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<ハノキア踏査編> 50.最古の神の力

<レヴルストラ以外の主な登場人物>


【アヌ】:最古の神族のひとりを自称する得体の知れない存在。

     赤子くらいの大きさで頭部のような形の部分と胴体の部分で構成された見た目で、

     頭部のように見える部分には目や鼻の穴、耳、口、髪の毛がなく、胴体に見える

     部分には四肢がない。そのため思念で会話する。

50.最古の神の力


 “スノウ船長とともに侵入した異物を確認”


 『!!』

 「リュクス、スノウをスクリーンに映せ」

 “承知しました”


 シルゼヴァがリュクスに指示するとすぐにスノウの姿がブリッジのスクリーンに映し出された。

 映し出された姿はスノウが何かを抱えているようにしか見えなかった。


 「スノウは何を持っているのだ?持っているものが異物か?」

 “異物という表現が適切かどうかわかりません。スノウ船長が手にしている()()は無機物ではなく明らかに生命反応が感じられるのです”

 「‥‥スノウ聞こえるか?」


 シルゼヴァはスノウに話しかけた。


 「ああ聞こえる」

 「お前が手に持っている()()は何だ?」


 “()()とは無礼だな”


 ギィィィィィィィィィィィィィィィン!


 突如ヴィマナ中に不快音が鳴り響いた。

 鳴り響いたと言ってもヴィマナにいる者の脳裏に響く不快音であり、警報のように実際に鳴り響くものではなかったためリュクスには検知できない音だった。


 「ぐ‥」


 シルゼヴァはあまりの不快音に頭を抱えて片膝をついた。

 他の者たちも頭を抱えて苦しんでいる。

 頭の中を虫が駆け回っているような感覚に加え、強烈な頭痛が襲い、黒板を爪で引っ掻くような音が耳鳴りのように響いている状態で、それぞれの感覚が別々にかつ確実に感じられるという拷問のような音であり、耳を塞ごうとも大声でかき消そうとしようとも止めることの出来ないものであった。


 「スノウ‥‥不快音を‥‥止めろ‥‥」

 「?」


 スノウには不快音が聞こえないようでシルゼヴァが何を言っているのか分からなかった。

 スノウの頭部に切れ長の目のオボロが出現した。

 

 「小童。最古の神族とやらに異音を止めさせるんだね。お前の精神には影響はないが、他の者どもの精神には凄まじい不快音が発せられているようだ」

 「え?そうなのか?」


 “アヌだ。僕の名前を覚えられないとは貴様、消し去ってやろうか?”

 「生意気な神だね。食ってやろうかい?」

 “僕を食うだと?カッハッハ!!面白いな新参の妖神よ。気に入ったぞ。試しに食ってみるがいい。僕を食ったとたん貴様の自我は崩壊し、貴様の体は僕の支配下に置かれるがな”

 「ちぃ‥こやつの言っていることは本当だね。全く厄介なものを拾ってきたものだねぇ。目的を果たしたら宇宙の果てにでも放り投げることだね。じゃないと小童、あんたとんでも無い災難を引き受けることになるだろうね」

 「そうなのか?っていうかアヌ。すまないがなおれの仲間に不快音を与えるのを止めてくれるか?」

 “謝罪が先だ。僕を()()扱いしたシルゼヴァとやらに謝罪させろ”

 (げ‥‥名指しかよ‥‥しかもシルゼヴァ‥‥あいつが謝るわけないだろうが‥‥)

 「アヌ、すまない!ここはおれの顔を立てて不快音を止めてくれ!頼む!」

 “ふん。まぁいいだろう。貴様はあの退屈な檻から出してくれたしな”


 ギィィン‥ピィィン‥‥


 スノウ以外のレヴルストラの面々の精神から不快音が消えた。

 

 ドサァ‥‥


 不快音が消えた瞬間に皆その場に崩れるように倒れた。


・・・・・


 スノウ達は作戦会議室にいた。

 不快音が止まって10分後には集まったのだが、機関室から離れようとしないガース以外のスノウ、フランシア、ワサン、エストレア、シルゼヴァ、ヘラクレス、アリオクが着席しておりスノウ以外の者たちは皆警戒していた。

 兎にも角にもスノウの持ち帰ったアヌが何者なのかを確認したいのと、いつまた恐怖の不快音が放たれるか怯えてさえいたのだ。

 

 「おいスノウ。とにかく説明だ」


 シルゼヴァですら不快音は相当辛かったようで、スノウに苛立ちながら説明を求めていた。


 「こい‥か、彼はアヌ。彼曰く最古の神族‥‥つまり超昔の神とのことだ」

 “スノウ。貴様の語彙力は壊滅的だな。無知能め。僕が直々に説明してやる。僕は宇宙最古の神族ヌーグの一柱神アヌだ。貴様らの世界を支配している神は僕らヌーグの模造品に過ぎない。つまり神と呼んで良い対象はヌーグだけなのだ”

 『‥‥‥‥』


 皆何かを言いたそうだったが、アヌの癇に障る言葉となった場合また不快音に襲われるかと思うと何も言い出せなかった。

 その代わり、スノウに対し痛いほどの視線を向けており、この場を取り仕切って結論づけろというプレッシャーを与えていた。

 不快音を知らないスノウは彼らのプレッシャーが何なのか分からずにいたが、何となく怯えている状態だと感じたためか皆を代表して話は始めた。


 「アヌ、自己紹介ありがとう。君は何でも出来て何でも知っているということだな?」

 “愚問だな、無知能め”

 「その通り、おれは無知だ。だから色々と教えてほしい。いくつか質問があるんだが、先ずはこの世界、ティフェレトで魔物に姿を変えられた者たちを元の姿、人族へと戻して欲しい。その方法を知っているんだよな?」

 “愚問だ。何度も言わせるな無知能め。外宇宙から飛来した存在が僕の力の一端を物理法則の方式に変換して施した力だ。戻すのは訳ない。だが、貴様は気にならないのか?”

