思う。だが、予測できれば排除は簡単だ。おっと喋りすぎたね」
「それで私にできる事とは?」
「ああ、そうだ。君はたいそう強いそうじゃないか。先ほど手合わせしたテッセンがそう言っていたよ。そして別のリュラーを仲間として連れている」
「はっきり言ってくれて構いませんよ。危険なオファーがあるのでしょう?」
「話が早いね。そうだ、かなり危険なお願いがある。当てがなければ最悪テッセンを行かせるつもりだったが、ちょうどいいタイミングで君たちがやってきたというわけだ」
「それで?」
「禁断の地は知っているかね?」
「いえ」
「マルシュアースを抜けた北側にあるのだが、そこでとある金属を取ってきてほしいのだよ。マクロニウムという名の金属だ。これがその外観だ」
スメラギが机の一部に触れるとホログラムのように空中に映像が映し出された。
そこには綺麗な銀色の光り輝く金属が見えた。
だが、シルバーともプラチナとも見分けのつかない外観といえばそうで、仮に目の前に置かれても見分けがつかないようなものだった為、スノウは片方の眉を吊り上げ怪訝そうな表情を浮かべた。
「絵に描いたような理解不能という表情をするね君は。見た目はシルバー系の金属だから見分けがつかない事を心配しているのだろう?これは現物を特定するための第一ステップだ。次が重要なのだよ」
「というと?」
「音だ。弾いてみると分かる。音がなかなか止まないのだよ。恐ろしいほどの音伝導率の金属でね」
そういうとスメラギは500円玉くらいの大きさの輪っかを手でつくり話を続ける。
「これくらいのマクロニウムは持っているのだが、そこに音を吹き込むとかなり長い時間持続する事が実験でわかっていてね。例えば、炎音をマクロニウムに転写すると軽く24時間は同温を維持し続ける。地球に持ち帰るとエントロピーの観点では説明がしづらい代物で世界がひっくり返るほどの貴重な金属なのだが、あいにくこの世界ではこの金属を使いこなすほどの知識も科学力もないのでね。その禁断の地に眠るマクロニウムは量的に困ることはないのだが、ただ単にそれを入手するのが難しいところにあるという状況で困っているわけだ」
「そのマクロニウムという金属を取りに行けばいいんですか?」
「ああ。だが量が量なだけに運ぶところまでお願いするつもりはない」
「まさかたどり着くだけでいいなんてことはないですよね」
「もちろんだ。危険なお願いと言った理由がそこにはある」
「何があるんですか?いや、いる‥‥かな」
「そうだね。恐ろしく強い魔物やドラゴンが棲むと言われている。君にお願いしたいのはそこに巣食うドラゴンを倒して、マクロニウムを採集できる状態にして欲しいという事だ」
「ドラゴンですか‥‥どのようなドラゴンなのですか?」
「ホワイトドラゴンと呼んでいたね」
「呼んでいた‥‥とは?」
「既に何度かマクロニウム採集に部隊を送っているのだがほぼ全滅しているのだよ。王室騎士やかなり名の知れたキュリアなどにオファーをかけていたのだがね。かろうじて帰ってきた者が恐ろしく凶暴な白い竜に殺されたと。それをみなホワイトドラゴンだと呼んでいたんだ」
「なるほど」
(マジかよ‥‥ドラゴン。いよいよ本格的に強力な魔物との戦闘がありそうだ。これはエスティと合流しないとならないな‥‥)
「ホワイトドラゴンを倒してくれればあとは王室騎士どもやキュリアを護衛として使ってイーブイで大量に運ぶ。強い魔物が多いらしいがそれなりの兵力を揃えておけば持ち帰る事はできるだろう」
・・・・・
・・・
スノウは仕方なくスメラギのオファーを受け、ホワイトドラゴン退治に向かう事となった。
だが、一旦ユーダの塔に戻ってきていた。
エスティたちと合流すべきだったが、彼女たちがまだノーンザーレに戻ってきておらず時間ができた為、スメラギとの接触、そして彗星の衝突の件を一度状況報告すべきと判断したからだ。
