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後編

赤どきんちゃんは、とうとうお婆さんの家まで到着しました。


「お婆さま! 助けて!」


赤どきんちゃんが家の中に駆け込みますが、それと同時にオオカミもなだれ込んできます。


「命が惜しけりゃ、赤どきんちゃんをよこしな。ババァ」


と大発声です。しかし、お婆さんはひるむどころか上着を脱いでパサリと床に落とし功夫(クンフー)の構えをとりました。


「久々だねぇ。本気で戦うのは」


と言って、見事な上段蹴りを仕掛けたおばあさん。

オオカミの首元、延髄(えんずい)に当たりました。


「うぐぉ……!」


オオカミは一声あげて倒れ込みました。


「く、くそッ! た、立てん」


お婆さんは拳法家だったのです!

オオカミモスに近づいて、拳を握ります。


「殺しはしない。だが、再起不能になってもらう」


拳を振り下ろそうとしたお婆さんですが、突然ガックリと膝をついてしまいます。


「……うぐ。こ、こんなときに! こんなときにィ~!!」


おそらく持病がでたのでしょう。お婆さんは拳をオオカミに振るうどころか、胸を押さえてその場にうずくまってしまいました。

オオカミは笑います。


「…………ふふ! ははははははは! どうやら、天はこのオオカミを選んだようだな!」


そういって、お婆さんを蹴り上げます。

お婆さんは、ぐったりとしてその場に倒れ込みました。


なんという。なんということでしょう!

神も仏もないのでしょうか?


たしかに、「天は自ら助くる者を助く」。

信心するよりも、自分のために頑張っている者を助けるものなんだよ。

という諺がございますが、今は緊急事態!

こんな時ぐらい助けてやってよ。


オオカミは勝利の雄叫びをあげ、諸手をあげて赤どきんちゃんに迫りました。


「ニックぅ。助けてぇ」

「はっはっは。無駄無駄無駄ァ! 誰も来ないさ。人間なんてこのオオカミ様の前ではモンキーなのだよ!」


と叫びました。

しかし、そこに勢いよくドアが開きます。


「待て!」

「ぬむ?」


「ニック!」


なんと! 天の(たす)けでしょうか!

ドアを開けたのは狩人のニックでした。

オオカミがテンションをあげて雄叫(おたけ)びをしたものですから、聞きつけてやってきたのです。


ニックは猟銃をかまえました。


「ローレから離れろ! この化け物め!」

「ほう?」


オオカミは立ち上がって、大きく一歩前に出てニックに近づきました。


「ライフルが接近戦でどれくらい役に立つ? しかも間違えば赤どきんちゃんに当たるし、破壊力からいって我が輩の体を貫通して赤どきんちゃんに。ふふ。どうする?」


「……うッ! ろ、ローレ。逃げろ!」


ドゴン!


大きな音を立てて、オオカミの豪腕がニックの頬に叩き落とされました。

悲痛な声をあげて目をつぶる赤どきんちゃん。

倒れ込むニック。


「う、う、う」

「オラ、立てよヒーロー。今から赤どきんちゃんと仲良くなる儀式をするからよ。そこでつながってる部分をよーく見てろ」


しかし、ニックは立てません。

あまりの強いパンチ力に目を回してしまったのです。



くそ。起き上がれない。

これじゃあ、ローレはこの化け物に陵辱されちまう。

どうしたらいいんだ。


夢か? 悪い夢なのか?

このまま時が過ぎるのを気絶したまま待っているのもいいかもしれない。



そう思っているニックに心の中の天使が呼びかけます。


「立ち上がりなさい。ニック。何のためにここに来たの? ダメよ逃げちゃ! 何よりも自分から!」


「だって、無理だよそんなの。こんな化け物、見た事も聞いたことも無いのにできるわけないよ!」


心の中の悪魔もニックに呼びかけました。


「説明を受けろ」


天使もニックに真剣なまなざしを送ります。


「やりなさい」


「そ、そんな。二人して。だって、このパンチ力、無理だよ……。こんなこと、できっこ無いよ!!」


悪魔はフゥとため息をつきました。


「天使、お婆さんを起こしてくれ」

「使えるかね?」


「死んでいるわけではない」

「……分かった。」


そ、そんな、お婆さんはあの歳の上に満身創痍。無理だ。ダメだ。


逃げちゃダメなんだ。


逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。


逃げちゃダメだ──ッ!!!


オオカミが、ゆっくりと赤どきんちゃんのシャツのボタンを外します。肉球が邪魔してなかなか外せません。手間取っているその時でした。


「うぉぉぉぉぉーーーー!!!」


勇ましく飛び起きたニック。

思い切り体重を乗せて、オオカミに拳を叩き込みました!


「ぎゃ!」


あまりのことに、オオカミはそのまま床に倒れ込みました。

ニックは、赤どきんちゃんを守りながら後ずさります。

オオカミは目に怒りをたぎらせながら起き上がりました。


「このドチ○ポ野郎!」


しかし、ニックはたじろぎません。

死を覚悟してオオカミと最後の決戦をするつもりでした。


「ローレ。君が好きだ。大好きだ。もし、オレが死んだら墓に花でも備えてくれ」

「そ、そんな! ダメ! あたしも好き! ニックのことが好きなのぉ!」


「へっ! 御涙頂戴なんぞに騙されんぞ! 望み通り殺してくれるわ!」


と、オオカミが凄んだその時でした。


ぴーぽーぴーぽーぴーぽー


どこからかサイレンの音が聞こえてきました。


「ぬ、いかん。警察だ。実は我が輩は警察が大の苦手でね。この辺で失敬させてもらうよ」


といって、オオカミはドアを開けてでていってしまいました。


ぽかーん。


二人はあんぐりと口を開けたままその後ろ姿を眺めていました。


「よっと!」


突如、お婆さんが背中のバネを使って元気良く起き上がりました。


「さて。二人の恋の成就がなったところでご馳走でも作るかね?」


といって、キッチンに向かって行きました。


そう言われて顔を見合わせてお互いの顔を真っ赤にする二人。


「あの、そのォ」

「んふふ。ニック。もう一回聞かせて?」


「あ、ああ、ローレ。大好きだ!」

「きゃん!」



ニックがローレに抱き付いたその頃、オオカミは村の出口まで来てました。


「くそ! 婆さんめ。本気で殴りやがって」


そう言って、ポケットから出したものはパトカーのおもちゃでした。


「へっ。この我が輩としたことがらしくねーや」


オオカミはそう言いながら、もう一度それをポケットにしまい込みました。


「これでしばらく婆さんの家には遊びにはいけんな。やれやれ損な役回りを引き受けちまったわい。はぁ。どれ。新しい住処でもさがすか」


と、青空を見上げて口笛を吹きながら村とは逆方向に歩いて行きます。


はてさて、その青空の極みはいずこやら?

そしてオオカミの目指す天地はどこにありましょう?

それは次回の講釈で。




【おしまい】

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