 「何がだ?」

 “これだから無知能な下等種族は厄介だ。なぜ外宇宙から飛来した存在はこのティフェレトに降り立ち、人族と呼んでいる下等生物を魔物とやらに変えたのか。その理由、いや目的だ”

 「確かに‥‥それは知りたい。だが、急いでいてな。今すぐに魔物化を解いてもらいたい者がいるんだ」

 “ソニック、ソニア。ふたつの精神体がひとつの肉体と精神世界に同居したハノキアでは稀有な存在。そして貴様の仲間。レヴルストラの一員だな”

 『!!』


 皆警戒した。

 あまりにもソニアとソニックについて知っていることが詳しかったからだ。

 皆スノウを見た。

 スノウは目で合図し自分が話をすると伝えた。


 「流石だな。いや当たり前か。全てを知る神だからな、あんたは」

 “愚問だ。さぁソニックとソニアが魔物化した存在をここへ”


 スノウはエストレアに合図しソニア、ソニックの変わり果てた姿、スライムを連れてきた。

 

 “僕の目の前に置け”

 

 エストレアは指示通り、スライムをアヌの前に置いた。


 “スノウ。皆に伝えろ。目を両手で隠せとな”

 「隠す?両手で?」

 “そうだ。これから僕が放つ光は貴様ら下等生物には強すぎる。眼球を破壊するほどの光なのだ。あとで治癒してやるのも面倒だからな。両手でしっかりと隠せ”

 「分かった」


 スノウは全員に目配せした。

 全員両手で目を覆った。

 好奇心で覗こうとする者はいなかった。

 いつあの不快音で攻撃されるか分からなかったからだ。


 “では魔物化を解くぞ”


 ビギャン!!


 無数の電球が弾けるような音が響いた。

 

 “完了だ”


 全員ゆっくりと両手を外し目を開けた。

 

 『!!』


 ぼやけていた視界が徐々に鮮明になり焦点が合ってくるとそこには期待通りの姿があった。

 

 「ソニア!」


 スノウは叫ぶように名前を呼んだ。

 目の前にはソニアが立っていたのだ。

 だが、様子がおかしかった。

 虚ろな目でぼーっとしている。


 「ソニア?!」


 スノウはソニアの両肩を掴んでゆすってみるが、反応がない。


 「まさか精神まで魔物化してしまったんじゃ‥‥」

 “何だ?精神も戻して欲しいのか”

 

 アヌがスノウに話しかけてきた。

 

 「あたりま‥‥‥も、戻せるのか?」

 “愚問だ。再び両手で目を覆うのだ”

 

 ビギャァァン!!


 ふたたび電球が弾けるような音がした。

 目をあけるとそこには周囲をキョロキョロと見回しているソニアがいた。


 「ソニア!」

 「スノウ、あたし‥ここで何をしていたんでしたっけ?って何でみんないるの?」


 ソニアは自分がなぜここにいるのかも分かっていない様子だった。


 「元に戻ったようだな」


 ソニアの姿を見て、シルゼヴァが腕を組みながら言った。


 「ええ!」


 エストレアが嬉しそうに答えた。

 まさにいつも通りのソニアがいた。

 その姿を見たスノウはあまりの嬉しさに目に涙を溜めていた。


 「え、何これ!新種の魔物?可愛い!」


 ソニアはアヌを手に取って抱き上げた。


 ((やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!))


 喜びから一点会議室は恐怖の心の叫びで溢れた。


 (あの不快音が襲ってくる‥‥)

 (終わった‥マジで終わった‥‥)

 (今度こそ正気を保っていられないわ)

 (いっそのこと燃やし尽そうか)

 (防御態勢を調えろ!)

 (ここはソニアに電撃魔法を放って気絶してもらうしかあるまい)

 (俺は逃げる。ここにいては危険だ)


 各々心の中で混乱しながら呟いた。


 “僕を可愛いと言ったのかソニア”

 「え?!喋った?!いや、頭に響いてきた?!あなた喋れるの?!」

 “愚問だ。僕は全宇宙の言葉を話すことが出来る。思念波も使える。何でも出来るのだ”

 「すごいじゃない!お名前は?」

 “最古の神族ヌーグの一柱神のアヌだ”

 「アヌちゃんね!可愛いぃ!スノウ、みんな、どこで捕まえたの?」

 

 ((やめてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!))


 “僕は可愛いのかと聞いたぞソニア。すぐに答えろ”

 「もちろん可愛いわよ、アヌちゃん。私のペットにしたいくらいよ」

 “ペットとは無礼なやつだな。だが可愛いという表現は悪くないぞソニア。貴様は特別に僕の下僕にしてやる。ソニックも異論はないな”

 

 ソニックに入れ替わった。


 「状況が読めないけど、異論はないよ。選択の余地がないのは皆の顔を見れば察しがつくらから」

 “ソニックもついでだが、下僕にしてやる。光栄に思うのだ”

 「下僕だって。可愛いわねぇ!そういうイキっているところが可愛いわ!」

 

 ソニアに交代するとアヌを抱きしめて頬擦りしながら嬉しそうにしていた。

 アヌも怒り出すどころか嬉しそうにしているように見えた。


 「何だかよく分からないがとりあえず上手くいった感じだな‥‥ははは‥‥」


 スノウはどっと疲れたと言わんばかりに椅子に腰掛けて項垂れた。



いつも読んで頂きありがとうございます。

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