白い塔のユーダの部屋に再度足を踏み入れた。
そしてスメラギのいる領主邸での話を伝える。
「興味深いですね。俄には信じられませんが、エレキ魔法を発明し、この世界にはない科学力で様々なものを生み出している事から見れば信じてしまうのも無理はない」
スノウはスメラギが自分と同じ日本からやってきた人物である事は伏せて話をした。
スメラギと何らかの関係があるのではと疑われるのを避ける為だ。
「それで、ホワイトドラゴンを倒す依頼を受けたと言う事ですね」
「ああ」
「そのマクロニウムはスメラギに渡すべきではないでしょう。この世界で音をその場に止め続け力を保持し続けるというのは非常に強力な武器にもなります。彼が本当にこのティフェレトを救うためにそのマクロニウムを使うとも限りません」
「だが、ティフェレトが無くなる場合、スメラギ自身も消滅するわけだから彗星を破壊することに使うんじゃないか?」
「スノウさん。あなたはお人好しなようだ。私には目と口がない分音の質を視る力が異常に強い。あなたの体に残ったスメラギの残音を見ても、そして彼のこれまでの素行をみてもいずれも恐ろしく狡猾で利己的であることがわかります」
「どういう意味だ?」
「つまり、天体望遠鏡とやらが映した彗星は彼のでっち上げたもので、あなたのような強者を見つけてホワイトドラゴンを倒させるための芝居ということです」
「はぁ?意味がわからねぇんだけど!」
「彼はどうしてもマクロニウムが大量にほしい。だが、ホワイトドラゴンが邪魔で排除できない。とすればあなたがスメラギ氏だったらどうしますか?」
「ホワイトドラゴンを倒せるやつに戦わせる‥‥」
「でもそんなオファーをリスクをおかしてまで受けますか?」
「いや‥‥なるほど、否応なしにオファーを受ける環境に見せて世界に危機を目の前にして同じ境遇から協力体制を作る心理的囲い込みでホワイトドラゴン討伐を断れないようにしたってことか‥‥」
「その通りです」
「なんという狡猾なやつだよ‥‥」
「ですがスノウさん。これはチャンスです。マクロニウムを逆にこちらで手に入れるのです」
「どう言うことだ?」
「マクロニウムを握ったものがこの世界を支配できるとすれば、それをホワイトドラゴンを倒しそのまま奪ってしまえば勝ちではないですか」
「それはそうだけど、どうやって運ぶんだ?」
「この塔は古代の魔法科学力でできています。転送陣を作ることによってこの塔内に転送させることができますからそれを使うのです」
「なるほど。それは分かったが、本当に彗星が落下してくるようなことがあったらどうするんだ?」
「その時はスメラギに渡せばいいでしょう」
「そうだな」
「ですが、これだけは覚えておいてください。彗星衝突が虚言である場合、スメラギの手によって王がすり替わっている可能性が高い。ホワイトドラゴン討伐に王室騎士を派遣できる力を持つ者など国王しかいませんから。それをスメラギ氏の極めて個人的な要望で派遣しているというのは王を裏で操っている可能性が高い。従って、ホワイトドラゴン討伐前に王に謁見してください。スメラギ氏に頼めば許可されるはずです。既にスノウさんたちは、王室クエストのフォルテシモをクリアしていますから全く問題ないはずです。そこで私が偽物かどうかを見極めれば彗星の話も虚言だと断定できますから確信をもってホワイトドラゴン討伐後の対応が取れます」
・・・・・
スノウたちはユーダの塔を後にした。
そのまま馴染みのある宿屋に移動しエスティたちの帰りを待つことにした。
「スノウ、王への謁見の手続きをしてきます」
ソニアはそう言うと宿屋を後にしERNと呼ばれるリニアモーターカーに乗ってラザレ王宮都に向かった。
残ったゴーザが珍しく不安そうな顔をしている。
「どうした?ゴーザ」
「あ、いやな‥‥なんつぅか‥だな‥‥」
