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薔薇の刻印(スティグマ)  作者: 多岐濟
一章~まだ、蕾は綻ばず~
20/49

》14話

「……これは何ですか?」

口火を切ったのは魔術と相性の良いエレンだった。

「この『結界』、普通の魔術と違って属性を感じません。一体どういうからくりですか?」

「お、ソコに気付くのか。流石」


ヒュッと口笛を吹きながらケインは手の甲をこちらに向けて来た。ソコには何かの印が浮かび上がりうっすらと発光している。


「ご明察だエレン。察する通りコイツは魔術とは違う」

「紋様……ですか?」

「そう―――正確にはちょっと違うけどな」


にや、と笑いながら手を翻し、また何かを唱える。淡く光る紋様はまた僅かに強く発光して、そのままぼんやりと輝き続ける。

何だかちょっと幻想的な光景だわ。

その光を確認しながらケインはこちらを見て口を開く。



「お前達、『刻印スティグマ』って聞いたことあるか?」

「『刻印スティグマ』?」

「……って、『あの』刻印スティグマ』のことですか?」



そうだ、子供の頃誰もが1度は耳にする童話に『刻印スティグマ』というワードがある。


確か勇者ヒーローがその絶大な力を駆使して王国を守るという王国神話。


そう、物話で。



「……物語ですよね?」



きょとん、としてしまう。

難しい創世神話や子供向けの童話など形はまちまちだけど、どれも現実では有り得ないと一蹴する話だ。

勿論その強さを目標に日々鍛練する者は多いが。



何しろその力は大地を裂くだのどんな力を防ぐだのこんな力あるか!盛りすぎだろ!の突っ込みオンパレードなのだ。目標にするのはいい。そんな次元到達するはずもないのですが。



それが何か?と問うとまたにやにやと悪戯を思い付いた子供みたいな笑いを返してくる。




「だよなぁ?そんな子供でも分かる刻印モノが――――実在するとしたら、どうする?」




「「…………はい?」」

何を問われているのかとうとう理解できなくなってきたわよ?

ちらりと隣のエレンを伺うと、彼も似たり寄ったりな顔をしていた。

ダメだ、理解できない。

そう思ってちらりとアインの方を見る。当然『理解できませんが?』というアイコンタクト付きで。

正しくそれを理解したであろうアインは、はぁ、と息を吐いてからケインの方を見た。



「……ケイン、回りくどすぎる。さっさと結論を話してやれ」

「へいへい、りょーかい」



そう言うともう一度彼の手の甲が強く発光し出す。強烈というほどまでは無くても確かに何か強い力を感じる。




「この結界はコイツ―――刻印スティグマの力で現れている。刻印スティグマは物語じゃない。実在するものだ」

「ただ、刻印スティグマは物語のように独りで使うものではない。幾つもの力が存在して、その一つがケインのコレ」



アインが目配せしてそう言うと、ケインはふっ、と掌を振り―――併せるようにふわり、と結界が歪んだ。そのままぐっと拳に握ればまた何てこと無く結界は強靭に張り巡った。

まぁ、何というか。



「型破りですね……」

「まるで奇術ですね……」



もう言葉も出ない。



「この結界は普通のやつと違って音を漏らしたり姿を映したりとかそういうのも防ぐことが出来る。万能だろ?だから今のこの会話も俺達以外に聴こえていない。何からも防ぐ防御―――それがこの『盾の刻印スティグマ』の力だ」

「『盾の刻印スティグマ』…………あ、さっきの?」


何かの違和感を感じたけれど。


「そう、ヒルダは気付いたみたいだが誰が覗いているのか分からないからな」

「防御してしまえば手も足も出ないだろ?だが強靭な力であるからなかなか制御が伴わくてな。そこでお前だ、エレン」

「……嫌な予感しかしないんですけど……」

「お前、魔力値が高いだろう。そして水に風の二属性持ちだ。どっちの属性も防御に向いている性質たち。更にお前自身の性格も『騎士団に望ましい客観性と冷静さ』を持っている」

「…………はぁ」



凄いわねエレン。本人エレン心底嫌そうな顔をしているけれどアレ、良く聞けばかなり誉められているわ。

その辺りはエレンも解っているでしょうが。






刻印スティグマ遣いは能力が高い。同様に制御が非常に難しいのですよ。エレン、君ならケインの刻印スティグマに上手く相棒サポートとして行けると私達は推挙しました」







隊長がにこりと笑う。

と言うか。



「―――はぁ」



溜め息しか出ないエレン。それはそうよね。



「……あの、つかぬことを伺いますが。これを聞かされた私達には既に拒否権など無いですよね?」



だってこんな危なそうな情報こと誰もがポンポン知っていいハズ無いですよね?

本気?

本気ですか?

だけど隊長は本気だった。

だってその証拠のように笑顔は崩れていない。





「先ずはやりなさい?」





「「………………」」






その笑顔に逆らう術などひよこな私達には当然持っていない。


嗚呼。


何だかどんどん変なものに巻かれていっているわ……。





……って、ちょっと待って。





「エレンのことは分かりました。でも私がアインの相棒サポートになった理由が解らないのですが」




そうよ、エレンの理由は聞いたけれど私の理由は解らないですが?


そう思って尋ねたのだけど。



にこにこ。



隊長が笑っている。



にやにや。



ケインも笑っている。



にっこり。



アインまで笑う……あら珍しい。



………………じゃなくって!!




あれ、これ回答無し?何で笑うだけなの。何故。



ちょっと、何で私には笑うだけなわけ!?



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