「なんだよ、らしくないな。いつもみたいにはっきり言えよ」
「あああ!あのだなぁ!あのユーダってのはどうも生簀かねぇ!いや、スメラギも生簀かねぇがあのユーダってのは何つぅかどす黒い感じがすんだよ」
「また惑わすこと言ってくれるな」
「だってよぉ‥‥。俺ぁお前が気に入った。べっぴんソニアもな。だから心配なんだよ。べっぴんソニアはあのユーダってやつのリュラーなんだろう?あの娘の前じゃぁ話せねぇと思ってな?だからスノウ、お前に言ってんだがよ」
「根拠は?」
「それがねぇから言いにくいってんだろ?」
「じゃぁ王に会って確かめるしかないじゃないか」
「もしあのユーダが嘘をついたらどうする?!」
「俺たちで確かめるんだよ」
「どうやって?!」
「俺に考えがある‥‥」
―――翌日―――
「ただいまー!」
「おお!おかえりケリー!」
スノウに向かって飛んで抱きつくケリー。
それを悔しそうに見つめるエスティ。
ケリーの前ではデレデレになるスノウ。
くどいようだが、雪斗時代には考えれない表情であり声色だ。
これが雪斗の容姿だったら最高に気持ち悪い。
エスティも (半分自分を無視していることに拗ねているが) スノウの態度に汚いものでもみるような嫌悪感を抱いた目線を送っている。
スノウはケリーを抱き抱えて喜んでいる。
「おいおい、そろそろ紹介してくれたっていいんじゃないか?」
ゴーザが放っておかれている状態にしびれをきらしスノウに紹介を促した。
「おお、わりぃ。えっとこのブ男はドワーフのゴーザだ。そして紫髪の女はエスティ、美しい碧い羽のハルピュイアはケリーだ」
ゴーザは自分の紹介があまりにひどいものだったので、鬼のような形相になっている。
「アアアアアアニーーーーーキーーーーー!!!完全にオイラ忘れてるでしょ!」
「わりぃ」
「ほんとっすよ!反省してくださいよ?」
「誰だっけ‥‥」
「ぎゃぁぁぁぁあ!!!!」
レンは拗ねてどこかへ走り去っていった。
「今のがレンだ。次の作戦の要になるやつだよ」
「そんな重要人物にあんな仕打ちでいいのか?!」
「いいんだよ」
「いいのよ」
「いいのー」
「息ぴったりじゃねぇか!がはは」
「がははー」
ケリーがゴーザの真似をする。
「嬢ちゃん、よろしくな!」
「よろしくなー」
ケリーとゴーザはすぐ仲良くなった。
スノウは少し安心した。
会話できているし馴染んでいるとはいえ、魔物は魔物だ。
普通なら警戒するところだが、ゴーザはドワーフで数奇な運命を辿っているせいもあってか、偏見はないようだった。
(しかも、自分の師匠が神で、今は怪物になってるくらいだからな‥‥)
「よろしくゴーザ。あたしはエスティ。そんじょそこらの女性と一緒にしてくれた日にはこの剣で八つ裂きにしてあげるからそれ相応の応対で頼むわね」
「お、おう‥‥」
(ほー、エスティの横柄な態度にゴーザのやつ気圧されたか?ははは)
ガタン!!
レンが怒った表情でドアを開けて戻ってきた。
「アニキ!誰も追いかけて来ないとか犯罪っすよ?!」
レンはブツブツいっている。
「ゴーザ、こいつはレンだ。レン、ゴーザだ」
「ア、アニキぃぃぃ〜よろしくっす!」
レンは紹介してもらえたのが余程嬉しかったのか、一瞬で表情が変わり涙目で笑顔になりながらゴーザに挨拶をした。
「よろしくな、ボウズ」
いつの間にか (ソニアとソニックを数に入れて) 7人のパーティになっていた。
スノウはこのパーティーに名前をつけることにした。
自分がスノウと名乗るきっかけをくれた場所。
そして自分を変えてくれた繋がり。
(もちろん、レヴルストラだ)
12/29修正
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忙しさにかまけて執筆がすすまず・・・。気合をいれて進めます!




